95 lines
9.0 KiB
JSON
95 lines
9.0 KiB
JSON
{
|
||
"372000511_0": "届かぬ想い",
|
||
"372000511_1": "「――未来さん、頼まれた食材の買い出し\\n 一通り済ませました」",
|
||
"372000511_2": "「ありがとう。こっちもちょうど\\n 買い終わったところだよ」",
|
||
"372000511_3": "「どれどれ……昆布にお豆腐に……うん、完璧。\\n さすが調ちゃん、響なら絶対買い忘れがあったと思う」",
|
||
"372000511_4": "「切ちゃんもそういうとこあるから、\\n わたしがしっかりしないといけないので」",
|
||
"372000511_5": "「フフ……わたしたち、\\n 結構似た者同士なのかもね」",
|
||
"372000511_6": "「はい、それに今は秘密の共有もしています」",
|
||
"372000511_7": "「うん、そうだね。\\n ……翼さん、大丈夫かな」",
|
||
"372000511_8": "「誰にも相談できないことを抱え込むのは、\\n 辛いことです」",
|
||
"372000511_9": "「無理に聞き出す訳にもいかないし……、\\n 美味しいものを振舞って、元気になってもらおう」",
|
||
"372000511_10": "「想いをこめた料理は、心をほぐしてくれるはず……\\n 温かいものなら、なおさらです」",
|
||
"372000511_11": "「そうだね。この間のお疲れ様会は\\n 大所帯になったから、デリバリーで済ませちゃったし――」",
|
||
"372000511_12": "「今度こそ、和食で翼さんをもてなそうッ!」",
|
||
"372000511_13": "「おーッ!」",
|
||
"372000511_14": "「何々、これから料理作るの?\\n オレたちにもご馳走してよ」",
|
||
"372000511_15": "「てか清楚で大人しい系2人組とか激アツじゃん。\\n 学生? 何年生? 結構モテるでしょ?」",
|
||
"372000511_16": "「え……あ……あの……」",
|
||
"372000511_17": "「……わたしたち、用事があるので」",
|
||
"372000511_18": "「うわ、つめたッ!\\n もしかしてオレ、ウザがられてる?」",
|
||
"372000511_19": "「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ。\\n オレの部屋、すっげーキッチン豪華だからさ」",
|
||
"372000511_20": "「ほら、荷物持ってあげるし」",
|
||
"372000511_21": "「や、やめて……",
|
||
"372000511_22": " ――やめて、くださいッ!」",
|
||
"372000511_23": "「未来さんから離れてくださいッ!」",
|
||
"372000511_24": "「痛……ッ! テメー、\\n 人が親切にしてやったのによ……」",
|
||
"372000511_25": "「あーあ、オレの手を払うから\\n 買い物カゴがひっくり返っちまったなぁ」",
|
||
"372000511_26": "「……」",
|
||
"372000511_27": "「翼さんの……和食……」",
|
||
"372000511_28": "「あーウザ、靴が醬油まみれなんだけど。\\n これキブツソンカイでしょ。弁償してくんない?」",
|
||
"372000511_29": "「……ッ!」",
|
||
"372000511_30": "「ま、支払う方法は色々教えてあげるからさ。\\n 頑張って返済してこうよッ! ねッ!」",
|
||
"372000511_31": "「――へぇ、随分楽しそうな話してるね。\\n アタシも混ぜておくれよ」",
|
||
"372000511_32": "「え、誰おばさん――」",
|
||
"372000511_33": "「あ゛?」",
|
||
"372000511_34": "「ひ……ッ!!」",
|
||
"372000511_35": "「今すぐ失せな。\\n もし、また同じことをしてみろ」",
|
||
"372000511_36": "「二度と軽口が叩けないように、全部の歯を折ってやるよ。\\n もちろん弁償はしないよッ!」",
|
||
"372000511_37": "「こっわ……別に、ただの冗談だし……」",
|
||
"372000511_38": "「ナエるわぁ……行こうぜ……」",
|
||
"372000511_39": "「フンッ! どうせなら玄関出る前にナエて\\n 一生出てくんなッ!」",
|
||
"372000511_40": "「豪快……」",
|
||
"372000511_41": "「あの、助けていただいて\\n ありがとうございます」",
|
||
"372000511_42": "「気にしなくていいよ。\\n あいつらが気に食わなかったから脅しただけさ」",
|
||
"372000511_43": "「それより、駄目になっちまった食材、\\n 買い直さないとだろ?」",
|
||
"372000511_44": "「ついておいで、安くて質のいい店教えてやるから」",
|
||
"372000511_45": "「え……でも、そこまでは……」",
|
||
"372000511_46": "「道端でガキを助けた大人には、最後まで世話を焼く\\n 責任ってもんが付いて回るのさ」",
|
||
