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{
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"317001011_0": "また出会える日を願って",
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"317001011_1": "「あのあとから、ペンダントを身につけて生活してるのか?」",
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"317001011_2": "「うん、もし何かが起きたら、\\n わたしも一緒に戦うために」",
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"317001011_3": "「あの時はあんまり違和感なかったけど、\\n なんか慣れないな」",
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"317001011_4": "「そうだよね。\\n 未来がまた怪我しないかってちょっと心配……」",
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"317001011_5": "「もうッ! わたしが今まで、その心配をどれだけ\\n したと思ってるの?」",
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"317001011_6": "「う……ごめん」",
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"317001011_7": "「だけど、正式装者だなんて、こんな重要なこと、\\n よく司令は認めてくれたわね」",
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"317001011_8": "「これまでのことを踏まえての判断よ」",
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"317001011_9": "「友里さんッ!?」",
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"317001011_10": "「これまでのこと……?」",
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"317001011_11": "「ええ、正式装者でないとはいえ、\\n これまで何度か装者として戦ってくれたことがあるでしょ?」",
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"317001011_12": "「それに、\\n 1人でトレーニングルームで訓練をしていたり」",
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"317001011_13": "「そういえば、一緒に心象訓練もしたことあったよね」",
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"317001011_14": "「それらを踏まえての判断、と司令は言っていたわ」",
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"317001011_15": "「……わたしのことちゃんと見ていてくれたんだ」",
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"317001011_16": "「なるほど。\\n これまでずっと、装者としての資格を見極めていたってことね」",
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"317001011_17": "「よかったね、未来」",
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"317001011_18": "「うん」",
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"317001011_19": "「だけど、やっぱりわたしとしては、心配だよ……」",
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"317001011_20": "「あら、こんにちは。\\n もしかして、研究室へ向かう途中?」",
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"317001011_21": "「はい、宝珠の解析が終わったから来てほしいと言われて」",
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"317001011_22": "「せっかくだから、私もご一緒させてもらっていいかしら」",
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"317001011_23": "「はい、もちろんです」",
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"317001011_24": "「そういや、あれからアイツらはどうなったんだ?\\n 詳しいことはまだ聞けてないんだ」",
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"317001011_25": "「姉さんは、刑に服すことになったわ」",
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"317001011_26": "「あれだけのことをしたんだから、当然よね……」",
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"317001011_27": "「錬金術師たちの中で生き残ったものは全員逃亡してしまったそうよ」",
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"317001011_28": "「そうか……」",
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"317001011_29": "「お姉さんとは面会はできるんですか?」",
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"317001011_30": "「ええ、何度か話をしているわ。姉さん、\\n カーバンクルの涙を見て、やっと昔を思い出したみたい」",
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"317001011_31": "「姉妹で仲直りできたんですね」",
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"317001011_32": "「まだちょっとぎこちないところはあるけどね」",
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"317001011_33": "「皆さん、\\n 未来さんが持ち帰ったこの宝石についてですが――」",
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"317001011_34": "「これはカーバンクルの宝珠の欠片で間違いありません」",
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"317001011_35": "「やっぱり、そうなのかッ!?」",
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"317001011_36": "「はい。ですが、完全聖遺物ではなくなってしまったので、\\n 今は力を検知することはできません」",
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"317001011_37": "「おふたりが聞いたというカーバンクルの声についても、\\n 残念ながら確認はできませんでした」",
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"317001011_38": "「でも、確かに聞いたぞ」",
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"317001011_39": "「はい、それでこれは推測なんですが……」",
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"317001011_40": "「もしかしたらこれは、ただの欠片なのではなく、\\n 宝珠の核というべきものなのかもしれません」",
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"317001011_41": "「宝珠の核……?」",
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"317001011_42": "「もともと意思のようなモノを持った聖遺物でしたので、\\n もしかしたらと」",
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"317001011_43": "「じゃあ、カーバンクルは生きてるってこと?」",
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"317001011_44": "「その質問の回答はとても難しいです」",
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"317001011_45": "「意思のようなものが残っていたとしても、砕けてしまった\\n 宝珠を再び起動することができるか……」",
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"317001011_46": "(もう一度、あの子と会えたら、\\n わたしは一体、何を話すのかな……)",
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"317001011_47": "「このカーバンクルの宝珠の欠片の処遇だが……」",
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"317001011_48": "「ど、どうなるんだッ!?」",
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"317001011_49": "「貴瀬翠くんに政府直轄の研究施設に所属してもらい、\\n 研究を託そうと思う」",
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"317001011_50": "「……お気持ちは嬉しいですが、お受けできません」",
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"317001011_51": "「どうしてですか?」",
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"317001011_52": "「かつて宝珠の姿になったカーバンクルは、私たちがどんなに\\n 研究を重ねても、元の姿に戻ることはなかった」",
