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2018-12-27 11:20:51 -05:00

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{
"319000541_0": "「はあ、はあ……」",
"319000541_1": "「奴らの基地からだいぶ離れたと思うが……」",
"319000541_2": "「こちら風鳴翼。二課本部、応答せよ」",
"319000541_3": "「まだ駄目か……」",
"319000541_4": "「――ん? 翼さん、聞こえますかッ!?」",
"319000541_5": "「繋がったッ! こちら風鳴翼、なんとか拾えているッ!」",
"319000541_6": "「良かった、翼さん、無事だったんですねッ!」",
"319000541_7": "「翼ッ! 怪我は無いかッ!?」",
"319000541_8": "「万全の状態、とは言えませんが、問題ありません」",
"319000541_9": "「そうか……。\\n 翼、状況を報告してくれ」",
"319000541_10": "「自分を拉致した錬金術師の基地から脱出。\\n 現在雪原を徒歩で逃走中。現在地は不明です」",
"319000541_11": "「天羽々斬の反応を検出しました――こ、ここはッ!」",
"319000541_12": "「――北極ですッ!」",
"319000541_13": "「北極だとッ!?」",
"319000541_14": "「北極……?」",
"319000541_15": "(独力での脱出は絶望的だ。\\n なんとか二課に回収してもらわねば",
"319000541_16": "(だが、それまで体力が保つか……?)",
"319000541_17": "「翼、直ちに救援を出動させる。\\n できるだけ詳しい情報をくれ」",
"319000541_18": "「はい。敵基地周辺では通信やエネルギー反応が\\n 遮断されるため、距離を離しているところです」",
"319000541_19": "「救援まで時間がかかる。保ちそうか?」",
"319000541_20": "「正直言って難しいかもしれません。体力の限界も近い上、\\n 追っ手にも間もなく追いつかれることでしょう」",
"319000541_21": "「くッ……」",
"319000541_22": "(生き物ひとついない雪原に残った足跡を追うなど、\\n 吹雪の中とは言え、奴らにとって造作あるまい",
"319000541_23": "「その前に、こちらの情報をお伝えします」",
"319000541_24": "「……頼む」",
"319000541_25": "「敵錬金術師のリーダーは、\\n アリシア・バーンスタインという名の女です」",
"319000541_26": "「外見は20代後半から30代前半。\\n 青みがかった白髪に琥珀色の瞳」",
"319000541_27": "「それと、基地の中で奇妙な楽器を演奏していました」",
"319000541_28": "「奇妙な楽器……だと?」",
"319000541_29": "「はい。ドーム型の基地には大きなホールがあり、\\n 中央には巻き貝状の奇妙な楽器が据えられていました」",
"319000541_30": "「錬金術師が酔狂であんな物を設置しているとは思えません」",
"319000541_31": "「むう……しかし、敵は一体、なんのために?」",
"319000541_32": "「目的は、争いの無い世界を作る、\\n とそう言っていました。どこまで本心か諮りかねますが……」",
"319000541_33": "「争いの無い世界……だと……?」",
"319000541_34": "「そのためには、わたしの歌が必要だとも……」",
"319000541_35": "「歌が? どういうことだ……」",
"319000541_36": "「アリシア・バーンスタイン――。\\n 翼さんからの情報を元に検索にかけたところ」",
"319000541_37": "「該当する人物がヒットしました」",
"319000541_38": "「何者だ?」",
"319000541_39": "「紛争関係の行方不明者リストからです」",
"319000541_40": "「アリシア・バーンスタインは本名。\\n 『シリウス交響楽団』に所属」",
"319000541_41": "「シリウス交響楽団だと? あの事件の犠牲者か?」",
"319000541_42": "「シリウス交響楽団……? 何者なんですか?」",
"319000541_43": "「そちらの世界には存在していないか、\\n 事件が起きていないのかもしれんな」",
"319000541_44": "「主に紛争地帯などで苦しむ人たちを音楽で\\n 『笑顔』にするためにと、慈善活動していた楽団だった」",
"319000541_45": "「だが紛争に巻き込まれて、そのメンバーの多くが命を落とした。\\n 一昔前は随分と大きなニュースになった」",
"319000541_46": "「その楽団の生き残りが、なぜ……?」",
"319000541_47": "(いや……だからこそ、\\n 争いを憎み、争いの無い世界を求めているのか",
"319000541_48": "(だとしても、どうやって?)",
"319000541_49": "「この震動は――ッ!? 奴かッ!!」",
"319000541_50": "「グアアアア――ッ!!」",
"319000541_51": "「く――ッ!」",
"319000541_52": "「どうしたッ!?」",
"319000541_53": "「敵に捕捉されました」",
"319000541_54": "「先日交戦した巨大な怪獣――、\\n ベルゲルミルと、そうアリシアは呼んでました」",
"319000541_55": "「ベルゲルミルの情報はこちらでも掴んでいる」",
"319000541_56": "「完全聖遺物から生まれた危険な怪物よッ! 交戦は避けてッ!」",
"319000541_57": "「そうしたいのはやまやまですが……」",
"319000541_58": "「グアアアア――ッ!!」",
"319000541_59": "「ああ――ッ!!」",
"319000541_60": "「がはッ!!」",
"319000541_61": "(こ、ここまで、か……)",
"319000541_62": "「翼ッ! ダンナッ!? 翼はッ!?」",
"319000541_63": "「師匠、翼さんと通信が繋がったって――ッ!」",
"319000541_64": "「ベルゲルミルと交戦中らしいッ!」",
"319000541_65": "「自分で逃げ出したの?」",
"319000541_66": "「ぐあああ――ッ!」",
"319000541_67": "「翼ッ!? しっかりしろッ! すぐ助けに行ってやるッ!」",
"319000541_68": "「おい、なんとかならないのかッ!?」",
"319000541_69": "「……ここからではどうにもならんッ!」",
"319000541_70": "「了子さんッ! 方法はなんだっていいッ!\\n あたしを翼の下へ連れてってくれッ」",
"319000541_71": "「翼ちゃんがいるのは北極……。\\n ここからだとキロ以上離れてるわ」",
"319000541_72": "「北極ッ!?」",
"319000541_73": "「いくら私でも、すぐにそこへ連れていく術はないわ。\\n ごめんなさい……」",
"319000541_74": "「か、奏……」",
"319000541_75": "「翼、聞こえるか、翼ッ! お前は、あたしが必ず助けるッ!」",
"319000541_76": "「翼さんッ! わたしも必ず助けに行きますからッ!」",
"319000541_77": "「気をしっかりッ!\\n あなたは、こんなところで折れる剣じゃないッ」",
"319000541_78": "「立花……、マリアッ!?」",
"319000541_79": "「だから、待ってろッ! 絶対に……絶対に、諦めるなよッ!!」",
"319000541_80": "「うん……待ってる……待ってるよ、奏」",
"319000541_81": "「翼さんとの通信が……、途絶えました……」",
"319000541_82": "「――くそッ!」",
"319000541_83": "「翼さん……」",
"319000541_84": "「藤尭ッ!」",
"319000541_85": "「はい、救出の準備、急ピッチで進めていますッ!」",
"319000541_86": "(翼……無事でいてくれ……)",
"319000541_87": "「お仲間と最後のお話は済んだかしら?」",
"319000541_88": "「アリシア……バーンスタイン……」",
"319000541_89": "(わたしはまだ、お前の掌の上か……)",
"319000541_90": "「ううッ……」"
}