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"390000931_0": "「錬金術は大きく分けて、3か4の工程を経る。\\n ニグレド、アルベド、キトリニタス――或いは、ルベド」",
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"390000931_1": "「<ruby=ルベド>赤化</ruby>。\\n これこそが術式としての錬金術の完成形だ」",
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"390000931_2": "「<ruby=あまね>遍</ruby>く錬金術師が、これを求める。\\n 真理、絶対、賢者の石。……或いは――神との合一」",
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"390000931_3": "「古いヒトだからかな、僕が。",
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"390000931_4": " 好きなのだけれどね。<ruby=キトリニタス>黄化</ruby>……黄金錬成と呼ぶ方が」",
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"390000931_5": "「……はぁ」",
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"390000931_6": "「そして<ruby=ニグレド>黒化</ruby>……これが第一の現象となる。\\n 腐敗、燃焼、浄化……」",
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"390000931_7": "「あらま。\\n 一瞥もせずスルーしましたよ、マスターったら」",
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"390000931_8": "「うん……。アタシたちの研究中、エリクサーになるはずのモノは\\n どうしても<ruby=ニグレド>黒化</ruby>から先に進んでくれなかった」",
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"390000931_9": "「キャロぴが今言ってくれたみたいに、燃焼の概念が\\n 強く出ることも、浄化の概念が強く顕現することもあった」",
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"390000931_10": "「失敗するのは足りないからかもって……だから、考えた。\\n 純然たる錬金術だけではなく、想いの力を組み込む方法を」",
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"390000931_11": "「錬金術の目指す境地というものは……\\n きっと美しいものだと思ったから」",
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"390000931_12": "「だから、美しいものを材料にしようと思って……」",
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"390000931_13": "「厳密に言えば違うのはわかってた。",
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"390000931_14": " でも、<ruby=フォニックゲイン>歌の力</ruby>に反応する聖遺物という存在を知ったとき……」",
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"390000931_15": "「アタシの中では、\\n 立ち込めていた霧が晴れたような気持ちだったんだ」",
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"390000931_16": "「だから聖遺物の因子を素材に組み込み、\\n そこから『<ruby=アルベド>次の段階</ruby>』へ進もうとした……」",
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"390000931_17": "「進まなかったわけだけどネ」",
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"390000931_18": "「だが……今こうして、進んだというわけだ」",
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"390000931_19": "「そこの男はオレたちに唄わせることで\\n フォニックゲインを極限まで高め……」",
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"390000931_20": "「本当に、<ruby=ルベド>赤化</ruby>――\\n 『黄金錬成』までもっていくつもりだったようだが……」",
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"390000931_21": "「何か申し開きはあるのか?」",
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"390000931_22": "「その通りだからね。\\n ないのさ、否定する意味など」",
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"390000931_23": "「……。",
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"390000931_24": " 『<ruby=アルベド>白化</ruby>』だが……」",
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"390000931_25": "「この段階には、再結晶という概念が存在する」",
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"390000931_26": "「砕かれ、分たれ、散り散りになったものが\\n 再度1つとなる――」",
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"390000931_27": "「まさか……細分された聖遺物の因子を、\\n 集めて『1つ』に……?」",
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"390000931_28": "「それにより、ゾンビ化した人々の、\\n 体内に残る因子を除去しようと……ッ!?」",
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"390000931_29": "「未完成のエリクサーの中にある聖遺物の力は、\\n 極限まで細かく砕かれていて――」",
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"390000931_30": "「だからこそ、本気の歌が必要だった。",
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"390000931_31": " それらを1つに束ねるにはね」",
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"390000931_32": "「本気の想い、本気の歌……その両方だ。\\n たとえばそれは……僕を殺しかねないほどの」",
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"390000931_33": "「必要だろう?\\n 本気の歌を引き出すには。悪役と演出が」",
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"390000931_34": "「いやいや、わかんないってッ!\\n つまり……え? 何、あんたって……」",
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"390000931_35": "「エリザベートたちの『失敗作』の研究を\\n なんとか次の段階に進めるためだけに、この事件を……ッ!?」",
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"390000931_36": "「そうなるね。結果的に。\\n 応援したかったのさ。次代の錬金術師たちの可能性を」",
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"390000931_37": "「最初から、そのつもりで……」",
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"390000931_38": "「そのためだけに、こんな回りくどいことを……?」",
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"390000931_39": "「するものさ。\\n 己の目指す理念、信念――夢。そういったもののためにはね」",
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"390000931_40": "「キミにはないかい?\\n そういった覚えは」",
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"390000931_41": "「ハハ……まいったな。\\n そういった覚えだらけだよ」",
