76 lines
7.9 KiB
JSON
76 lines
7.9 KiB
JSON
{
|
||
"318001011_0": "よく晴れた空の下で",
|
||
"318001011_1": "「――って」",
|
||
"318001011_2": "「<size=40>なんでこんな密林の中を延々歩かなきゃいけないのよッ!</size>」",
|
||
"318001011_3": "「局長直々のご命令――というワケダ」",
|
||
"318001011_4": "「まさか我々の不在中に、協会から盗まれた物があるとはね」",
|
||
"318001011_5": "「なんなのよ、ホントにもう。\\n 空き巣とスパイの天国なの? うちの協会って」",
|
||
"318001011_6": "「はぐれの残党がまだ内部に残っていた可能性もあるワケダ」",
|
||
"318001011_7": "「とにかくいい加減、\\n 協会のセキュリティを見直した方がよくないッ!?」",
|
||
"318001011_8": "「それより、あの局長の迂闊さをなんとかした方がいいワケダが」",
|
||
"318001011_9": "「そうよねッ! 大事な物をそこいらに放って置くしッ!」",
|
||
"318001011_10": "「先日のアダムスフィアも、まるで使い終わって丸めた\\n ティッシュの如く無造作に局長の部屋に転がってたワケダ」",
|
||
"318001011_11": "「そりゃ盗まれて当然でしょうよ……」",
|
||
"318001011_12": "「協会のセキュリティ見直しには大いに賛成だけど、\\n 局長の習慣を変えることは、正直難しいでしょうね」",
|
||
"318001011_13": "「なにしろ、もうかれこれ千年も前からああなのだから」",
|
||
"318001011_14": "「はー……ホンットにもう。\\n 親の顔が見て見たいわよ」",
|
||
"318001011_15": "(親の顔……か)",
|
||
"318001011_16": "「フ……同感なワケダ」",
|
||
"318001011_17": "「それにしたって、今度盗まれたのは局長の服ですって?」",
|
||
"318001011_18": "「盗んだヤツは何がしたいのよッ!? フェチなの? 変態なの?\\n 他にもっと良い物あったでしょッ!?」",
|
||
"318001011_19": "「カリオストロ……日本でキレ芸を覚えてきたワケダね」",
|
||
"318001011_20": "「な、何がキレ芸よ?\\n 普通に腹に据えかねているだけだってば」",
|
||
"318001011_21": "「敵の研究所に残されたレポートの断片を読むに、あの服に\\n アダムの力を封じる為の力がある――と誤認したようね」",
|
||
"318001011_22": "「つまり、魔力の拘束具というワケダ」",
|
||
"318001011_23": "「そんな能力、本当にあるの?」",
|
||
"318001011_24": "「いや? 実際はなんの変哲もない、ただの服というワケダが」",
|
||
"318001011_25": "「じゃあ、そんなの放っておけばいいじゃないのッ!」",
|
||
"318001011_26": "「何が『次の任務がある』よ。あんな思わせぶりなこと\\n 言ってたから、よっぽど大事な任務かと思ったのにッ!」",
|
||
"318001011_27": "「まあ、局長にとっては大事な物らしいけどね」",
|
||
"318001011_28": "「お気に入りの服というワケダ」",
|
||
"318001011_29": "「オキニの服とかそういうタイプなわけッ?\\n どうせすぐ脱ぐくせに服にこだわるとか意味不明でしょッ!」",
|
||
"318001011_30": "「ああ、おかげでしょっちゅう\\n 余計な物を見せつけてくれるワケダ……」",
|
||
"318001011_31": "「あれってセクハラよね……。\\n もうホント、酷い上司ッ! いつか訴えてやるッ!」",
|
||
"318001011_32": "「どこに訴えるというワケダ?」",
|
||
"318001011_33": "「局長のあの性質……いや性癖か?\\n ――については、流石に私も擁護のしようがないな」",
|
||
"318001011_34": "「それにしても、いつ回収できるのよ、その服は……」",
|
||
"318001011_35": "「ロンドンからパリ、イスタンブールにサンクトペテルブルク、\\n コルカタときて、ダメ押しにまた南米? ふざけてるの?」",
|
||
