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"329000011_0": "夢の中の君",
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"329000011_1": "「…………」",
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"329000011_2": "「これで前回までの戦闘データの解析は終了、と」",
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"329000011_3": "「装者のみなさんの戦術評価を共有領域にアップロードして……」",
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"329000011_4": "「あと他に、やっておくべきことは……」",
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"329000011_5": "「そうだ。溜まっている並行世界経由の資料を整理して\\n 情報をアップデートしておかないと……」",
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"329000011_6": "(いつまた並行世界で次の事態が発生するとも知れないし……、\\n 今、ボクにできることを全力で――)",
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"329000011_7": "「……うッ」",
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"329000011_8": "(流石に、徹夜続きで少し疲れたかな)",
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"329000011_9": "(でも、休んでいる余裕なんてない)",
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"329000011_10": "(もし今、ボクが気を緩めたことで、\\n 次の事態への準備が間に合わなかったら――)",
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"329000011_11": "(ボクはきっと、後悔することになる)",
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"329000011_12": "「もっと、みなさんのお役に立てるように……」",
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"329000011_13": "(今の状況で考え得ることは全てやりきって、\\n 不測の事態にも対応できるよう万全の準備をしておかないと)",
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"329000011_14": "(せっかくキャロルの残してくれたこの身体なんだから、\\n キャロルの分も……)",
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"329000011_15": "(……みなさんの、役に……)",
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"329000011_16": "「……がんばら、ない、と……」",
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"329000011_17": "「……」",
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"329000011_18": "「…………」",
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"329000011_19": "「ここ、は……?」",
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"329000011_20": "「…………」",
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"329000011_21": "「まさか、キャロル?」",
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"329000011_22": "「ああ。久方ぶりだな、エルフナイン」",
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"329000011_23": "「そんな、どうして……?\\n だってキャロルは……」",
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"329000011_24": "「……そうか。これは夢なんですね」",
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"329000011_25": "「…………」",
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"329000011_26": "「キャロル……ボクは、君にも生きてほしかった」",
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"329000011_27": "「ううん。どちらか1人しか生き残れないなら、\\n 君が生き残った方が、きっと、みんなの役に立てたはず」",
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"329000011_28": "「……それは否だ」",
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"329000011_29": "「想い出を焼却し尽くし、抜け殻となったオレには、\\n お前に与えた以上の知識など、残されてはいなかった」",
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"329000011_30": "「それに……パパの命題を理解していなかったオレには、\\n 最早、生きる資格など……」",
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"329000011_31": "「キャロル……」",
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"329000011_32": "「…………」",
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"329000011_33": "(これは、本当にキャロルの言葉なんだろうか?)",
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"329000011_34": "(それともボクが、記憶の中のキャロルの姿を再構築して、\\n そう言わせているだけ?)",
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"329000011_35": "「キャロル……ボクは……」",
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"329000011_36": "(もしキャロルに会えたなら、話したいことも、伝えたいことも、\\n 聞きたいことも、たくさんあったはずなのに……)",
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"329000011_37": "(いざという時に、何も言葉にならないなんて)",
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"329000011_38": "(ボクはどうして、いつもこうダメなんだろう)",
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"329000011_39": "「言葉など。問いなど。\\n 今更、不要だろう」",
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"329000011_40": "「オレはお前と共に在る。\\n だから、全ての答えはお前の中に在るはずだ」",
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"329000011_41": "「えッ!?」",
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"329000011_42": "「キャロル、それは、どういう――?」",
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"329000011_43": "「…………」",
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"329000011_44": "「待ってキャロルッ! ボクは――ッ!」",
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"329000011_45": "(えッ……ここは……)",
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"329000011_46": "(チフォージュ・シャトーの……中?)",
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"329000011_47": "(間違いない。でも、どうして……?)",
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"329000011_48": "(シャトーなら、とっくに崩壊したはず)",
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"329000011_49": "(これは、さっきの夢の続き……?)",
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"329000011_50": "(キャロル……それに、ファラたちまで)",
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"329000011_51": "「つまり、オレの命令が受け容れられぬと言うのか?」",
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"329000011_52": "「ええ……その通りです」",
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"329000011_53": "(話している相手は、誰……?)",
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"329000011_54": "(術式を? それに、あれは……)",
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"329000011_55": "(ダインスレイフッ!?)",
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"329000011_56": "「黒騎士……、\\n 魔剣ダインスレイフを触媒に召喚したのか……」",
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"329000011_57": "「あーららッ。マスターを本気にさせちゃったー♪」",
