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"345000711_0": "包囲された研究島",
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"345000711_1": "「あいつら、わたしの島を好き勝手にッ!」",
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"345000711_2": "「南西のアンドロイド兵は、砲撃で壊滅状態ですッ!」",
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"345000711_3": "「島の西側にはアンドロイド兵の反応が……、\\n 残りのアンドロイド兵では対処しきれませんよッ!」",
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"345000711_4": "「そんなことわかってる。\\n 泣き言を言う前に、頭を働かせてッ!」",
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"345000711_5": "「砲撃は、島の周囲のみ……。\\n ということは、奴らの狙いは、この研究所と装者か?」",
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"345000711_6": "「間違いないでしょうね」",
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"345000711_7": "「……お前、何か知っているんじゃないのか?」",
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"345000711_8": "「なんのことです?\\n 変な勘繰りはやめていただきたいですね」",
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"345000711_9": "「…………」",
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"345000711_10": "「とにかく、F.I.S.組が戻るまでなんとか耐えきるぞッ!」",
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"345000711_11": "「これは、完全に囲まれている……」",
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"345000711_12": "(早く、戻ってこい……。\\n でなければ、眠る暁を目覚めさせる前に――)",
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"345000711_13": "(この島が、F.I.S.の手に堕ちてしまうぞ……)",
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"345000711_14": "F.I.S.の襲撃を受ける数時間前――",
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"345000711_15": "「長期滞在は無いでしょうが、\\n 一応、迷子にならないよう、案内をしておきましょう」",
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"345000711_16": "「とは言え、あまり広くない研究所なので\\n すぐに覚えられますよ」",
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"345000711_17": "「ここはお前……。\\n いえ、あなたたちが……、造ったのですか?」",
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"345000711_18": "「まさか。僕らに建築の心得はありませんよ。\\n 大昔に棄てられていた施設を再利用させてもらっているんです」",
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"345000711_19": "「なるほど。壁面の劣化に比べて機材が新しいのは\\n それが理由ですか」",
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"345000711_20": "「おっと、機材には触れないでくださいね。\\n それを壊すと僕が調さんに怒られてしまいますから」",
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"345000711_21": "「了解しました」",
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"345000711_22": "「……しかし、彼は遅いですね。\\n お手洗いに行くと言っていましたが道に迷ったんでしょうか」",
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"345000711_23": "「…………」",
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"345000711_24": "「時間稼ぎ……ですか?」",
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"345000711_25": "「そうだ、この研究所にやつの言っていた\\n 技術提供者に繋がる何かがあるかもしれない」",
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"345000711_26": "「俺も知らない並行世界を渡る技術。\\n 放ってはおけない」",
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"345000711_27": "「できる限りでいい。頼めるか?」",
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"345000711_28": "「以前話していた件ですね。\\n わかりました。やってみます」",
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"345000711_29": "「すまない。頼んだぞ」",
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"345000711_30": "(できる限り自然に、時間を稼がないとな)",
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"345000711_31": "「それほど広くない研究所なのですよね?\\n であれば、心配することは無いと思います」",
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"345000711_32": "「だといいんですが……」",
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"345000711_33": "「こ、これはアンドロイド兵?」",
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"345000711_34": "「ああ、メンテナンス中のものですよ。\\n そんなに警戒しなくとも大丈夫です」",
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"345000711_35": "「あなたたちは、正式に客人として登録しましたから、\\n 襲われることはありません」",
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"345000711_36": "「そうですか……」",
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"345000711_37": "「あのー……」",
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"345000711_38": "「何か?」",
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"345000711_39": "「月読は、どこに?」",
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"345000711_40": "「あー……、彼女は、いつも通り、部屋に引きこもって、\\n 研究に没頭していますよ」",
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"345000711_41": "「それは、暁を目覚めさせるための?」",
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"345000711_42": "「彼女には、それが全てですからね……」",
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"345000711_43": "「…………」",
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"345000711_44": "「さて、では、あなたはここで待っていてください。\\n 僕は、彼を迎えに行ってきます」",
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"345000711_45": "「わかりました……あ、いや、ちょっと――」",
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"345000711_46": "「あまり勝手に調べものをされると、\\n 彼女の機嫌を損ねてしまいますからね」",
