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"375000631_0": "「いい人たちだったデスね」",
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"375000631_1": "「ああ、あいつらのためにも、ペンタスを見つけないとな」",
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"375000631_2": "「……まぁ、誠実なプレイヤーなら、\\n 仲間に引き込んだ方が効率は上がる」",
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"375000631_3": "「完全にMOB寄りの風貌でしたけどね」",
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"375000631_4": "「お前らも、さっきは見捨てず一緒に戦ってくれてありがとな」",
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"375000631_5": "「お礼を言われるようなことじゃないデスよ」",
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"375000631_6": "「本当にそう。\\n わたしはただ、切ちゃんの安全を優先してるだけ」",
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"375000631_7": "「分かってる。\\n それでも言いたかったんだよ。ありがとうなッ!」",
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"375000631_8": "「だから――ッ!」",
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"375000631_9": "「そろそろ砦の敷地に入るデスッ!」",
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"375000631_10": "「よしッ! おしゃべりはここまでだなッ!\\n みんな、警戒を怠るんじゃないぞッ!」",
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"375000631_11": "「…………」",
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"375000631_12": "「なんだ? この砦、スッカラカンじゃねぇか……」",
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"375000631_13": "「ヴァイラの気配も、人の気配も……」",
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"375000631_14": "「えッ!? よもや、そのようなはずは……」",
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"375000631_15": "「ヨモヤ? あッ! あそこに金属の塊があるデス……って、\\n あれ? なにか見覚えが……」",
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"375000631_16": "「お、おいッ!\\n こいつって……」",
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"375000631_17": "「……ありえない。\\n どうしてこれがここにッ!?」",
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"375000631_18": "「おいッ! これってお前がオークションに出品した、\\n 100シブの棺桶じゃねぇのか?」",
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"375000631_19": "「その、そこはかとなく屈辱的な呼び方はやめて。",
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"375000631_20": " でも、確かにわたしの作った超重装甲の防具」",
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"375000631_21": "(……か?)",
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"375000631_22": "「何か聞こえたデスッ!\\n 誰か入ってるデスかッ!?」",
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"375000631_23": "「切ちゃんまで……そこは入っているじゃなくて、\\n 誰かが装備してるのかと言って……」",
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"375000631_24": "「随分前に、人間の身体に鉄を同化させるホラー映画を――」",
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"375000631_25": "「ゲフンッ!」",
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"375000631_26": "「うるさいッ! 脇の下にバイザーを上げるスイッチがある。\\n 誰か押してッ!」",
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"375000631_27": "「……君たちは、プレイヤーかい?」",
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"375000631_28": "「そうだ。あんたがペンタスか?\\n この世界から脱出するために、話を聞きに来たんだ」",
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"375000631_29": "「まさしく、私がペンタス――」",
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"375000631_30": "「中の人は、天才プログラマの赤根社長。\\n 間違いない?」",
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"375000631_31": "「もう、そこまでの情報が出回ってしまってるんだね。\\n 天才と自称したことは無いが、私が赤根で間違いないよ」",
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"375000631_32": "「聞きたいことは山ほどあるデスが、\\n 今の状態は、誰かに捕まっているんデスか?」",
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"375000631_33": "「いや、私が自分の意志でここに隠れていたんだ。\\n オークションで手に入れた、このシェルターを利用してね」",
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"375000631_34": "「…………」",
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"375000631_35": "「……い、いったい誰から隠れてんだよ?\\n プレイヤーの誰かに狙われてるのか?」",
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"375000631_36": "「いや、信じてもらえないかもしれないが……、\\n カロン。モーフワールドの現ラスボスから隠れているんだよ」",
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"375000631_37": "「はあッ!?」",
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"375000631_38": "「ゲームの……ラスボス?」",
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"375000631_39": "「それって、自分で作ったんデスよね……?」",
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"375000631_40": "「詳しく聞かせてもらえるか?」",
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"375000631_41": "「どこから話せばいいやら……そうだね。\\n 本来、モーフワールドは完成の目処が立っていなかったんだ」",
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"375000631_42": "「製作秘話を1から語るつもり……?」",
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"375000631_43": "「そうじゃないんだ。現代の科学技術、私の実力、予算、\\n 人員、期間……要素の全てから考えて、完成は不可能だった」",
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"375000631_44": "「ちょっとどういうことか分からなくなってきたデス」",
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"375000631_45": "「無理をして頑張ったとか、\\n 悪いことをしたって話じゃないんだろ?」",
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"375000631_46": "「ある意味では悪いこと……ズルになるのだと思う。\\n まぁ、順を追って話そうか……」",
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"375000631_47": "「私の物心が付くか、付かないかという幼少の頃、\\n 祖父から、願いが叶うという『お守り』を譲り受けたんだ」",
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"375000631_48": "「小遣いの増額や、速く走りたいといった幼稚な願いは\\n 何1つ叶わず、存在すら忘れていた、そんなお守りだよ」",
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"375000631_49": "「それから月日は流れ、今から1年前。\\n 私は会社を立ち上げ、モーフワールドの開発をしていた」",
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"375000631_50": "「しかし、開発は遅れに遅れ、\\n もはや、我が社の倒産は目前に迫っていた」",
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"375000631_51": "「そんな時、<ruby=ワラ>藁</ruby>にも<ruby=すが>縋</ruby>る想いで、そのお守りに願ったんだよ。\\n 『モーフワールドを完成させてほしい』とね」",
