53 lines
5.0 KiB
JSON
53 lines
5.0 KiB
JSON
{
|
||
"328000421_0": "「ただいま戻りました」",
|
||
"328000421_1": "「お帰りなさい。\\n お待ちかねの情報が届いているわよ」",
|
||
"328000421_2": "「お待ちかね? なんだ、そのファイルは?」",
|
||
"328000421_3": "「情報部から『草薙』についての調査報告が届いたのよ」",
|
||
"328000421_4": "「草薙の? 本当ですかッ!?」",
|
||
"328000421_5": "「嘘ついてどうするというの?」",
|
||
"328000421_6": "「まあいい。早く内容を聞かせてくれ」",
|
||
"328000421_7": "「ええ。草薙という組織は、明治以降、\\n 政府直轄の諜報組織として活躍していたみたいね」",
|
||
"328000421_8": "「政府直轄の……それは今も?」",
|
||
"328000421_9": "「いえ。この資料によれば、既に解体されているようね」",
|
||
"328000421_10": "「そして緒川家というのは代々、\\n この草薙を束ねていた頭領の家系」",
|
||
"328000421_11": "「この血筋は、古くは豊臣秀吉に仕えた\\n 飛騨の陰忍の家系だったとあるわ」",
|
||
"328000421_12": "「その辺の来歴は、そちらの世界と同じ様だな」",
|
||
"328000421_13": "「はい。それに関しては、こちらの緒川さんも\\n 否定はしていませんでした」",
|
||
"328000421_14": "「だが政府直轄機関といえば、\\n 二課の前身である旧風鳴機関と似た様なものか……」",
|
||
"328000421_15": "「そんな組織が、一体、何故解体されたんだ?」",
|
||
"328000421_16": "「その辺の理由まではこの報告書には書いていないわね」",
|
||
"328000421_17": "「そうですか……」",
|
||
"328000421_18": "「けれど、本当に解体されたのかしらね?」",
|
||
"328000421_19": "「それは、どういう……?」",
|
||
"328000421_20": "「解体したように見せかけただけで、水面下では存続させている\\n 可能性もあるんじゃないかしら?」",
|
||
"328000421_21": "「なるほど。表立って存在しないことにすれば――」",
|
||
"328000421_22": "「ええ。より極秘度の高い組織のできあがり。\\n もっと後ろ暗い任務も実行し放題ね」",
|
||
"328000421_23": "「しかし、そんなことがあり得るのでしょうか?\\n いやしくも国家の政府が――」",
|
||
"328000421_24": "「国家というものは綺麗事だけでは動かないものよ。\\n いつの時代もね」",
|
||
"328000421_25": "「いえ。人権思想の発展した近現代だからこそ、\\n 建前と本音の使い分けは、より重要になったと言えるわ」",
|
||
"328000421_26": "「流石に長年歴史を見続けてきた人間の言葉には重みがあるな」",
|
||
"328000421_27": "「女性相手に歳の話はしないでもらえるかしら?」",
|
||
"328000421_28": "「いや、これはすまん」",
|
||
"328000421_29": "「では、草薙は今も尚、政府の下に――」",
|
||
"328000421_30": "「今も草薙という名の組織がそのまま存在しているのだから、\\n その可能性は高いわね」",
|
||
"328000421_31": "「確かにな……」",
|
||
"328000421_32": "「ですが、緒川さんが草薙の首領の血筋ならば、\\n なぜ草薙の忍者たちと争っているのでしょう?」",
|
||
"328000421_33": "「恐らくは、跡目争いといったところだろう」",
|
||
"328000421_34": "「まあ、そんなところでしょうね」",
|
||
"328000421_35": "「跡目争い……? そんな馬鹿な」",
|
||
"328000421_36": "「どうした?」",
|
||
"328000421_37": "「わたしの知る緒川さんは、自らの立場を守るために\\n 人と争うような人では……」",
|
||
"328000421_38": "「本人が好むと好まざるとにかかわらず、その血故に巻き込まれる。\\n それが跡目争いというものさ」",
|
||
"328000421_39": "「君も風鳴の血を持つ者なら、心当たりがあるんじゃないか?」",
|
||
"328000421_40": "「……」",
|
||
"328000421_41": "「ともかく、草薙の過去の活動や、解体後に起こった政府が\\n 有利になる事件、要人急死などの情報を掻き集めてくれ」",
|
||
"328000421_42": "「その辺から、奴らの現在の動向が掴めるかもしれん」",
|
||
"328000421_43": "「了解したわ。あなたは?」",
|
||
"328000421_44": "「俺は俺のコネクションを使って調べてみる。\\n 明日にも政府関係者で関連情報を握ってそうな人に会ってみよう」",
|
||
"328000421_45": "「ならばわたしも――」",
|
||
"328000421_46": "「気持ちはわかるが、この世界では\\n 君はいないことになっているからな」",
|
||
"328000421_47": "「あ……。そう、でした……」",
|
||
"328000421_48": "「君には十分助けてもらっている。\\n 今は俺たちに任せて、しばしの間、ここで待っていてくれ」",
|
||
"328000421_49": "「……了解しました」",
|
||
"328000421_50": "(緒川さん……本当に、あなたは……?)"
|
||
} |