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"201011011_0": "わたしはお姉さん",
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"201011011_1": "「完成したって、本当デスかッ!?」",
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"201011011_2": "「はい。切歌さんから提案していただいた、幻獣型ギアを\\n 纏うための心象実験の装置が完成したんです」",
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"201011011_3": "「おおッ! これで、ドラゴンの力を持ったギアを\\n 纏えるかもしれないんデスねッ!」",
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"201011011_4": "「調や先輩から幻獣型ギアの話を聞いて、\\n すごく気になっていたんデスよ」",
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"201011011_5": "「『魔剣グラム』の事件に巻き込まれたとき、\\n 切ちゃんはいなかったもんね」",
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"201011011_6": "「今回は切歌くんが心象実験の対象者だ。\\n 本人たっての希望もあるからな」",
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"201011011_7": "「みんな任務とかで忙しそうなのに、アタシだけ\\n わがままを言って心象実験をしちゃって大丈夫デスか……?」",
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"201011011_8": "「力の象徴でもあるドラゴンの特性を持ったギアならば、\\n 戦力の上昇に繋がるだろう」",
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"201011011_9": "「それに、切歌くんが心象実験を成功させれば、\\n 他の装者にも応用が可能だ」",
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"201011011_10": "「つまり、我々S.O.N.G.にとっても、\\n 十分に意味のある心象実験ということだ」",
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"201011011_11": "「わかったデスッ! みんなのためにも、\\n カッコイイ幻獣型ギアを発現してみせるデスッ!」",
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"201011011_12": "「ああ、その意気だ」",
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"201011011_13": "「心象実験は明日行う予定になっているから、\\n 今日はゆっくり休んで備えてくれ」",
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"201011011_14": "「了解デースッ!」",
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"201011011_15": "「フフ、頑張ろうね、切ちゃん」",
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"201011011_16": "(夢にまで見た幻獣型ギア……。\\n 今からドキドキワクワクしちゃうデス……ッ!)",
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"201011011_17": "「……これがカルマノイズの資料ですね。\\n 確かに受け取りました、必ずマムに届けます」",
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"201011011_18": "「わざわざ取りに来てもらってすまないな」",
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"201011011_19": "「こちらこそ、情報を共有していただけるのはとても助かります」",
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"201011011_20": "「……」",
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"201011011_21": "「あ、あの、ところで1つお聞きしたいのですが……」",
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"201011011_22": "「ゲホゲホ……。\\n うう、アタシはバカデス、とんでもない大バカデースッ!」",
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"201011011_23": "「ええっと、暁さんはなぜ泣いているんでしょう?」",
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"201011011_24": "「切ちゃんが幻獣型ギアを発現させるための心象実験を\\n やるはずだったんだけど……」",
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"201011011_25": "「楽しみすぎて全然寝付けなかったせいで、\\n 体調を崩しちゃったんデス……ゲホッ……」",
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"201011011_26": "「なるほど……」",
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"201011011_27": "「仕方がないが、心象実験は延期にする必要があるな」",
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"201011011_28": "「うう、ごめんなさいデス……」",
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"201011011_29": "「明日以降は任務の予定が詰まっていますから、\\n 次はだいぶ先になってしまいそうですね……」",
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"201011011_30": "「そ、そんな……ッ!」",
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"201011011_31": "「あれ? なんだか元気になってきた気がするデスッ!」",
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"201011011_32": "「これなら心象実験しても……ゲホッ……」",
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"201011011_33": "「切ちゃん、バレバレだよ」",
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"201011011_34": "「無理はいけませんよ? まずは体調を治さないと」",
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"201011011_35": "「でも……あッ、そうデスッ!\\n セレナが心象実験を受ければいいんデスよッ!」",
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"201011011_36": "「えッ!? わたしが?」",
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"201011011_37": "「強くてカッコイイ、幻獣型ギアを纏えるチャンスデスよッ!」",
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"201011011_38": "「強くて、カッコイイ……」",
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"201011011_39": "「みんなのためにも、お願いするデス。\\n わたしのカタキを討ってほしいデス……」",
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"201011011_40": "(わたしが纏うことができれば、\\n もっと強くなって姉さんみたいに戦えるかな……)",
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"201011011_41": "「興味ありそう」",
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"201011011_42": "「こちらの装者は、調くんと切歌くん以外出払っている」",
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"201011011_43": "「セレナくんに代打として心象実験を受けてもらうのは、\\n たしかにいい案だな」",
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||
"201011011_44": "「急な話で申し訳ないが、どうだろうか……?」",
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||
"201011011_45": "「ぜひ、やってみたいですッ!\\n ですが、マムの許可が無いと……」",
