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2022-12-28 12:03:17 +03:00

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{
"389001011_0": "a Perfect World",
"389001011_1": "数日後――",
"389001011_2": "「といったことで、都内、アイオニアン美術館に展示された、\\n 『サモトラケのニケ』は大変好評を博しており――」",
"389001011_3": "「状況検証のために、開催は数日遅れちゃったけど……\\n 無事に展示会がはじまって良かった」",
"389001011_4": "「それに……やっぱりわたし、\\n この欠けている状態でも十分きれいだと思うな」",
"389001011_5": "「デスデスッ!\\n このほうが想像の翼がバサバサはばたくデスよッ」",
"389001011_6": "「……でもね、不思議なことがあるの」",
"389001011_7": "「ニケの力を纏った瞬間、『完全』の意味だとか、\\n 不全であることだとか、理解できたような気がしたんだ」",
"389001011_8": "「でも、今はもう……」",
"389001011_9": "「アタシもデス。\\n ギアを脱いだらすっかり忘れてしまったのデスよ」",
"389001011_10": "「ゲオルクから与えられようとする『完全』の力、\\n それに抗っていたニケさん……」",
"389001011_11": "「もしかしたら、『完全』の力も、\\n ほんの一欠片だけは本物だったのかもしれないね」",
"389001011_12": "「だから、わたしたちもそれに強く影響を受けた瞬間だけは、\\n 全てが『解った』気がした……」",
"389001011_13": "「けど、結局一瞬しかわからなかったなら、\\n それはきっと、アタシたち自身のモにできてないってことデス」",
"389001011_14": "「戦闘訓練の動きをモノにして、\\n 自分に馴染ませていくのと同じなのデースッ」",
"389001011_15": "「それに……これからも必死で駆けずり回って、\\n 自分の<ruby=こたえ>完全</ruby>を探し続けたほうが……」",
"389001011_16": "「ずっとずっと、調と一緒にいられる気がするデスよ」",
"389001011_17": "「うん、そうだね。\\n わたしも、そう思う」",
"389001011_18": "「ね、切ちゃん?」",
"389001011_19": "「なんデスか?」",
"389001011_20": "「そのうち、また会いに行こう。\\n あの不全で、きれいな戦女神の像に、人で……」",
"389001011_21": "「もちろんデスッ!\\n いつでもお供するデスよ、調ッ」",
"389001011_22": "「どうだろうか。\\n 『メフィストフェレスの薬』の様子は」",
"389001011_23": "「はい。ゲオルクとの戦闘終了報告以降、\\n その反応は基底状態を示しています」",
"389001011_24": "「これは<ruby=いわ>謂</ruby>れにあったように『契約者の死』をもって、\\n 聖遺物が活動を停止したこと意味すると思われます……」",
"389001011_25": "「……。\\n 異形と化していた輸送船の乗組員たちは」",
"389001011_26": "「聖遺物の力の影響を外れ、今は快復傾向にあり、\\n 命に別状はないとのことですよ」",
"389001011_27": "「また、船に乗り合わせていた密輸組織の構成員たちですが、\\n こちらも幾人かは生存……」",
"389001011_28": "「無事捕らえられた彼らは、その罪を償うことになるでしょう」",
"389001011_29": "「そして、もう1つ……\\n 辛うじて口を開ける者が話してくれました」",
"389001011_30": "「ゲオルクをリーダーに冠していた組織……\\n その名は、『オプターレ』といったそうです」",
"389001011_31": "「密輸に手を出しはじめた頃には、もう、\\n 名乗らなくなっていた組織名なのだそうですが……」",
"389001011_32": "「オプターレ……\\n ラテン語で『望み』ですね……」",
"389001011_33": "「そう、でしたか……」",
"389001011_34": "「しっかし、契約が切れたとはいえ不思議だな。聖遺物の力が\\n 『完全』である以上、正直、元には戻らないと思ってた」",
"389001011_35": "「契約者の死――それを経たとしても、\\n 今まで見せていた『完全』がなくなるなんて」",
"389001011_36": "「それについては……ゲオルク自身が、\\n 最期に彼自身の願いを思い出したから、なのかもしれません」",
"389001011_37": "「願い……\\n いえ、それこそ『<ruby=のぞ>希</ruby>み』でしょうか」",
"389001011_38": "「けれど、ゲオルクがそれを<ruby=こいねが>希</ruby>った先の力は……」",
"389001011_39": "「モニタ上では、翼さんからの報告より少し前に\\n 聖遺物がなんらかの力を取り込んだような反応がありました」",
"389001011_40": "「もしそれがゲオルクの魂や想い、生命力といった類のものなら……\\n 聖遺物の力に、何かしらの影響があってもおかしくありません」",
"389001011_41": "「私は……そう思いたいです。いつも、歌と、想いの力を携えて、\\n 戦ってくれている翼さんたちを見ているから」",
"389001011_42": "「友里さん……」",
"389001011_43": "「……」",
"389001011_44": "「……どうした、翼?\\n そんな顔をして」",
"389001011_45": "「……考えていました」",
"389001011_46": "「何故、彼は『完全』を付与されても尚、不全であったのか……」",
"389001011_47": "「うむ……」",
"389001011_48": "「甘美な言葉で<ruby=いざな>誘</ruby>い、完全を追い求める者に救いを見せ、\\n 虚構の夢を人に与える……」",
"389001011_49": "「『メフィストフェレスの薬』は本当に、\\n 『悪魔』のような聖遺物でした」",
"389001011_50": "「0にいくら数字を掛けても0であるように、\\n 足りない力を人から回収し、具現させたとて――」",
"389001011_51": "「それはきっと、\\n 未来永劫『完全』には至らないのではなかろうか……」",
"389001011_52": "「……わたしは、そう思ってしまいます」",
"389001011_53": "「翼さん……」",
"389001011_54": "「しかし、だからこそ、\\n 人は不完全であればこそなのだろう、とも」",
"389001011_55": "「満ち足りないからこそ完全を求め、\\n 欠けているから不全を排する、それが人間……」",
"389001011_56": "「そして、欠けているからこそ想像の翼を広げ、\\n それを埋め合わせる夢を持つ……人が不全であるが故の完全」",
"389001011_57": "「だが完璧な人間など居らず、完全なものなどない」",
"389001011_58": "「人はどこかを欠いてればこそ、それを埋め合わせるため、\\n わたしたちは誰かとその手を繋ぐ……」",
"389001011_59": "「……わたしはその不全を、愛しく、美しく思うのです」",
"389001011_60": "「ああ、そうだな……」",
"389001011_61": "「――さて、要経過観察ではあるが、\\n ひとまずは一件落着と見ていいだろう、ご苦労だった」",
"389001011_62": "「恐縮ながらわたしは少々、休息をいただきます」",
"389001011_63": "「ああ、ゆっくり休め」",
"389001011_64": "「ボクたちは『メフィストフェレスの薬』の解析を続けます」",
"389001011_65": "「ちょっとは休みたいんだけどなぁ。\\n ニケの展示会に行く時間くらいもらえないかな」",
"389001011_66": "「ボヤかないの。",
"389001011_67": " もうひとがんばりよ」",
"389001011_68": "「まだわからないことばかりですし、\\n 解析結果が出たらまた報告しますね」",
"389001011_69": "「ああ、よろしく頼む」",
"389001011_70": "「……」",
"389001011_71": "「フッ……本当に、この不全の世界には……\\n わからないこと、ままならないことばかりだな……」"
}