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"345000711_47": "(……バレていたのか)",
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"345000711_48": "「多くの並行世界を見てきたが、この技術は見たことがない。\\n 聖遺物などの異端技術を使用せずにこんなことが……」",
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"345000711_49": "「やつはロボット工学の研究者と言っていたが、\\n そんな次元のものじゃない……」",
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"345000711_50": "「あまりイジらないでくださいね。\\n 壊れてしまうと直すのも一苦労なので」",
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"345000711_51": "「……よくここがわかったな」",
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"345000711_52": "「監視システムは僕が管理しているんですよ?」",
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"345000711_53": "「あえて泳がせていたということか」",
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"345000711_54": "「無茶なお願いをしたのは僕の方ですからね、\\n 多少、自由にしていただいて構わないと思ったんですよ」",
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"345000711_55": "「それで、お目当てのものは見つかりましたか?」",
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"345000711_56": "「……いや、だが、教えてくれ、\\n これだけの技術、どこで手に入れた?」",
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"345000711_57": "「すみませんが、お教えすることはできません」",
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"345000711_58": "「お前たちに協力したら、教えると言わなかったか?」",
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"345000711_59": "「考える、と言ったんですよ」",
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"345000711_60": "「俺たちを都合よく利用したということか……」",
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"345000711_61": "「……僕の口からは、教えることはできません。\\n ですから、あなたに自由な時間を与えたんです」",
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"345000711_62": "「あなたが欲する有益な情報が得られるかはわかりませんがね」",
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"345000711_63": "「とはいえ、それだけでは、割に合わないでしょうから――」",
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"345000711_64": "「あのデュプリケイタ―という、\\n 並行世界の移動装置の修理もお手伝いしますよ」",
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"345000711_65": "「……知っていたのか?」",
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"345000711_66": "「森での戦いはモニタリングさせていただいていましたからね」",
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"345000711_67": "「おい、この音はなんだ?」",
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"345000711_68": "「どうやら、外から招かれざる客が来てしまったようですね」",
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"345000711_69": "「あいつら、なんでここがッ!」",
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"345000711_70": "「防衛システムはどうなっていますか?」",
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"345000711_71": "「勝手に入ってくるな、蹴り出されたいの。\\n もうとっくにアンドロイド兵を向かわせてる」",
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"345000711_72": "「さすがですね、ところで相手は?」",
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"345000711_73": "「F.I.S.よ。わかっているんでしょ」",
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"345000711_74": "「というか、お前には聞きたいことがあったんだ。\\n わたしに内緒で、何かしてる――」",
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"345000711_75": "「これは……」",
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"345000711_76": "「なんだ、この部屋の散らかりようはッ!\\n こんなところで生活しているのか?」",
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"345000711_77": "「ま、まあ……、\\n ち、散らかるのはしょうがないことです」",
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"345000711_78": "「?」",
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"345000711_79": "「なッ!? ちょっと、なんでまだいるの?」",
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"345000711_80": "「こちらはこちらの事情があって残らせてもらった。\\n 困っているのだろう? わたしも手を貸す」",
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"345000711_81": "「必要ない、あいつで十分――ん?",
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"345000711_82": " あいつはどこ行った?」",
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"345000711_83": "「すみません、\\n アンドロイドの切歌さんにはちょっとお使いを頼んでいまして」",
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"345000711_84": "「はあッ!?\\n 何勝手なことしてるの、このダメ助手ッ!」",
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"345000711_85": "「揃いも揃って役立たずなんだからッ!」",
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"345000711_86": "「……仕方ない、状況が変わった。\\n 今は猫の手も借りたいの、あなたの手を使わせてもらうよ」",
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"345000711_87": "「ああ」",
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"345000711_88": "「ダメ助手、お前にはあとでいろいろ聞きたいことがあるからッ!」",
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"345000711_89": "「この窮地を無事に脱したら、なんでもお答えしますよ」",
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"345000711_90": "「では、南東方向は僕が見ましょう。\\n アンドロイド兵で防衛ラインを敷きます」",
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"345000711_91": "「反対側はお任せします」",
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"345000711_92": "「助手の分際で、わたしに命令するなッ!」",
