102 lines
8.5 KiB
JSON
102 lines
8.5 KiB
JSON
{
|
||
"321000711_0": "決戦に向けて",
|
||
"321000711_1": "(アタシ……は……?)",
|
||
"321000711_2": "「もう嫌デスッ!」",
|
||
"321000711_3": "「どうしてアタシだけが\\n こんな辛いことをしないといけないんデスかッ!?」",
|
||
"321000711_4": "(これは、小さい頃の、アタシ……?)",
|
||
"321000711_5": "「何をサボっている? 誰が休んでいいと言ったッ!」",
|
||
"321000711_6": "「あう――」",
|
||
"321000711_7": "「い、痛いデス……」",
|
||
"321000711_8": "「他の者から、お前が隠れて休んでいると報告が来ていたぞ」",
|
||
"321000711_9": "「だ、誰がそんなことを言ってるデスかッ!?」",
|
||
"321000711_10": "「黙れッ!」",
|
||
"321000711_11": "「があッ……」",
|
||
"321000711_12": "「ちょっとぐらい……、休んだっていいじゃないデスか……」",
|
||
"321000711_13": "「お前に休んでいる暇なんてないだろう。\\n 黙って我々の指示通りに訓練を続けろッ!」",
|
||
"321000711_14": "「ううう……」",
|
||
"321000711_15": "「もう……もう、嫌デスッ!」",
|
||
"321000711_16": "「あ、待てッ! どこへ行くッ!?」",
|
||
"321000711_17": "(そうだったデス。\\n こうして逃げだそうとしたこともあったデスね……)",
|
||
"321000711_18": "(でも、しょせんアタシたちは籠の中の鳥。\\n 逃げられるはずなんてなかったデス……)",
|
||
"321000711_19": "(空き部屋の片隅に逃げ込んで。\\n 顔を伏せて、耳を塞いで――)",
|
||
"321000711_20": "「う、うう……もう、嫌デス……」",
|
||
"321000711_21": "(辛い世界からひたすら顔を背けて、全部を拒絶して――)",
|
||
"321000711_22": "(そのまま、自分が消えてしまうことを、\\n この時のアタシは、たぶん望んでいたデス)",
|
||
"321000711_23": "(でも――)",
|
||
"321000711_24": "「……切ちゃん、見つけた」",
|
||
"321000711_25": "(そんなアタシを、調が見つけてくれたデスよ)",
|
||
"321000711_26": "「ああ、こんなところにいたのね」",
|
||
"321000711_27": "「大丈夫……?」",
|
||
"321000711_28": "(そう、あの日はマリアにセレナも一緒だったデスっけ)",
|
||
"321000711_29": "「なんデス?\\n 誰かみたいに、アタシを研究員に突き出すデスか」",
|
||
"321000711_30": "「そんなことしないよ」",
|
||
"321000711_31": "「調はそうでも、そっちの2人はどうかわからないデス」",
|
||
"321000711_32": "(この頃は、まだマリアとセレナとは、面識もほとんどなくて)",
|
||
"321000711_33": "(同じレセプターチルドレンだってことくらいしか、\\n お互いに知らなかったデス)",
|
||
"321000711_34": "「わたしたちもそんなことはしないわよ。\\n ね、セレナ?」",
|
||
"321000711_35": "「うん、あの、ここにいること、ナイショにしますから……」",
|
||
"321000711_36": "「……信じられないデス」",
|
||
"321000711_37": "(だからアタシは、\\n せっかく心配して来てくれた2人を、突き放したデス)",
|
||
"321000711_38": "「切ちゃん、訓練辛いの?」",
|
||
"321000711_39": "「そ、そんなことないデスッ!\\n あんなのへっちゃらデスよッ!」",
|
||
"321000711_40": "「ちょっとだけ疲れたから、\\n ここで休憩していただけデスッ!」",
|
||
"321000711_41": "(調たちが心配して見に来てくれたのに、\\n こんな見え見えの意地を張って……ホント、馬鹿デスよね)",
|
||
"321000711_42": "「ねえ」",
|
||
"321000711_43": "「……なんデスか?」",
|
||
"321000711_44": "「あなたの訓練だけど、わたしも一緒に受けてもいいかな?」",
|
||
"321000711_45": "(それでもマリアは見捨てずに、\\n 根気強くアタシにつきあってくれたデス)",
|
||
"321000711_46": "「姉さん? 急にどうしたの?」",
|
||
"321000711_47": "「あ……わ、わたしも切ちゃんと一緒がいい」",
|
||
"321000711_48": "「そ、それならわたしも……」",
|
||