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"201011011_46": "「ああ、その通りだな。\\n 無理にとは言わないから、きちんと話し合って決めてくれ」",
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||
"201011011_47": "「分かりました。では、いったん失礼させてもらいます」",
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"201011011_48": "「待ってるデスよッ! ゲホン……」",
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"201011011_49": "「セレナさん、どうぞこちらへ」",
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"201011011_50": "「よろしくお願いします」",
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"201011011_51": "「マムの許可が取れてよかったね」",
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"201011011_52": "「はいッ! わたしも、きちんと結果を残さないと」",
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"201011011_53": "「……そういえば、暁さんは?」",
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"201011011_54": "「切ちゃんは帰らされて自宅療養中。\\n ここにいたら、我慢できずに飛び入り参加しそうだから」",
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"201011011_55": "「確かに、暁さんならそうなっちゃうかもしれません……」",
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"201011011_56": "「では、実験について説明しますね」",
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"201011011_57": "「おふたりには、こちらのテレビゲーム、『レジェンドオブ\\n ドラゴンバスター』の世界を体験してもらいます」",
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"201011011_58": "「え? ゲームですか?」",
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"201011011_59": "「切歌さんの提案なんです。ゲームの世界を実際に体験できたら、\\n 心象変化が起きるに違いないと」",
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"201011011_60": "「ボクはゲームの経験がなかったのでわかりませんが、ゲームは\\n 子供たちの思考に大きな影響を与えるというデータもあります」",
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"201011011_61": "「切歌さんは、きっとそういったデータをもとに……」",
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"201011011_62": "「うーん……、切ちゃんはそこまで深く考えてないと思う」",
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"201011011_63": "「フフ、暁さんらしいアイデアですね。\\n 心象実験が楽しみになってきました」",
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"201011011_64": "「それでは、そろそろ始めますね。\\n 調さんにも、サポートとして参加していただきます」",
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"201011011_65": "「おふたりはギアを纏って準備をしてください」",
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"201011011_66": "「わかりました」",
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"201011011_67": "「Seilien coffin airget-lamh tron――」",
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"201011011_68": "「Various shul shagana tron――」",
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"201011011_69": "「シミュレータ起動します。気をつけてくださいね」",
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"201011011_70": "「え? 気をつけてくださいって、どういう――」",
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"201011011_71": "「景色が変わった……?」",
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"201011011_72": "「ゲームの中身を再現した場所、\\n ということでいいんでしょうか?」",
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"201011011_73": "「うん、レジェンドオブドラゴンバスターの世界だよ。\\n たぶん、すぐに出てくるはず……」",
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"201011011_74": "「出てくるって、やっぱり――」",
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"201011011_75": "「ゴオオオ――ッ!」",
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"201011011_76": "「あれが、ドラゴンッ! 思ったより大きくて怖いです……。\\n あの、今更ですけどこのゲームって……」",
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"201011011_77": "「ドラゴンと戦って、倒したらクリアだよ」",
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"201011011_78": "「倒す以外に方法はないんですか?\\n 巣に帰してあげるとか……」",
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"201011011_79": "「これはゲームだから……。\\n ドラゴンは、人類の敵として登場するの」",
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"201011011_80": "「ゴオオオオオ――ッ!」",
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"201011011_81": "「話してる暇はないみたい。わたしがサポートするから、\\n セレナは自分なりに戦ってみて」",
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"201011011_82": "「は、はいッ!」",
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"201011011_83": "(ノイズと雰囲気が違って怖いけど、\\n 心象変化を起こすために、頑張らないとッ!)",
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"201011011_84": "「たあ――ッ!」",
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"201011011_85": "「はあッ!」",
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"201011011_86": "「グウ……?」",
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"201011011_87": "「あ、あれ? 全然効いてない……?」",
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"201011011_88": "「無傷ッ!?」",
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"201011011_89": "「ゲームでは、どうやって戦っているんですか?」",
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"201011011_90": "「ドラゴンキラー属性の素材で武器を作ったり、\\n 修行して古代の魔法を覚えたり……」",
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"201011011_91": "「つまり、普通のギアで攻撃しても\\n 倒せないってことですかッ!?」",
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"201011011_92": "「ギャオオオオオ――ッ!」",