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"375000631_52": "「お守りを身につけるようになってから、それまでの行き詰まりが\\n 嘘のように、順調に……それどころか劇的に開発が進んだ」",
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"375000631_53": "「お守りが願いを叶えてくれたってのか?」",
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"375000631_54": "「そうとしか思えないね。なにせ現代コンピュータのスペックでは\\n 不可能な程の演算能力、転送速度、描画能力……」",
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"375000631_55": "「思い描いていることが、全て自分の書くプログラムで\\n 実現するんだ……何が書いてあるのか理解もできないままね」",
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"375000631_56": "「まるで靴職人と小人さんの童話みたいデ――ッ!\\n まさか、そのお守りは聖遺物なんじゃないデスか?」",
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"375000631_57": "「うん。開発中、そして今起こっていることを考えると、\\n その可能性が高い」",
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"375000631_58": "「聖遺物?」",
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"375000631_59": "「先史文明期からもたらされた、異端技術の結晶だ」",
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"375000631_60": "「なるほど、それなら納得が行く。\\n 開発途中、私がこの世界に初めてログインした時……」",
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"375000631_61": "「データ化もしていないはずのお守りが、インベントリに\\n あったんだ。『モルペウスの花』というアイテムになってね」",
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"375000631_62": "「モルペウスの花……?」",
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"375000631_63": "「ああ。その能力は、モーフワールドでの願いを叶えること。\\n 地形や街も、ヴァイラやNPCも、この能力が産み出したんだ」",
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"375000631_64": "「確かにかなりのズルだな。で、それからどうなったんだよ?\\n ゲームが完成して、めでたしめでたしって訳じゃないんだろ?」",
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"375000631_65": "「ああ。丁度、ラスボス『カロン』を作ろうとしていた時、\\n 会社の近くに黒いノイズが出現し、避難を余儀なくされた」",
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"375000631_66": "「ペンタスの聖遺物に惹かれて、カルマノイズが出現した?」",
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"375000631_67": "「……分からない」",
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"375000631_68": "「ただ私は、『超常災害が身近に迫った恐怖心』の覚めない状態で、\\n 『カロン』の制作に取り掛かってしまった」",
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"375000631_69": "「まさかモルペウスの花が、その恐怖心を\\n ペンタスさんの願望だと勘違いしたデスか……?」",
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"375000631_70": "「ああ。私の感じた超常災害への\\n 理不尽さが、ラスボスの形質へと影響してしまったのだろう」",
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"375000631_71": "「想定を遥かに超えた、理不尽な程の力を持つ上、\\n 狡賢さも持つヴァイラの王が誕生してしまった」",
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"375000631_72": "「奴は、モーフワールドが発売されるまでは、自我を持つ素振りも\\n 見せず、ただプレイヤーという生贄が集まるのを待っていたんだ」",
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"375000631_73": "「そしてプレイヤーが10万人に達した時、突如牙を剥いて、\\n 開発スタッフを襲い奪った管理者権限で脱出の道を閉ざした」",
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"375000631_74": "「カロンの目的はなんだ? この世界を牛耳りたいなら、\\n それこそ全員追い出して、勝手にやればいいじゃねぇか」",
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"375000631_75": "「いや、カロンの要求は……10万のプレイヤーの命と引き換えに\\n モルペウスの花を得ることだ」",
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"375000631_76": "「渡せばいい。\\n 10万の命より惜しいの?」",
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"375000631_77": "「……信じられないからだよ。\\n ヤツは花を入手した途端に、全プレイヤーを殺すだろう」",
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"375000631_78": "「だから私は、モルペウスの花を隠し、逃げて……、\\n ここに潜んでいたんだ」",
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"375000631_79": "「でも、そこまで力を持ってんなら、カロンもモルペウスの花なんて\\n 必要としなさそうだけどな……」",
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"375000631_80": "「どうでしょう? モルペウスの花を持った者が、\\n カロンを倒す力を願えば、叶ってしまうからでは?」",
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"375000631_81": "「カロン自身、この世界をもっと使いやすくしたいんデスかね?\\n ヴァイラにとっての楽園を作りたいとか……?」",
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"375000631_82": "「外の世界のコンピュータやサーバーに依存しない、\\n 独立した世界にしたい……とかね」",
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"375000631_83": "「その上で、現実世界の人々を、この世界に引き込むことも\\n 可能かもしれませんね」",
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"375000631_84": "「――ッ!」",
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"375000631_85": "「やはりモルペウスの花を隠したのは正解でしたね。\\n カロンにあれを渡す訳にはいきません」",
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"375000631_86": "「でも、それならモルペウスの花を持った者が、\\n カロンを倒してしまう方がいいのでは?」",
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"375000631_87": "「もし負けて、花を奪われたらどうするのですか?\\n 私は……地獄の産みの親になってしまうのですよ……」",
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"375000631_88": "「だが、いつまでも引きこもってたって仕方ねぇだろ。\\n 今なら賛同してくれる大勢のプレイヤーがいる」",
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"375000631_89": "「確かにみんなが疲れ切って、\\n 抵抗もできなくなってからじゃ遅いデス」",
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"375000631_90": "「面倒だけど……それはその通り」",
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"375000631_91": "「しかし、私がこのエリアから出ると、\\n カロンに即座に追跡されてしまいます」",
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"375000631_92": "「あたしたちも、一緒に行って護――ッ!」",
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"375000631_93": "「――なんだよッ!?」",
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"375000631_94": "「うひゃーッ!\\n ヴァイラの群れがッ!」",
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"375000631_95": "「何故、この中にッ!?」",
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"375000631_96": "「グオォォォォッ!」",
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"375000631_97": "「みんな、一旦はペンタスを護れッ!」",
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"375000631_98": "「ペンタスさんは、ちょっと冷静に考えてみてほしいデスッ!\\n みんな、外の世界に帰りたがってるデスよ」",
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"375000631_99": "「切ちゃん、よそ見してちゃダメッ!\\n ヴァイラが来るッ!」"
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