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"389000141_0": "「まず第一に、聖遺物そのものの回収はできたが、\\n 今回の任務は達成と言えない状況にあることがわかった」",
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"389000141_1": "「――ッ!?」",
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"389000141_2": "「結論から言おう。聖遺物『メフィストフェレスの薬』は、\\n 現在も励起状態であり、『契約者』と共にある」",
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"389000141_3": "「『契約者』?\\n どういうことですか……ッ!?」",
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"389000141_4": "「皆さんは、\\n 戯曲『ファウスト』をご存じでしょうか?」",
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"389000141_5": "「ある程度……であれば」",
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"389000141_6": "「名前くらいは聞いたことあるけど……」",
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"389000141_7": "「アタシは端的に言うと、なんのこっちゃデス……」",
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"389000141_8": "「詩人ゲーテ作、『ファウスト』……\\n それは悪魔と契約したファウスト博士の物語です」",
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"389000141_9": "「その悪魔の名前が、メフィストフェレス……。\\n 全ての望みを満たそうと博士をそそのかした奴さ」",
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"389000141_10": "「メフィストフェレスッ! 聞いたことあるデスッ!\\n しかもごくごくごくごくごく最近にッ!」",
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"389000141_11": "「さっき回収した聖遺物の名前だよ、切ちゃん」",
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"389000141_12": "「メフィストフェレス……悪魔は、\\n 年老いたファウスト博士に、若返りの薬を与えたの」",
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"389000141_13": "「飽くなき探求心のため、若さを取り戻した博士は、\\n 恋をしたり、権力を得たりと、己の意のままに振る舞った」",
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"389000141_14": "「戯曲ラストの解釈はさておき……博士の振る舞いに\\n 対しての結果は、推して知るべしといったところよ」",
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"389000141_15": "「友里さん、お詳しいですね……ッ!",
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"389000141_16": " であれば、この意味もおわかりになるかもしれません」",
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"389000141_17": "「今回の聖遺物、『メフィストフェレスの薬』は、\\n 黒い雄鶏の羽の形状をしていました」",
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"389000141_18": "「幾つかの伝承が語る悪魔は、ときにヒトにも化ける。\\n けれど、必ず身体のどこかに黒い雄鶏の羽を有している……」",
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"389000141_19": "「はい。羽のような形状をしているのに、\\n どうして『薬』と呼称されているのか不思議でしたが……」",
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"389000141_20": "「……なるほど、\\n なんとなく話が見えてきた」",
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"389000141_21": "「つまり、悪魔の力は『薬』として\\n 誰かに譲渡されてから発現する……」",
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"389000141_22": "「ああ。聖遺物が励起状態に移行するとき、聖遺物の能力は、\\n 契約者、つまり励起させた本人に譲渡されるようなんだ」",
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"389000141_23": "「その特徴から、悪魔メフィストフェレスが博士に『薬』を渡した\\n 様に<ruby=なぞら>準</ruby>えて、そう呼ばれるようになった……そんなところだろう」",
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"389000141_24": "「せ、説明された説明の意味がわからないデス……」",
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"389000141_25": "「聖遺物の力を一部借り受けた者が、どこかに潜んでいる……\\n ということです」",
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"389000141_26": "「幸か不幸か、『メフィストフェレスの薬』そのものは、\\n 現状、励起状態を示しているだけの代物だ」",
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"389000141_27": "「じゃあ、やっぱり密輸組織のリーダーが、契約者で……」",
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"389000141_28": "「聖遺物の……『メフィストフェレスの薬』の能力、\\n 対象物の時間を戻す力を、使える状態になっているということ」",
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"389000141_29": "「なんという……ことだ……」"
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