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"329000011_58": "「ふむ。色こそは地味だが、仰々しいナリをしている」",
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"329000011_59": "「ええ。魔剣の呪いを具現化したかのような、禍々しい姿ですわね」",
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"329000011_60": "「黒くておっきければいいってモンじゃないんだゾ?」",
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"329000011_61": "「あくまで抗うならば、いいだろう」",
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"329000011_62": "「身の程というものを、改めて脳髄に刻んでやるまでだッ!」",
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"329000011_63": "「あーららッ。マスターを本気にさせちゃったわー♪」",
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"329000011_64": "「だが、マスターの御手を患わせるほどではない」",
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"329000011_65": "「ええ。まずは私たちがお相手しましょう」",
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"329000011_66": "「言うこと聞かない悪い子はお尻ペンペンだゾッ!」",
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"329000011_67": "「はッ!」",
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"329000011_68": "「この数を弾くかッ!?」",
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"329000011_69": "「あたしの水流も同じように弾けるかしら?」",
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"329000011_70": "「クソッ、でかい図体でちょこまかとおッ!」",
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"329000011_71": "「そうくると思ったゾッ!」",
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"329000011_72": "「トドメは頼んだゾッ!」",
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"329000011_73": "「任せなさい」",
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"329000011_74": "「剣と定義されるモノならば、私の敵ではありませんわ」",
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"329000011_75": "「さあ――砕け散りなさいッ!」",
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"329000011_76": "「私の剣戟を、腕で受けたッ?」",
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"329000011_77": "「くう――ッ!?」",
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"329000011_78": "「奴め、ファラのソードブレイカーの特性を?」",
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"329000011_79": "「しかもあの鎧、無茶苦茶硬そうだゾッ!」",
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"329000011_80": "「どれ程硬かろうがッ!\\n 動きを止め片端から削り取ればいいだけの話ッ!」",
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"329000011_81": "「さっすが、マスター♪」",
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"329000011_82": "「今のうちにタコ殴りだゾッ!」",
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"329000011_83": "「ゲゲッ!? こいつ、マスターの糸を――」",
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"329000011_84": "「力任せに千切っただとッ!?」",
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"329000011_85": "「クッ……想像以上の出力だ」",
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"329000011_86": "「いかがなさいます?」",
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"329000011_87": "「面倒だ。最大出力でカタをつける。\\n それまでお前たちで牽制しろ」",
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"329000011_88": "「承知ッ!」",
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"329000011_89": "「お任せあれッ!」",
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"329000011_90": "「やれやれ面倒だゾッ」",
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"329000011_91": "「一撃一撃はいなせても――」",
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"329000011_92": "「みんなで山ほどお見舞いすればッ!」",
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"329000011_93": "「躱しきれはしないでしょうねッ!」",
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"329000011_94": "「いくらなんでも頑丈過ぎるんだゾッ!」",
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"329000011_95": "「だが、足さえ止まれば事足りるッ!」",
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"329000011_96": "「ギギッ!?」",
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"329000011_97": "「やりぃッ!」",
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"329000011_98": "「マスターッ!」",
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"329000011_99": "「よくやった、お前たち」",
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"329000011_100": "「痴れ者どもめ――諸共に滅ぼし尽くしてくれるッ!」",
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"329000011_101": "「フ……できるものですか」",
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"329000011_102": "「なんだとッ!?」",
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"329000011_103": "「こ、これ、は……反転術式だとッ!?」",
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"329000011_104": "「貴様、予めこの準備を――」",
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"329000011_105": "「なんの策も持たず、あなたの前に身を晒すとでも?」",
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"329000011_106": "「お、おのれ、小癪な――」",
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"329000011_107": "「ぐあああああッ!?」",
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"329000011_108": "「いけませんわッ! 魔力がマスター自身に逆流をッ!」",
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"329000011_109": "「だが、これでは手の出しようがないッ!」",
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"329000011_110": "「クッ……こ、この程度の術式でッ!」",
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"329000011_111": "「このオレの力を……凌駕できる、などと――ッ!」",
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"329000011_112": "「高をくくったかあ――ッ!」",
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"329000011_113": "「マスター……想い出の焼却をッ!?」",
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"329000011_114": "「その出力の上限は天井知らず。\\n だが――」",
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"329000011_115": "「燃やせば燃やすほど、みんな忘れてしまうんだゾッ!」",
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"329000011_116": "「流石にそれはマズいですってッ!」",
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"329000011_117": "(ダメだよ、キャロルッ! それだけは――)",
