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"319000111_0": "平穏からの別離",
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"319000111_1": "「……少し前までは、こんなこと、想像もできなかった」",
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"319000111_2": "「あいつが、再びあたしの前に現れるなんてこと」",
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"319000111_3": "「――失ったはずの、あたしの片翼」",
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"319000111_4": "「ギャラルホルン――。\\n 並行世界を繋ぐ完全聖遺物が、その不可能を叶えた」",
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"319000111_5": "「あたしが死んだ並行世界からやってきた、もう1人の翼」",
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"319000111_6": "「片翼(あたし)を失った、あたしと鏡あわせの翼――」",
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"319000111_7": "「けれど、あいつは――。\\n あいつの心は、あたしとはぜんぜん違っていた」",
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"319000111_8": "「歌を捨て、絆を捨て、荒み、凍てついていたあたしの心を、\\n あいつは癒やし、溶かしてくれた」",
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"319000111_9": "「暗がりの中に膝を抱えてうずくまるばかりのあたしに、\\n 光の下で天翔るための翼を――歌を、取り戻させてくれた」",
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"319000111_10": "「あの日、あたしは翼に誓ったんだ――」",
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"319000111_11": "「――取り戻したこの翼で、誰よりも高く飛んでみせる」",
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"319000111_12": "「――2度と、この歌を絶やすことはしない」",
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"319000111_13": "「――あたしの歌声で世界をいっぱいにしてみせるって」",
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"319000111_14": "「……欲を言えば、もう1度、大勢のファンの前で\\n 翼と一緒に思いっきり唄いたい」",
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"319000111_15": "「戦いのための歌ではない、人々の心をふるわせるための歌を――」",
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"319000111_16": "「ツヴァイウィングとしての歌を――」",
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"319000111_17": "「けれど、それは贅沢な――。\\n あたしには贅沢すぎる願いってやつかもしれない」",
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"319000111_18": "「どうしたの? さっきから上の空で」",
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"319000111_19": "「ああ……別に。大したことじゃないさ。\\n ちょっとばかし、昔のことを思い出してたんだ」",
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"319000111_20": "「もう。人が来るなり考えごとって……」",
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"319000111_21": "「ハハ、ゴメンって」",
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"319000111_22": "「それにしても、\\n S.O.N.G.のダンナ、よく許可を出してくれたな」",
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"319000111_23": "「う、うん、折角の休みだから、特別にって許可をくれたの」",
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"319000111_24": "(久しぶりの休暇、奏に会いに行きたくて、\\n ギャラルホルンの前でうろうろしていたら……)",
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"319000111_25": "(それを見かねて司令が許可をくれた。\\n とは、流石に奏には言えないな)",
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"319000111_26": "「何はともあれ、あたしは嬉しいよ」",
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"319000111_27": "「わたしだって、\\n たまにでも、こうして奏に会えるのは、やっぱり嬉しい」",
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"319000111_28": "「ハハッ。ダンナたちには感謝だな」",
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"319000111_29": "「うん。そうだね……」",
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"319000111_30": "(大方、あっちのダンナたちが気を遣ってくれたんだろうな)",
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"319000111_31": "「どうかした?」",
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"319000111_32": "「あ、いや。なんでもない」",
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"319000111_33": "「ねえ奏、ちょっと部屋を見てもいいかな」",
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"319000111_34": "「いちいち確認しなくても、好きなようにしたらいいさ」",
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"319000111_35": "「だけど、面白いもんなんてないと思うぞ」",
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"319000111_36": "「そんなことないよ」",
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"319000111_37": "(でも、奏の曲や歌詞が沢山。\\n 奏、しっかりとアーティストしてるみたいだね)",
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"319000111_38": "「ん? これは、ツヴァイウィングの曲の歌詞?\\n 逆光のフリューゲル……」",
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"319000111_39": "「ツヴァイウィングの曲か……」",
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"319000111_40": "「なんだか不思議だよね」",
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"319000111_41": "「不思議?」",
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"319000111_42": "「うん、最初はびっくりしたけど、\\n わたしの世界のツヴァイウィングの曲と全く一緒で……」",
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"319000111_43": "「とても、別の世界の曲だなんて思えない」",
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"319000111_44": "「あたしたちは、世界が変わっても同じってことだろう?」",
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"319000111_45": "「だから、あたしは嬉しいけどね」",
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"319000111_46": "「それは、わたしだって……」",
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"319000111_47": "「それにしても、2人でこうして歌詞を眺めていると、\\n 曲の打ち合わせをしてるみたいだな」",
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"319000111_48": "「フフ、そうだね」",
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"319000111_49": "「フリューゲルの打ち合わせや曲合わせは、\\n 初めての経験で特に楽しかったよ」",
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"319000111_50": "「翼は、相変わらず真面目で、最初は特に堅苦しかったなー」",
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"319000111_51": "「そんなことないよ」",
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"319000111_52": "「いーや、絶対に同じだね。あたしにはわかる」",
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"319000111_53": "「わたしの世界の奏は、70億人のお客さんの前で唄うんだって、\\n めちゃくちゃなこと言ってたよ」",
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"319000111_54": "「そ、それは……、あたしも言ったような記憶がある」",
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"319000111_55": "「フフ……」",
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"319000111_56": "「ハハッ!」",
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"319000111_57": "「ほら、やっぱり変わらないじゃないか」",
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"319000111_58": "「うん、そうだね」",
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"319000111_59": "(そうだ、あの頃は本当に楽しかった。\\n もちろん、今も充分満足しているけど……)",
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"319000111_60": "(ずっと言い出せなかった、無理だとわかっているから、\\n でも……)",
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"319000111_61": "(もし、できるならもう一度、2人で一緒に――)",
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"319000111_62": "「二課から?」",
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"319000111_63": "「だな……」",
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"319000111_64": "「どうした、ダンナ? 出動か?」",
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"319000111_65": "「ああ、多数のノイズの反応を検知した。\\n 来客中すまんが、指定のポイントへ急行してくれ」",
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"319000111_66": "「了解。すぐ出る」",
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"319000111_67": "「奏、気をつけてね」",
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"319000111_68": "「ああ、わかってるって」"
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