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"317001011_53": "「だから、きっと私には……」",
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"317001011_54": "「あの子が宝珠に戻ってしまった原因、わかるような気がします」",
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"317001011_55": "「え……?」",
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"317001011_56": "「あの子は、とっても寂しがり屋で、優しくて、\\n 一緒に暮らす人のことが大好きなんです」",
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"317001011_57": "「……ええ、そうだったわね」",
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"317001011_58": "「だからきっと、2人が喧嘩しているのを\\n 見たくなかったんじゃないでしょうか」",
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"317001011_59": "「え……?」",
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"317001011_60": "「自分のせいで仲のよかった2人の気持ちが離れていくのが\\n 耐えられなかったんだと思います」",
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"317001011_61": "「だから、自分がいなくなれば喧嘩の原因がなくなると思って、\\n 自らの活動を停止し、宝珠の姿へ戻ったんじゃないでしょうか」",
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"317001011_62": "「仮説でしかない話だが、深くカーバンクルと心を通わせた\\n 彼女が言うのなら本当にそうなのかもしれないな」",
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"317001011_63": "「私たちの喧嘩が原因……。そうか……、\\n あの子なら、やるかもしれないわね」",
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"317001011_64": "「お姉さんは罪を償ってからになりますけど、\\n 昔のように2人の仲の良い姿を見せれば、きっと……」",
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"317001011_65": "「フフ、なら研究者として、もう一度、あの子に会って、\\n 真相を確かめないといけないわね」",
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"317001011_66": "「なら、決まりだな」",
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"317001011_67": "「姉さんが罪を償って帰って来た時のために、\\n 宝珠を修復するための研究をしていこうと思います……」",
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"317001011_68": "「そして、今度は姉妹で協力して、\\n カーバンクルとの再会を目指します」",
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"317001011_69": "(後処理はいろいろとあるみたいだけど、\\n 今回の事件は解決って感じか)",
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"317001011_70": "(あとはあの部屋に置いてある荷物を持って家に帰れば\\n いつもの日常だな……)",
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"317001011_71": "(いつもの日常、か……。\\n そういや、あの部屋に何日くらい泊まったんだろう)",
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"317001011_72": "(すっかり居心地がよくなって、このドアを開けると、\\n カーバンクルのやつが飛びついてきてたんだよな)",
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"317001011_73": "「ただいまー、なんてな」",
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"317001011_74": "「おかえりなさーい」",
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"317001011_75": "「うわあッ!? な、なんでいるんだッ!」",
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"317001011_76": "「そんなに驚くことないのに。\\n わたしは荷物を取りに来ただけだよ」",
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"317001011_77": "「ああ、あたしと一緒か。\\n バタバタしてて、持って帰るの忘れてたんだよな」",
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"317001011_78": "「というのはウソなんだけどね」",
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"317001011_79": "「はあッ!? じゃあ、なんでこの部屋にいるんだよ」",
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"317001011_80": "「2人であと1日だけ、この部屋でお泊りしたいなって思ったの。\\n だから、先回りして準備を整えてたんだ」",
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"317001011_81": "「はぁ……あのな、あたしが断るとは思わなかったのか?」",
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"317001011_82": "「えッ、帰っちゃうの?\\n 弦十郎さんたちから許可も取ってきたのに」",
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"317001011_83": "「……ま、まあ、1日くらいなら構わないけど」",
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"317001011_84": "「クリスならそう言ってくれると思ってたよ。\\n お茶淹れるから、ちょっと待っててね」",
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"317001011_85": "「というか、あのバカはいいのか。\\n 一緒に泊まるーッ! とか言いそうなのに」",
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"317001011_86": "「ああ、それは大丈夫だよ。\\n 実はこのお泊りは響からの提案なんだ」",
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"317001011_87": "「クリスちゃんは寂しがり屋だから、あと1日くらいは\\n 一緒にいてあげないとダメだよッ! ……って」",
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"317001011_88": "「どこの誰が寂しがり屋だ。あのバカ、あとで覚えとけよ……」",
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"317001011_89": "「本当はわたしも誘うつもりでいたんだよ。\\n でも、迷惑かなって思ってた時に響から提案されたの」",
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"317001011_90": "「本人はそのつもりなかったんだろうけど、\\n 背中を押された感じかな」",
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"317001011_91": "<size=25>「そうだったのか。\\n たまにはいいことするじゃないか……」</size>",
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"317001011_92": "「今、なんて言ったの?\\n ちょうどお湯が湧いて聞こえなかった」",
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"317001011_93": "「な、なんでもない……」",
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"317001011_94": "「……なんか、この部屋でここまでのんびり過ごすのも\\n 初めてかもしれないな」",
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"317001011_95": "「いつもはあの子が部屋中を駆け回ったり、\\n どっちかの肩に乗っかってたりしてたもんね」",
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"317001011_96": "「ねえ、見て?」",
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"317001011_97": "「これは、あの時の……」",
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"317001011_98": "「いい子だったね」",
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"317001011_99": "「……ああ」",
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"317001011_100": "「……」",
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"317001011_101": "「……」",
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"317001011_102": "「また、会えるかな……?」",
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"317001011_103": "「当たり前だろ。きっと、また会える」"
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