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"382000221_0": "「……なんとか、矛を収めてくれたな」",
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"382000221_1": "「とりあえず、勝負は預けといてやる。こう周りが\\n ピーピーうるさかったら、落ち着いてケンカもできやしねぇ」",
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"382000221_2": "「だから、ケンカしないでくださいッ!\\n ここの皆さんはあたしの恩人なんですからッ!」",
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"382000221_3": "「まったく、難儀な師範だな……」",
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"382000221_4": "「でも、ちょっと納得しちゃったな」",
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"382000221_5": "「納得って、なにが?」",
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"382000221_6": "「明日香ちゃんの強さだよ。師匠と互角に戦える茶蔵さんの\\n 稽古を受けていたんなら、あれだけ強いのも当然だよね」",
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"382000221_7": "「確かに。未知の怪物に立ち向かっていく豪胆さの理由が\\n 垣間見えたな」",
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"382000221_8": "「しかし、お前が弟子をとるとは、らしくないな。\\n 自分の強さにしか興味がないと思っていたが」",
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"382000221_9": "「お前は、彼女の『夢』を応援しているのか?」",
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"382000221_10": "「正義のヒーローになるってやつか?",
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"382000221_11": " バカ言え。そんな下らないもの、俺が後押しするかよ」",
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"382000221_12": "「下らなくなんてないですッ!」",
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"382000221_13": "「ふん」",
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"382000221_14": "「あの、それじゃあ、どうして茶蔵さんは武道を極めようと\\n しているんですか?」",
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"382000221_15": "「誰かのための拳じゃないのに、人生を懸けて強くなろうとする。\\n ……それはいったい、なんのために?」",
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"382000221_16": "「なんのため、か……」",
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"382000221_17": "「いいか、よく聞きな、お嬢ちゃん」",
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"382000221_18": "「はいッ!」",
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"382000221_19": "「俺はよ……もともと格闘ゲームが好きでな」",
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"382000221_20": "「……はい?」",
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"382000221_21": "「来る日も来る日もゲーセンに通いつめ、血の滲むような鍛錬を\\n 続けた俺は、格闘ゲームを極め……やることが無くなった」",
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"382000221_22": "「だから俺は、ゲームの次は現実世界を拳で\\n 攻略することにしたんだ」",
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"382000221_23": "「つ、つまり茶蔵さんにとって、\\n 武道はゲームの延長っていうことなんですか……?」",
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"382000221_24": "「ああ、そうだ。現実だってゲームと同じだ。自分を操作する\\n 感覚で身体を動かせば、コンクリだって拳で砕ける」",
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"382000221_25": "「な、なんとッ! そうだったのデスねッ!」",
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"382000221_26": "「切ちゃん……たぶん、茶蔵さん以外には無理だから、\\n 真似しちゃダメだよ?」",
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"382000221_27": "「おっさんとなんとなく似てる気がしてたけど、\\n これで理由が分かったな」",
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"382000221_28": "「あー……師匠の修行って、映画を見ることだもんね」",
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"382000221_29": "「類が友を呼んだ、というところね」",
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"382000221_30": "「映画を見て強くなるのも、ゲーム感覚で強くなるのも、\\n どっちも同じレベルの変態だな」",
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"382000221_31": "「一緒にするんじゃねぇよッ!」",
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"382000221_32": "「映画は良いものだぞ、クリスくん」",
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"382000221_33": "「映画の話はいいんだよッ! 話が脱線するだろッ!」",
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"382000221_34": "「む……それもそうだな」",
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"382000221_35": "「……とにかく、俺が言いてぇのはだ」",
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"382000221_36": "「武の道ってのは、正義なんて混ざりものの入る余地が\\n ないくらい、シンプルで純粋なもんってことだ」",
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"382000221_37": "「強さの探求そのものが、現実世界を拳ひとつで\\n 攻略するってことよ」",
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"382000221_38": "「でも、それならどうして正義のヒーローを目指す\\n 明日香ちゃんを弟子にとったんですか?」",
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"382000221_39": "「そりゃ気まぐれだ。才能はあったしな」",
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"382000221_40": "「……それに、正直俺は退屈してた。世界中を旅してまわったが、\\n ラスボスに相応しい強さのやつは、意外といないもんだ」",
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"382000221_41": "「いっそ俺がラスボス側に回って、世界を相手にケンカを売るのも\\n 悪かねぇかと思ってたところに、こいつが現れやがった」",
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"382000221_42": "「もしも明日香を俺と同じレベルにまで育てることができりゃ、\\n 倒す敵が増えて、楽しくなるだろ?」",
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"382000221_43": "「とんでもない師弟関係ね……」",
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"382000221_44": "「それはともかくだ。明日香くん、そういえば君の両親は\\n 海外出張中で、道場に下宿しているんだったな?」",
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"382000221_45": "「はい。師範の道場の敷地内に間借りしています」",
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"382000221_46": "「つまり、茶蔵が保護者になるというわけだな。\\n ……であれば、事情を隠し続けるわけにもいかないか」",
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"382000221_47": "「よろしいのですか?」",
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"382000221_48": "「構わん。誰彼構わず吹聴して回る男でもない。\\n それに……」",
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"382000221_49": "「明日香くんを呼ぶたびに、本部を破壊されてはかなわんだろう」",
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"382000221_50": "「……以上の事情により、明日香くんを検査する必要があった」",
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"382000221_51": "「イシムとかいう怪物に、並行世界だと……?」",
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"382000221_52": "「……なるほどな」",
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"382000221_53": "「理解してくれたか?」",
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"382000221_54": "「……ふざけんなッ!\\n そんな与太話、誰が信じるかッ!」",
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"382000221_55": "「取り付く島もないデス……」",
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"382000221_56": "「師範ッ! あたしが装者の皆さんに助けられたのは本当ですッ!\\n それに、協力したいのはあたしの意志ですッ!」",
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"382000221_57": "「バカ言ってんじゃねぇッ! そんなよく分からんものに\\n 惑わされてる暇があったら、真面目に修行しろッ!」",
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"382000221_58": "「もうッ! 師範の分からず屋ッ!」",
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"382000221_59": "「なんだとッ!?」",
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"382000221_60": "「修行を休んじゃったのは悪かったですけど、\\n あたしは――」",
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"382000221_61": "【ドクンッ――】",
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"382000221_62": "「……ッ!」",
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"382000221_63": "「……明日香?」",
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"382000221_64": "「この気配……間違いありませんッ!」",
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"382000221_65": "「ひょっとして……ッ!?」",
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"382000221_66": "「はい……あいつらですッ!\\n イシムの生み出した怪物の気配がしますッ!」",
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"382000221_67": "「なんデスとッ!? それじゃあ、アタシたちはイシムを\\n 倒しきれていなかったってことデスかッ!?」",
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"382000221_68": "「今度は、この世界に攻めてきた……?」",
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"382000221_69": "「落ち着け。状況は不明だ。\\n ひとまずここは対処にあたるべきだろう」",
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"382000221_70": "「俺だ。\\n ……うむ、分かった。至急、対処にあたろう」",
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"382000221_71": "「今の連絡は?」",
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"382000221_72": "「正体不明の何者かによる破壊活動を確認したとのことだ。\\n ポイントは市街地からは離れているが、放ってはおけん」",
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"382000221_73": "「……ッ!」",
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"382000221_74": "「装者たちは現場へ急行してくれッ!」"
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