"372000511_47": "「アタシゃ落とし前付けなきゃなんねぇんだよ。\\n 黙ってついておいでッ!」",
|
||
"372000511_48": "「は、はい……」",
|
||
"372000511_49": "「――どうだ、良い買い物できただろ」",
|
||
"372000511_50": "「はい……その上、お茶まで\\n ご馳走になって……」",
|
||
"372000511_51": "「ただの気まぐれだ。ケチが付いた分、\\n 良いことで帳尻あわせたいだろ?」",
|
||
"372000511_52": "「とっても美味しいです。この店、また来たい」",
|
||
"372000511_53": "「そりゃ、アタシのお気に入りの店だからな」",
|
||
"372000511_54": "「あの……どうしてここまで、\\n 良くしていただけるのでしょうか?」",
|
||
"372000511_55": "「あの時、見て見ぬふりだってできたはずなのに……」",
|
||
"372000511_56": "「うーん……ウチの亭主が昔から子供好きでね。\\n 長年連れ添って、魂が伝染したのかもしれないね」",
|
||
"372000511_57": "「フフ、とっても素敵な旦那さんですね」",
|
||
"372000511_58": "「あぁ、アタシみたいなもんに惚れちまった\\n 趣味の悪さはさておき、世界一良い男だよ。あれは」",
|
||
"372000511_59": "「先立たれちまったのが、本当に悔やまれる」",
|
||
"372000511_60": "「……ッ!\\n ご、ごめんなさい、わたし……」",
|
||
"372000511_61": "「……おっと。悪い悪い。\\n ガキに気を遣わせちまった」",
|
||
"372000511_62": "「そういうことが言いたいんじゃなくてな。\\n まぁなんだ、その……亭主の遺志というか……」",
|
||
"372000511_63": "「亭主はいつも口にしてたんだ。\\n 大人は子供を護る責任があるって」",
|
||
"372000511_64": "「だから他人のガキだろうが関係ない。\\n その笑顔を奪うやつをアタシは許さない」",
|
||
"372000511_65": "「――それが、亭主の遺志なんだ」",
|
||
"372000511_66": "「……」",
|
||
"372000511_67": "「亡くなった旦那さんの遺志を継ぐって、素敵ですね。\\n ……わたしも、その強さを見習いたいです」",
|
||
"372000511_68": "「悩み事でもあんのかい?」",
|
||
"372000511_69": "「実は……笑顔になってほしい人がいるんです」",
|
||
"372000511_70": "「普段は頼もしくて、凛々しくて、\\n すごくかっこいい先輩なんですけど……」",
|
||
"372000511_71": "「今、誰にも言えない秘密を抱えて\\n とっても悩んでます」",
|
||
"372000511_72": "「実はこの買い物も、その人を励ましたくて、\\n 料理を作ってあげようとしてたんです」",
|
||
"372000511_73": "「なるほどな……後輩の手料理ってのは\\n また泣けてくるね」",
|
||
"372000511_74": "「いつも助けてもらってるから、\\n その恩返し……」",
|
||
"372000511_75": "「喜んでもらえるかは、分からないですが……」",
|
||
"372000511_76": "「――アタシが保証する。その気持ちを向けられて\\n 嬉しくないやつなんかいないよ」",
|
||
"372000511_77": "「もし不満を垂れようもんなら連れておいで。\\n 一晩中説教かましてやるからさ」",
|
||
"372000511_78": "「……ありがとうございます。\\n おかげで少し、自信がつきました」",
|
||
"372000511_79": "「はい、頑張ります」",
|
||
"372000511_80": "「うんッ! 目一杯、頑張んなッ!\\n ――ッ!」",
|
||
"372000511_81": "「……呼び出しかいッ! まったく、間が悪いね。\\n ちょっと失礼するよ」",
|
||
"372000511_82": "「アタシだ……ん、分かった。\\n 戻りゃいいんだろ……あぁ、後でな」",
|
||
"372000511_83": "「野暮用ができちまった。\\n 誘っておいて悪いが、先に出るよ」",
|
||
"372000511_84": "「いえいえ、お忙しいのに\\n 付き合っていただいてありがとうございました」",
|
||
"372000511_85": "「ああ、その先輩が早く元気になることを祈ってるよ」",
|
||
"372000511_86": "「……なんだかすごい人、でしたね」",
|
||
"372000511_87": "「うん、かっこよかった。\\n わたしもあんな大人になれるかな……」",
|
||
"372000511_88": "「まずは翼さんを笑顔に」",
|
||
"372000511_89": "「うん、そうだね。\\n できることからコツコツと、だね」",
|
||
"372000511_90": "(……あぁ、そうだ。ガキってのは\\n 笑顔じゃなきゃいけない)",
|
||
"372000511_91": "(仁のためにも、早く\\n グラウスヴァインスーツを完成させ――)",
|
||
"372000511_92": "(シンフォギアを……)"
|
||
} |