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"201011011_93": "「――ッ!?」",
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"201011011_94": "「きゃあああああッ!?」",
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"201011011_95": "「うう、一方的にドラゴンさんから攻撃されて、\\n ゲームオーバーになってしまいました……」",
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"201011011_96": "「すみません。なるべくゲームの内容を再現しようと\\n したのですが……」",
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"201011011_97": "「謝ることないよ。ドラゴンが弱かったら心象変化をする\\n 意味がなくなっちゃうし」",
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"201011011_98": "「とは言え、どうしたらいいんでしょう。\\n わたしがもっと強ければよかったのに……」",
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"201011011_99": "「ゲームで心象変化をするというのは、\\n 無茶だったんでしょうか……」",
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"201011011_100": "(2人とも落ち込んじゃった……。\\n 何か、ドラゴンを倒す以外でできることはないかな……)",
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"201011011_101": "「……そうだッ!」",
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"201011011_102": "「どうしたんですか?」",
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"201011011_103": "「……このゲームのシステムは全部再現してるの?」",
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"201011011_104": "「はい。ゲームをそのまま楽しめるようにしたい、\\n とのことだったので」",
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"201011011_105": "「だったら『ドラゴン育成モード』をやってみるのは\\n どうかな?」",
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"201011011_106": "「そういえば、ミニゲーム的な要素としてそんな\\n モードがありましたね」",
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"201011011_107": "「たしか、卵から孵ったドラゴンを育てて\\n 仲間にすることができるモードだったはずです」",
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"201011011_108": "「目的はドラゴンを倒すことじゃなくて心象変化だから。\\n 他のことに挑戦してみるのもいいかもしれないと思って」",
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"201011011_109": "「あのドラゴンさんを育てるんですか?\\n わたしにできるでしょうか……」",
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"201011011_110": "「やめておく?」",
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"201011011_111": "「……いいえ。このまま逃げ続ける訳にはいきません。\\n 『ドラゴン育成モード』に挑戦してみますッ!」",
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"201011011_112": "「では、育成モードでシミュレータを起動させますね。\\n 頑張ってくださいッ!」",
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"201011011_113": "「……起動したみたいですね。たしか、卵から孵った\\n ドラゴンさんを育てるということですが……」",
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"201011011_114": "「卵なら目の前にあるよ。ほら、ここ」",
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"201011011_115": "「えッ、この小さな卵がそうなんですかッ!\\n てっきり卵もお家ぐらいあるのかと思ってました」",
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"201011011_116": "「最初に戦ったドラゴン、すごく大きかったもんね。\\n そんなことよりほら、卵が孵るよ」",
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"201011011_117": "「ど、どんなドラゴンさんが出てくるんでしょう……」",
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"201011011_118": "「クーッ!」",
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"201011011_119": "「か、可愛いッ!\\n さっきのドラゴンさんと大違いです」",
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"201011011_120": "「クー、クークーッ!」",
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"201011011_121": "「フフ、身体を擦り寄せてきて、人懐っこいドラゴンちゃん。\\n よしよし、元気があっていい子だね」",
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"201011011_122": "「すりこみで親だと思ってるのかな」",
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"201011011_123": "「ちょっと照れちゃいますね」",
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"201011011_124": "「でも、お母さんより、\\n わたしはお姉さんになりたいな」",
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"201011011_125": "「ククーッ!」",
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"201011011_126": "「え、ええっと、服を引っ張ってるけど遊んでほしいのかな?\\n それともお腹が空いてるの?」",
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"201011011_127": "「その反応は……うん、遊んでほしいんだと思う」",
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"201011011_128": "「フフ、じゃあ、お姉さんと一緒に遊ぼうッ!」",
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"201011011_129": "数日後(ゲーム内時間)",
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"201011011_130": "「クーッ!」",
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"201011011_131": "「まだ遊び足りないの?\\n ダメだよ、休むことも大切なんだからね」",
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"201011011_132": "「クー……」",
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"201011011_133": "「フフ、いい子いい子」",
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"201011011_134": "「その子、すっかり大きくなったね」",
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"201011011_135": "「だけど、甘えん坊ですし、やっぱりまだまだ子供です」",
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"201011011_136": "「それだけセレナのことが好きなんだよ」",
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"201011011_137": "「ククーッ!」",
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"201011011_138": "(やっぱり、セレナには戦いよりもこっちのほうが\\n 合ってたみたい)",
