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{
"309000121_0": "(あれは数日前の話。セレナがわたしを訪ねてきて――)",
"309000121_1": "「マリア姉さん、ちょっと相談があるんだけど……」",
"309000121_2": "「どうしたの?」",
"309000121_3": "「最近、なんだかマムの元気がなくて」",
"309000121_4": "「まさか病気とか……ッ!?」",
"309000121_5": "「そ、そうじゃないの。病気じゃなくて、\\n なにか悩み事があるみたいなんだけど」",
"309000121_6": "「それは気になるわね」",
"309000121_7": "「うん。だから、マリア姉さんなら何かわかるかなって」",
"309000121_8": "「ここでマムの悩みを推理してもどうにもならないわ。\\n 一度、尋ねてみましょう」",
"309000121_9": "「S.O.N.G.に許可を取ってわたしもいくから」",
"309000121_10": "「本当? ありがとう」",
"309000121_11": "「マムと妹のためだもの」",
"309000121_12": "「マム。セレナから聞いたわ。\\n 何か悩んでいることがあると」",
"309000121_13": "「マリア……。急に訪れたと思ったら」",
"309000121_14": "「わたし、マムに元気がないのが心配で」",
"309000121_15": "「あなたが心配する必要は無いと言ったはずです。\\n それに無断であちらにいき、マリアまで巻き込むとは」",
"309000121_16": "「ごめんなさい……」",
"309000121_17": "「マム、何か悩みがあるなら話して欲しい。\\n 世界は違っても、わたしたちは家族なんだから」",
"309000121_18": "「しかし、これは研究者側の問題です。\\n あなたたちが心配することではありません」",
"309000121_19": "「それでも、話して欲しい。わたしも、セレナも、\\n マムから沢山のものを貰ったわ。だから……」",
"309000121_20": "「力になれるかは分からないけど、\\n せめて一緒に悩みたいんです」",
"309000121_21": "「マリア、セレナ……。\\n わかりました。あなたたちがそこまで言うのなら」",
"309000121_22": "「現在、F.I.S.はとある企業から聖遺物の譲渡を\\n 要求されているのです」",
"309000121_23": "「どうして聖遺物を」",
"309000121_24": "「聖遺物とは可能性の塊です。\\n ゆえに、それを欲しがる者は数知れない……」",
"309000121_25": "「今までも、いくつか聖遺物関連のサンプル提供を\\n 要求された事がありました」",
"309000121_26": "「無論、正しい知識を持たない者たちに聖遺物を\\n 渡す事は出来ないと断ったのですが――」",
"309000121_27": "「米国F.I.S.から直接の圧力があり、\\n 譲渡を余儀なくされたものもすでに幾つかあります」",
"309000121_28": "「そんな、どうして米国のF.I.S.が……」",
"309000121_29": "「恐らくは米国の有力な議員にコネか何かを持つ者が、\\n 聖遺物の取引に絡んでいるのでしょう」",
"309000121_30": "「厳重な保管および不用意な扱いを行わない旨の\\n 確約は取り付けてはいたのですが」",
"309000121_31": "「先日、ついに聖遺物の影響と思われる\\n 事故が発生してしまいました」",
"309000121_32": "「聖遺物を侮っているわ……ッ!」",
"309000121_33": "「ええ。しかも、こちらで事故の背景を詳しく調べたところ、\\n どうやらその聖遺物を横流しした者がいるようなのです」",
"309000121_34": "「どうしてそんなこと……」",
"309000121_35": "「人には欲があるのよ。\\n 聖遺物ブローカーなんて、冗談にもならないけれど」",
"309000121_36": "「横流しのルートはまだはっきりしませんが、\\n 譲渡品のリストにはネフィリムの細胞サンプルなどもあり――」",
"309000121_37": "「ネフィリム……」",
"309000121_38": "「ええ。このままでは、いつか更に重大な事故が\\n 起こるのではないかと……」",
"309000121_39": "「悩んでもどうにかできる事ではありません。\\n やはり、あなたたちに話すべき事ではありませんでしたね」",
"309000121_40": "「マム……」",
"309000121_41": "「セレナ。マリアをあちらの世界まで送っていってあげなさい」",
"309000121_42": "「しばらくこちらは忙しいので、\\n 少しの間であればゆっくりしてもかまいません」",
"309000121_43": "(ゆっくりしてきていいって言われたけど……)",
"309000121_44": "「はあ……」",
"309000121_45": "「なんだか元気ないね。\\n マリアが仕事にいっちゃったから」",
"309000121_46": "「そうじゃ……ないんですけど」",
"309000121_47": "「そうデスッ! こんなときはッ!」",
"309000121_48": "「これは……?」",
"309000121_49": "「響さんのお友達に、半ば強引に渡されたんデスけど、\\n このアニメ、すっごく面白かったデスよ」",
"309000121_50": "「気に入ったらいろんな人に布教して、とも言われてたので、\\n まずはセレナに布教デス。きっとこれで元気も出るデス」",
"309000121_51": "「うん。わたしも見たけど、面白かったよ」",
"309000121_52": "「……ありがとうございます。\\n どんなお話か楽しみです」",
"309000121_53": "「感想も絶賛募集中デスッ!」",
"309000121_54": "「マリア姉さんが帰ってくるまで、暁さんから借りたアニメを\\n 見てようかな」",
"309000121_55": "(暁さんと月読さん、タイプの全然違う2人が\\n 面白いって言うなら絶対面白いはず、楽しみ……",
"309000121_56": "「そこまでだッ!\\n もう逃げ場はないぞッ」",
"309000121_57": "「今度こそ年貢の納め時だぞ、義賊だかなんだか知らないが……」",
"309000121_58": "「正義のために盗み取るッ!\\n わたしは決して捕まらないわッ」",
"309000121_59": "「き、消えたッ!?」",
"309000121_60": "「なるほど、悪い人からお宝を盗む怪盗少女……。\\n こんなアニメもあるんだ」",
"309000121_61": "(けっこうカッコ良くて、面白そう……。\\n あの名乗りかたとかポーズもいいなあ",
"309000121_62": "「……あれ?」",
"309000121_63": "「そ、そうだッ! これだッ!」",
"309000121_64": "「ただいま、セレナ。\\n ついでにご飯を買ってきたから、一緒に――」",
"309000121_65": "「姉さんッ! わたしと一緒に、泥棒になってッ!」",
"309000121_66": "「え……ッ!?」",
"309000121_67": "「そ、そんな……ッ!」",
"309000121_68": "「姉さん……?」",
"309000121_69": "「泥、棒なんて……」",
"309000121_70": "「せ、セレナが……グレちゃった……ッ!」",
"309000121_71": "「ち、違うの、そうじゃなくてッ!」"
}