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"390000931_42": "「……そうだとしても、\\n 少しやり過ぎではありませんの?」",
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"390000931_43": "「アルカ・ノイズをエリザベートの拠点から奪い、\\n ゾンビ化した人々を回収……」",
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"390000931_44": "「元々、1つの聖遺物を素材としているからね。\\n このエリクサーは」",
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"390000931_45": "「体内に入ってしまった因子も、1箇所に集めておけば……\\n 吸着されるだろう? 再結晶の際、『大きい方』に」",
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"390000931_46": "「全ては準備さ。キミたちには疑われるように。",
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"390000931_47": " キャロルには……微妙なところだったね」",
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"390000931_48": "「それに、安全だろう。アルカ・ノイズの廃棄は、\\n キミたちと戦わせた方が」",
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"390000931_49": "「あたしたちがちゃんと全部壊すように……\\n 誘導したってことかッ!」",
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"390000931_50": "「ゾンビシャンパンを派手にばら撒いたのは?」",
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"390000931_51": "「まさか……パニックを避けるため、か?」",
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"390000931_52": "「襲うように見えても、人を攻撃するわけじゃない。\\n だったらいっそ全員に……ってか」",
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"390000931_53": "「美しかっただろう?\\n 演出としてもね」",
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"390000931_54": "「なんっっっという\\n ……無理くりかッ!」",
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"390000931_55": "「そ、そーだょッ!\\n もし、『アルベド』に至らなかったら……」",
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"390000931_56": "「確信していたさ、当然ね。\\n だからこそ、頼みに行った」",
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"390000931_57": "「堪えながらね。\\n 窮屈な服を脱ぎ捨ててしまいたくなる衝動も」",
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"390000931_58": "「このブローチをキャロルが見てくれさえすれば……\\n 信じていたからね。信じてくれると」",
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"390000931_59": "「チッ……」",
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"390000931_60": "「キャロルたちがお互いに寄せる想いに起因した歌ならば……\\n あわよくば、本当に至ると思っていたよ、黄金錬成にすらね」",
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"390000931_61": "「……」",
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"390000931_62": "「美しかっただろう?」",
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"390000931_63": "「『美しい』ことが到達点であるのは間違いないんだ。\\n 錬金術においてはね」",
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"390000931_64": "「錬金術は『美しい』……ッ!\\n マジでそれなッ!」",
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"390000931_65": "「1つではないんだ。\\n その<ruby=こたえ>真理</ruby>に到達するための道はね」",
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"390000931_66": "「だからこそ意義があった。\\n 僕が手助けする意義がね」",
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"390000931_67": "「それに……\\n 困っていたのさ。事実」",
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"390000931_68": "「僕の組織からは、『はぐれ』が出過ぎる。\\n 何故だろうかと」",
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"390000931_69": "「――僕はこう考えた。\\n 錬金術を愛するに足る、美しさを知らないからだと」",
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"390000931_70": "「で、でもでもッ!\\n そんなん、理屈じゃないしッ!」",
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"390000931_71": "「その通りさ。\\n エリザベート・バートリ」",
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"390000931_72": "「その通り……理屈じゃない。\\n けれども、ならば、知っているのではないかな?」",
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"390000931_73": "「理屈ではないのに、美しさに惹かれ。\\n 理屈ではないのに、理由ばかり後追いで湧き出してくる」",
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"390000931_74": "「恋のようにね、まるで。\\n この世界に対する――命に対する」",
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"390000931_75": "「しかしその心は……\\n わからない。その場で触れなければ」",
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"390000931_76": "「……ちなみにあたしたちには、お咎めアリなんですかねぇ?\\n あーあ、やっぱり食えない方ですねー」",
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"390000931_77": "「我々は何も気付けずに……ッ!」",
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"390000931_78": "「ないよ、咎める気など」",
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"390000931_79": "「変わってしまうのさ、少しのさじ加減でね。\\n それが、錬金術が至るべき到達点……<ruby=うつくしさ>真理</ruby>というもの」",
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"390000931_80": "「僕としては『必要なこと』を積み重ねただけさ。\\n 全てね」",
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"390000931_81": "「少しでもバランスが崩れれば何が起こっていたか……\\n それはもう、まさに、キセ――」",
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"390000931_82": "「……エリザベート。\\n 錬金術師が容易く『奇跡』などと言ってくれるなよ」",
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"390000931_83": "「これは、ただ全てが――オレたちの持ちうる遍くものが。\\n 作用した結果なのだから」"
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