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"201011011_139": "「くすぐったいよ。もしかして、お腹がすいたの?」",
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"201011011_140": "「クーッ!」",
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"201011011_141": "「本当に、お姉さんみたい」",
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"201011011_142": "「わたしには、頼りになるお姉さんが近くにいましたから。\\n わたしも小さい頃はこうやって姉さんに甘えていました」",
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"201011011_143": "「おふたりとも楽しめているようでよかったです。\\n ですが、まだ心象変化の兆候は見られませんね……」",
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"201011011_144": "「戻ったわ」",
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"201011011_145": "「マリアさん。任務から戻られたんですね」",
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"201011011_146": "「ええ。ついさっき戻ったところよ」",
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"201011011_147": "「あら? 何をしているかと思ったら、切歌たちがやっていた\\n ゲームじゃない。あの子たちから借りたのね」",
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"201011011_148": "「いえ、これは……」",
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"201011011_149": "「ちょっと待って……このキャラ、セレナにそっくり……ッ!\\n ドラゴンと戯れて、可愛らしいわ……ッ!」",
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"201011011_150": "「あの、これはキャラではなくて、本物の――」",
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||
"201011011_151": "「このボタンで操作してるのね。\\n わたしも少し触らせてもらってもいいかしら」",
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"201011011_152": "「ああッ!? そ、そのボタンは――ッ!」",
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||
"201011011_153": "「この音は……?」",
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"201011011_154": "「クウ?」",
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"201011011_155": "「大丈夫だよ。お姉さんの後ろに隠れて」",
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"201011011_156": "「ゴオオオオオ――ッ!」",
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||
"201011011_157": "「あのドラゴンさんは……ッ!」",
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"201011011_158": "「このモードに敵は出てこないはず。\\n いつの間にか、モードが切り替わったのかも……」",
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||
"201011011_159": "「そ、そんなッ! この子がいるのにッ!」",
|
||
"201011011_160": "「クー……」",
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"201011011_161": "(こんなに震えて怯えている。\\n この子はわたしが護ってあげないと……ッ!)",
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||
"201011011_162": "「……」",
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||
"201011011_163": "「ここはわたしが足止めする。\\n その子を連れて早くここから離れて」",
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||
"201011011_164": "「イヤです……」",
|
||
"201011011_165": "「セレナ? でも、普通のギアでは……」",
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||
"201011011_166": "「確かにわたしのギアではあのドラゴンさんには\\n 勝てないかもしれません……」",
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||
"201011011_167": "「でも、この子はわたしが護りますッ!\\n わたしはこの子のお姉さんなんですからッ!」",
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||
"201011011_168": "「Seilien coffin airget-lamh tron――」",
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||
"201011011_169": "「それは、幻獣型ギア……ッ!」",
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||
"201011011_170": "「胸の中から熱い力が溢れてくるッ!\\n これが、幻獣型のギアの力ッ!」",
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||
"201011011_171": "「はあッ!」",
|
||
"201011011_172": "「グオオオ……」",
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||
"201011011_173": "「効いてる……ッ!」",
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||
"201011011_174": "「これならッ!」",
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||
"201011011_175": "「ゴオオオオオ――ッ!」",
|
||
"201011011_176": "「<size=40>やあああ――ッ!</size>」",
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||
"201011011_177": "「な、なんとか撃退できた……」",
|
||
"201011011_178": "「クークーッ!」",
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||
"201011011_179": "「ごめん、怖かったよね。でも、もう大丈夫だから」",
|
||
"201011011_180": "「クーッ!」",
|
||
"201011011_181": "「無事でよかった。幻獣型ギアを、完璧に使いこなせてたよ」",
|
||
"201011011_182": "「はい。この子を護りたいと思ったら、いつの間にか\\n 纏うことができていました」",
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||
"201011011_183": "「……あの、聞きたいことがあるんですが。\\n この子を残すことはできるんでしょうか……?」",
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"201011011_184": "「ゲームのシステムを再現してるって言ってたから、\\n セーブすればできると思う」",
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"201011011_185": "「では、またこの子と遊べるんですね。\\n これっきりにならなくて、本当によかったです」",
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"201011011_186": "「クーッ!」",
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"201011011_187": "「フフ、安心したらお腹空いたよね。何か食べようか」",
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||
"201011011_188": "(心象変化が成功したことよりも、\\n ドラゴンと仲良くなれたことの方が嬉しそう)",
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"201011011_189": "(よかったね、セレナ)"
|
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} |