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"329000011_118": "「無駄です」",
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"329000011_119": "「力を注げば注ぐほど、それは己が身を戒め、苛むだけ」",
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"329000011_120": "「がああああ――ッ!!」",
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"329000011_121": "「がッ!」",
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"329000011_122": "「う……ううッ……」",
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"329000011_123": "「マスターッ!」",
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"329000011_124": "「マスターを救うぞッ!」",
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"329000011_125": "「任せるんだゾッ!」",
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"329000011_126": "「いたッ!? なんか見えない壁があるんだゾッ!」",
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"329000011_127": "「結界ッ! テンメエ、いつの間にッ!?」",
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"329000011_128": "「人形たちはそこで黙って見ていなさい」",
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"329000011_129": "「クッ! なんという強力な結界ッ!?」",
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"329000011_130": "「よほど前から周到に準備をしていたようだな」",
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"329000011_131": "「あんな奴に、チフォージュ・シャトーの管理をさせてたなんて、\\n マスター、後で抗議させてもらいますよッ!」",
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"329000011_132": "「そんなことより、アイツが暴れ出しそうだゾッ!」",
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"329000011_133": "「マズッ! 黒騎士がッ!」",
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"329000011_134": "「マスター、退避をッ!」",
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"329000011_135": "「うう……」",
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"329000011_136": "(いけませんッ!)",
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"329000011_137": "(キャロル……逃げてッ!)",
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"329000011_138": "「マスターッ!!」",
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"329000011_139": "「人形どもが、結界をッ!?」",
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"329000011_140": "「やらせるものかッ!」",
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"329000011_141": "「お前の相手はあたしらだゾッ!」",
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||
"329000011_142": "「お前たち……」",
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||
"329000011_143": "「マスター、この場は退避を」",
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||
"329000011_144": "「このオレに逃げろというのかッ!?」",
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||
"329000011_145": "「ここは今や周到に準備された狩場。\\n 他に仕込みがあってもおかしくありませんわ」",
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||
"329000011_146": "「ひとたび退いて、立て直すべきかと」",
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||
"329000011_147": "「己が領域で、なんたる屈辱……」",
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||
"329000011_148": "「だが、認めざるを得ないか……」",
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||
"329000011_149": "「退くぞ、お前たちッ!」",
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||
"329000011_150": "「なッ!? 転送ができぬだとッ!?」",
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||
"329000011_151": "「千載一遇のこの機会、逃すとでも?」",
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||
"329000011_152": "「どこまでも小癪ッ!」",
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||
"329000011_153": "「ならば退路は私たちが支えます。\\n マスターは先に退避を」",
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"329000011_154": "「馬鹿を言うなッ!」",
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"329000011_155": "「馬鹿なんて言ってませんよ。マスターのために身体を張るのが\\n わたしたちの役目なんですからー」",
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||
"329000011_156": "「マスターが倒れれば、計画は全て水の泡」",
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||
"329000011_157": "「その大望、ここで潰えさせるわけには参りません」",
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"329000011_158": "「後でご褒美もらうんだゾッ」",
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||
"329000011_159": "「だからッ! さあ、早くッ!」",
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||
"329000011_160": "「お前たち……」",
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"329000011_161": "「わかった……」",
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"329000011_162": "「ここまで追い詰めて逃がすものかッ!」",
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||
"329000011_163": "「悪いけれど、もう少し付き合っていただきます」",
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||
"329000011_164": "「私たちの死の舞踏にねッ!」",
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||
"329000011_165": "「人形風情がッ!」",
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"329000011_166": "「はッ!?」",
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||
"329000011_167": "「ここは……ボクの、研究室……」",
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||
"329000011_168": "「やっぱり夢……だったのか」",
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||
"329000011_169": "(それも、2つも立て続けに……?)",
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"329000011_170": "(1つ目は、キャロルと話した夢)",
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"329000011_171": "(そして、2つ目は……キャロルたちが誰かと戦う夢)",
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||
"329000011_172": "(1つ目はともかく、2つ目は、\\n 明らかにボクの記憶でも、願望でもない……)",
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||
"329000011_173": "(それなのに、あの現実感は、一体……)",
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||
"329000011_174": "「なんだか、胸騒ぎがする……」",
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||
"329000011_175": "(夢かもしれないけど、キャロル……)",
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"329000011_176": "(どうか、無事でいて……)"
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