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"320000732_0": "「さあ、みなさんどうぞ。\\n たくさん焼きましたので」",
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"320000732_1": "「いただきまーすッ! はぐッ! はぐッ!\\n ん―――ッ! おいしいーッ!」",
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"320000732_2": "「本当……こんなにおいしいの初めて食べた……」",
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"320000732_3": "「相変わらずおいしい……。\\n 自分でも不思議だけど、全く飽きないわ」",
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"320000732_4": "「うん。\\n なんだか逆に、食べないと調子崩しそう」",
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"320000732_5": "「ふぉんなもんか? んぐッ……はあ。\\n 確かにうまいけどよ」",
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"320000732_6": "「わたしたちは2回目だな。あの時はあまり味わう余裕も\\n なかったが……。ん、おいしいな」",
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"320000732_7": "「それが実はですな……。\\n 今日のキッシュの半分は私が作ったものではないのです」",
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"320000732_8": "「半分は月読さんが手伝ってくれましてな。\\n どうですか?」",
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"320000732_9": "「どれがどっちかわからないけど、とにかくおいしいですッ!」",
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"320000732_10": "「そうなの? それなら今度からは調に頼めば、このキッシュを\\n いつでも食べられるのね」",
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"320000732_11": "「よかったね、マリア姉さん」",
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"320000732_12": "「流石は月読だな。\\n ここまで完璧に同じ味に仕上げられるとは……」",
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"320000732_13": "「宮司さんが教えてくれたから……」",
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"320000732_14": "「何を言いますか。\\n それでも1日でここまで完成するとは脱帽ですぞ」",
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"320000732_15": "「はあ……おいしいーッ!\\n おかわりありますかッ!?」",
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"320000732_16": "「……あの、今度わたしも教えてもらえませんか?\\n 焼けるようになりたいなって……」",
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"320000732_17": "「もちろん構いませんよ。ただキッシュに関してはもう月読さんも\\n 完璧ですからな。そちらに教わるのもいいかもしれません」",
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"320000732_18": "「そ、そんなことないです」",
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"320000732_19": "「……なあ、ところでさっきから気になってるんだけどよ」",
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"320000732_20": "「……なんデスか?」",
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"320000732_21": "「どうしてお前だけそんな離れたところで、\\n 違うもん食べてるんだよ? ついでに、えらく質素だな」",
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"320000732_22": "「これは調が用意してくれた和食御膳デス。\\n ……あげないデスよ?」",
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"320000732_23": "「いや、欲しいとかそういうことじゃなくてな……。\\n お前、キッシュ嫌いなのか?」",
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"320000732_24": "「大好きデスッ!\\n 調の作ったものは最高のごちそうデスッ!」",
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"320000732_25": "「いや、それならなんで……」",
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"320000732_26": "「それでも限度ってものがあるデスよ……。\\n 今日1日は、アタシの体がもう受け付けないのデス……」",
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"320000732_27": "「切ちゃん……ごめんね?」",
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"320000732_28": "「調は悪くないデスッ! でも……でも、今日だけは\\n 違うものを食べさせてほしいデス……」",
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"320000732_29": "「みなさんが1部屋では狭いですからな。\\n こちらの部屋も使ってください」",
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"320000732_30": "「ありがとうデースッ!」",
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"320000732_31": "「あれ? この着物って……、巫女服?」",
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"320000732_32": "「あ、これは失礼、片付けの途中でしたな。\\n 今すぐどかすので、しばしお待ちを」",
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"320000732_33": "「あ、待ってくださいッ!」",
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"320000732_34": "「ん? どうかしましたかな」",
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"320000732_35": "「どうしたデスか、調?」",
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"320000732_36": "「あ、いえ、この巫女服……、\\n なんだかとても懐かしくて、安心する気が……」",
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"320000732_37": "「…………」",
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"320000732_38": "「確かに綺麗な巫女服デスけど、\\n 特に変わった感じはしないデスよ」",
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"320000732_39": "「この巫女服は、昔、娘が着ていた物です。\\n 今はもう、着る者はいなくなってしまいましたが……」",
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"320000732_40": "「そうなんだ……、\\n あ、すみません、引き留めてしまって」",
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"320000732_41": "「…………」",
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"320000732_42": "「宮司さん? どうしました?」",
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"320000732_43": "「いやいや。少し考え事をしておりました」",
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"320000732_44": "「ではみなさん、ごゆっくり。お休みなさい」",
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"320000732_45": "「……調、そんなにあの巫女服が気にいったの?」",
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"320000732_46": "「そう、なのかな……?」",
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"320000732_47": "「それなら、お願いして着させてもらったらどうデス?」",
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"320000732_48": "「ううん、大事な物みたいだから、やめとく」",
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"320000732_49": "「娘さんが着ていたとか言ってましたね」",
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"320000732_50": "「ええ、本人は、神社ジョークとか言ってたけど、\\n 昔、娘夫婦と孫がいたのは本当なんじゃないかしら」",
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"320000732_51": "「何かあったんデスかね……」",
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"320000732_52": "「あったのかもね。\\n でも、わたしたちが聞くことじゃないわ」",
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"320000732_53": "「うん、そうだね……。\\n でも、どんな人たちだったのかな?」",
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"320000732_54": "「……きっといい人たちだったんじゃないでしょうか」",
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"320000732_55": "「ええ、そうね」",
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"320000732_56": "「うん」"
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