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"345000711_93": "「すみません、ですが……」",
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"345000711_94": "「わかってるッ! 早く手を動かしてッ!」",
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"345000711_95": "「はい。とりあえず、おふたりはこちらへ」",
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"345000711_96": "「…………」",
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"345000711_97": "「おい、これでアンドロイド兵を管理しているのか?\\n 簡単でいい、操作方法を教えてくれ」",
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"345000711_98": "「わかりました」",
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"345000711_99": "「……やはり疑問が残る。\\n お前は、どうして、あの少女に従う?」",
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"345000711_100": "「科学者としての地位を捨て、\\n この島で彼女たちに付き合う理由がわからない」",
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"345000711_101": "「それは……F.I.S.での地位を捨ててでも必要なものが\\n ここにはあるからですよ」",
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"345000711_102": "「必要なもの?\\n それはなんだ?」",
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"345000711_103": "「…………」",
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"345000711_104": "「……今は、目の前の敵に集中しましょう」",
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"345000711_105": "(……やはり、この男、まだ信用はできないな)",
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"345000711_106": "「あなたは行って、でも、数が多いから一応気をつけて」",
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"345000711_107": "「多勢の相手は慣れている。任せてもらおう」",
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"345000711_108": "「そこから島の西側に抜けて。\\n アンドロイド兵の足だと上陸前に潰せない」",
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"345000711_109": "「ああッ! すぐに向かおうッ!」",
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"345000711_110": "「ねえ、聞きそびれたんだけど。\\n なんで手を貸してくれるの?」",
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"345000711_111": "「培養槽の中で眠る暁を救うために、\\n 君が頑張っていると聞いたから、かな」",
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"345000711_112": "「……ッ!」",
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"345000711_113": "「あいたーッ!?」",
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"345000711_114": "「こいつからどこまで聞いたのか知らないけど、\\n それだけの理由で力を貸すなんて、バカじゃないの?」",
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"345000711_115": "「それだけじゃない、わたしにとって月読は\\n かけがえのない友の1人だからだ」",
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"345000711_116": "「……それはそちらの世界の月読調でしょ。\\n わたしとは関係無い」",
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"345000711_117": "「確かにそうかもしれないが、\\n わたしは無関係とは思わない」",
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"345000711_118": "「わたしは以前、失った友と別の世界で再び会うことができた」",
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"345000711_119": "「共に過ごし、共に戦ったことでわかった。\\n 別の世界であっても彼女の根底は変わらない、同じものだと」",
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"345000711_120": "「同じ……」",
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"345000711_121": "「それは、あなたがそう思いたいからじゃないの?」",
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"345000711_122": "「…………ッ!?」",
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"345000711_123": "「大切な人を失った者は、当然また会いたいと思う。\\n それは時に、人を盲目的にしてしまう」",
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"345000711_124": "「並行世界は確実に別の世界で、そこに住む人も別人。\\n だから、わたしはそちらの暁切歌を切ちゃんだとは思わない」",
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"345000711_125": "「それは……」",
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"345000711_126": "「あなたの知る月読調も、わたしとは確実に違う」",
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"345000711_127": "「だが、わたしのお前たちを護りたいという気持ちは変わらない。\\n そう考える自分が間違っているとも思わない」",
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"345000711_128": "「……そう、あなたがそう思うならそれでいいけど、\\n わたしにはそういう考え方は無理ってだけ」",
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"345000711_129": "「そうか……」",
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"345000711_130": "(そう思いたいだけ……)",
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"345000711_131": "「だから、そちらの世界の暁切歌は代わりにはならない。\\n わたしにとって、ここにいる切ちゃんが全てだから」",
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"345000711_132": "「切ちゃんを目覚めさせるためだったら、\\n わたしは、どんなことだってやってみせる……」",
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"345000711_133": "「……1つ、教えてくれ」",
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"345000711_134": "「何?」",
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"345000711_135": "「本物の暁が目覚めたあと、\\n アンドロイドの暁はどうするつもりだ?」",
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"345000711_136": "「……そうしたら、あれはもう必要ない。\\n 機能停止させて、破棄するだけよ」",
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"345000711_137": "「なッ!?」"
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