"321000711_49": "「セレナはいいの、疲れてるでしょう」",
|
||
"321000711_50": "「な、何言ってるデスか?」",
|
||
"321000711_51": "(心の中にグイグイ踏み込んでこられるのが怖くて――)",
|
||
"321000711_52": "「アタシは1人で大丈夫デスッ!\\n 一体、なんのおせっかいデスかッ!」",
|
||
"321000711_53": "(こんな風に、またはね除けて――)",
|
||
"321000711_54": "「お互い様だよ」",
|
||
"321000711_55": "「お互い様……?」",
|
||
"321000711_56": "「だって、そうでしょ?\\n わたしにいつもおせっかいをくれるのは、切ちゃんだよ」",
|
||
"321000711_57": "「だから、わたしも、お返ししたいの」",
|
||
"321000711_58": "「う、うう……」",
|
||
"321000711_59": "(もう、いっぱいいっぱいになって)",
|
||
"321000711_60": "(喉の奥で、『もう放っておくデスよ』って言いかけて――)",
|
||
"321000711_61": "(でも、それを言ったら、本当になっちゃうのが怖くて――)",
|
||
"321000711_62": "(だからアタシは、ただ、みんなの言うことを\\n 震えながら、黙って聞いてるしかできなかったんデス)",
|
||
"321000711_63": "「訓練も実験も、みんなでやれば大したことなんてないわ」",
|
||
"321000711_64": "「終わってみればこんなもの? って拍子抜けするわよ」",
|
||
"321000711_65": "「それより、いつも騒がしいあなたが、\\n そんな風に静かにしてる方がよっぽど調子狂うわ」",
|
||
"321000711_66": "「わたしも……暁さんは、元気な方がいいです」",
|
||
"321000711_67": "(みんなが、どうして自分にこんな優しくしてくれるのかが、\\n ぜんぜんわからなくて――)",
|
||
"321000711_68": "「切ちゃん、ほら、行こう?」",
|
||
"321000711_69": "(調が手を延ばしてくれたのを見ても、\\n しばらく呆然としてたデス)",
|
||
"321000711_70": "「わたしたちが、いるよ」",
|
||
"321000711_71": "「もう、切ちゃんを1人になんてしないから」",
|
||
"321000711_72": "「だから……切ちゃんも。\\n そんな風に1人になろうとしないで。ね?」",
|
||
"321000711_73": "「な、なんておせっかいな連中デスか……」",
|
||
"321000711_74": "(最後にもう一度強がってみせたデスけど、\\n その声はこぼれかかった涙で、もうブレブレで――)",
|
||
"321000711_75": "「ほら、泣かないで、行きましょう」",
|
||
"321000711_76": "「な、泣いてなんかいないデスッ!」",
|
||
"321000711_77": "「目にゴミが入っただけデスッ!」",
|
||
"321000711_78": "「フフ……」",
|
||
"321000711_79": "(あの時アタシは、自分が1人じゃないんだって、\\n 初めて心の底からそう思えたんデス……)",
|
||
"321000711_80": "(でも……)",
|
||
"321000711_81": "(でも、今は……また、アタシ1人しかいないデス……)",
|
||
"321000711_82": "(マリア……セレナ……調……)",
|
||
"321000711_83": "(寂しい、デスよ……)",
|
||
"321000711_84": "(あれ……ここは……?)",
|
||
"321000711_85": "(焚き火……森の中……?)",
|
||
"321000711_86": "「はッ!」",
|
||
"321000711_87": "「お、起きたな」",
|
||
"321000711_88": "「クリス先輩……」",
|
||
"321000711_89": "「よかった~。目が覚めたんだねッ!」",
|
||
"321000711_90": "「響さんも……」",
|
||
"321000711_91": "(そうだったデス……。\\n 危ないところに2人が駆けつけてくれて)",
|
||
"321000711_92": "(アタシを助けてくれて……)",
|
||
"321000711_93": "「う……うううッ……」",
|
||
"321000711_94": "「わッ!? き、切歌ちゃんッ!?」",
|
||
"321000711_95": "(アタシ……1人なんかじゃ……なかったデスね……)",
|
||
"321000711_96": "「おわッ!? お、お前どうしたんだよッ!」",
|
||
"321000711_97": "「どこか痛いのッ!? あわわわッ! ど、どうしようッ!?」",
|
||
"321000711_98": "「だ、大丈夫デス。\\n なんでもないデスからッ!」",
|
||
"321000711_99": "「ただちょっと……目にゴミが入っただけデスッ!」"
|
||
} |