"318001011_36": "「それだけ例の服が人から人へと渡ってるワケダ」",
|
||
"318001011_37": "「おそらく服の力が検出できなかったために、\\n 各地の技術者や科学者に調査させているのでしょうね」",
|
||
"318001011_38": "「バッカみたい。\\n ありもしないものを見つけようとしたって無駄なのに」",
|
||
"318001011_39": "(ありもしないものを追い求める――か。\\n 私たちの願う世界も、もしかすると――)",
|
||
"318001011_40": "「おかげでこの前の任務に負けず劣らず面倒な任務というワケダ」",
|
||
"318001011_41": "「だーかーら、そんな服、\\n 敵に燃やされたことにして終わりにすればいいじゃない」",
|
||
"318001011_42": "「だが、的確に服の移動先を突き止めてくる局長のこと。\\n 服の安否状態も把握しているでしょうね」",
|
||
"318001011_43": "「虚偽は無駄だというワケダ」",
|
||
"318001011_44": "「だったら自分で回収に行きなさいよねッ!」",
|
||
"318001011_45": "「まあ、それも正論なワケダ」",
|
||
"318001011_46": "「ほら、2人とも密林を抜けたわ」",
|
||
"318001011_47": "「ん~、風が気持ちいいわね」",
|
||
"318001011_48": "「これなら少しは気分も晴れるというワケダ」",
|
||
"318001011_49": "「フフ……たまにはこんな暢気な目的の任務も、悪くないわ」",
|
||
"318001011_50": "「えッ?」",
|
||
"318001011_51": "「<size=25>サンジェルマン……今、笑った?</size>」",
|
||
"318001011_52": "「<size=25>革命革命と常に自分を追い込んでばかりの\\n サンジェルマンが……、どういう風の吹き回しなワケダ?</size>」",
|
||
"318001011_53": "「どうかした?」",
|
||
"318001011_54": "「なんだかサンジェルマン、\\n いやに楽しそうだな、って思って」",
|
||
"318001011_55": "「ああ、サンジェルマンのそんな顔、初めて見たワケダ」",
|
||
"318001011_56": "「そういう2人だって、楽しそうな顔してるわよ」",
|
||
"318001011_57": "「え、そう? あーしはいつも通りよ」",
|
||
"318001011_58": "「フッ、わたしもこんな気持ちは久々なワケダが」",
|
||
"318001011_59": "「せっかくだから、休暇を兼ねて、\\n ゆっくりとやらせてもらうワケダ」",
|
||
"318001011_60": "「そうね……まあでも、密林は勘弁だけどね。\\n 次はバリとかグアムとか、極楽みたいなところに行きたいわ☆」",
|
||
"318001011_61": "「局長の服が向かってくれることを祈るワケダ」",
|
||
"318001011_62": "(極楽、楽園……どこにもない世界――ウ・トポス。\\n ユートピア……空想の中の理想郷、か……)",
|
||
"318001011_63": "(我々は、いつか本当にそこへ辿り着けるのだろうか?)",
|
||
"318001011_64": "(千年もの時を歩み続けても見つけられなかったものを――)",
|
||
"318001011_65": "(――いや。だが、その永い旅の果てに、\\n 一筋の光明を与えてくれる者にも、ようやく出会えた)",
|
||
"318001011_66": "(ならば――\\n そうだな。私たち3人なら、必ず見つけられる)",
|
||
"318001011_67": "(いつか、私の母のように支配や権力の犠牲となる人々を\\n 無くす術も、見つけられるかもしれない)",
|
||
"318001011_68": "(例え、それがどんなに困難な道のりでも、\\n 歩み続けることを、私は、諦めたりはしない)",
|
||
"318001011_69": "(こうして、共に同じ道を歩む仲間がいてくれる限り――)",
|
||
"318001011_70": "(それでいいのだろう、立花響?)",
|
||
"318001011_71": "「サンジェルマン、遅いわよッ!」",
|
||
"318001011_72": "「置いていってもいいワケダ」",
|
||
"318001011_73": "「ああ、すまない。今行くわッ!」"
|
||
} |