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"321000541_0": "「そうこうしてる内に、また夜になってしまったデスよ……」",
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"321000541_1": "「夜こそ奴らの本領だ。\\n くれぐれも油断するな」",
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"321000541_2": "「わかってるデス」",
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"321000541_3": "「あ。そういえば、紹介がまだだったデスね」",
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"321000541_4": "「アタシの名前は、暁切歌デス。改めてよろしくお願いするデス」",
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"321000541_5": "「暁か……。まさにヴァンパイアを滅ぼすのにはふさわしい名だな」",
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"321000541_6": "「そ、そうデスかね」",
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"321000541_7": "「ああ、実に良い名だ。\\n これも運命か……」",
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"321000541_8": "「……俺は、\\n ヴァンパイアハンターのクルースニクだ……」",
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"321000541_9": "「もっとも、俺のことは、既にある程度承知だろうがな」",
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"321000541_10": "「飛び飛びデスけど、記憶を見たデスからね」",
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"321000541_11": "「お前は、その年齢で化け物を相手に戦っているのか?\\n 確かに若い戦士はいないわけではないが――」",
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"321000541_12": "「まあ……昔からそうでしたからね。\\n 今ではこれが当たり前デス」",
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"321000541_13": "「そうか。ならば、俺と似たようなものなのだな」",
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"321000541_14": "「そうなんデスか?」",
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"321000541_15": "「ああ。我らヴァンパイアハンターは、\\n 生まれた時からヴァンパイアと戦う宿命を負わされた者たちだ」",
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"321000541_16": "「例の一族とかいう……」",
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"321000541_17": "「一族とは言っても、血縁とは限らない。ハンターとしての印を\\n 持って生まれた子供たちを引き取って、戦士として育てるのだ」",
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"321000541_18": "「それじゃ……ますますアタシと同じデスね」",
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"321000541_19": "(まるでフィーネの器として選ばれた、\\n アタシたちレセプターチルドレンみたいデス)",
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"321000541_20": "「そうか……だからこそ、お前の魂に共鳴したのかもしれないな」",
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"321000541_21": "「ところで……」",
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"321000541_22": "「どうした?」",
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"321000541_23": "「なんか、さっきとは随分印象が違うデスね。\\n 思ったより静かな感じデス」",
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"321000541_24": "「いや……ヴァンパイアとの戦いとなると、\\n どうにも激昂してしまってな……」",
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"321000541_25": "「なるほどデス。それだけ想いが強かったんデスね……」",
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"321000541_26": "「……かもしれん。\\n だからこそ、その銀の弾丸に俺の意識が宿ったのだろう」",
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"321000541_27": "「さっき、樹から回収した、この弾デスね……」",
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"321000541_28": "「こうして話しているのが、俺自身の魂なのか、\\n それともただの意識の残骸なのか、わからない」",
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"321000541_29": "「ともかく、こうして再び目覚めた以上は、\\n 今度こそ、どんな形ででも、奴を完全に滅ぼすつもりだ」",
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"321000541_30": "「もっとも、身体も無い今となっては、\\n お前にわずかな助力をするくらいしかできないがな」",
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"321000541_31": "「そんなことないデス。\\n おかげで、なんとかアイツと戦える自信がついたデスよ」",
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"321000541_32": "「でも……そもそも、あのヴァンパイアは何者なんデスか?」",
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"321000541_33": "「奴の名は、ヴラド3世だ」",
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"321000541_34": "「ああ、確かそんな名前を名乗ってたデスね」",
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"321000541_35": "「まさか、その名を知らぬのか?」",
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"321000541_36": "「……聞いたことないデス」",
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"321000541_37": "「この時代では忘れ去られた存在なのかもしれないな……。\\n 俺が倒したことで、後世にその名が伝わらなかったのだろうか」",
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"321000541_38": "「まあいい。\\n ともかく奴は、ある地方を治める貴族だった男だ」",
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"321000541_39": "「なぜ吸血鬼なんて怪物になったのか……。\\n いや、最初からそうだったのか、詳しいことはわからない」",
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"321000541_40": "「己の領土に攻めてくる敵をはじめ、その内に同じ貴族や\\n 領民たちを残忍な方法で殺し、その様を楽しむようになった」",
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"321000541_41": "「それが人々の間に噂として広がり、\\n 奴は怪物だと恐れられるようになったのだ」",
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"321000541_42": "「何年経っても変わらぬ外見、およそ人の心を持つと思えぬ所業、\\n いつの間にか領内に現れるようになった数多の化け物たち……」",
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"321000541_43": "「奴は生き血を啜るヴァンパイアの王……。\\n いつしか、そう呼ばれるようになっていた」",
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"321000541_44": "「そうして、ついに俺たちハンターに話が回ってきた。\\n 奴を滅ぼしてほしい、とな」",
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"321000541_45": "「だが、奴は俺たちの予想以上に強かった」",
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"321000541_46": "「長い年月で大量の血を吸って力をつけた奴は、\\n 多くの<ruby=けんぞく>眷属</ruby>と下僕を率いて、俺たちを迎え撃った」",
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"321000541_47": "「俺の仲間は1人、また1人と奴によって倒され、\\n 気づけば俺だけが残っていた……」",
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"321000541_48": "「俺は命を賭して最後の戦いを挑み、\\n 奴に銀の弾丸を撃ち込むことに成功した……」",
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"321000541_49": "「だが――」",
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"321000541_50": "「だが、なんデスか?」",
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"321000541_51": "「いや……なんでもない」",
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"321000541_52": "「それで俺は相打ちになり、\\n さっき目覚めて、今に至ると言ったところだ」",
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"321000541_53": "「そうだったんデスね……」",
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"321000541_54": "「他に、何か知りたいことはあるか?」",
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"321000541_55": "「さっきアイツを倒したとき、分身とか言ってたデスけど……。\\n 確かなんデスか?」",
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"321000541_56": "「その通りだ。\\n あれは奴の本体じゃなかった」",
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"321000541_57": "「でも、なんで分身なんデスか?」",
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"321000541_58": "「薄暗かったとはいえ、日中は、奴の力は半減するからな。\\n 警戒したのだろう」",
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"321000541_59": "「だから代わりに分身を……。\\n やっぱり、ヴァンパイアは日の光に弱いんデスね」",
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"321000541_60": "「あ、分身ってことは、アイツを倒しても鮮血の針の呪いは……」",
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"321000541_61": "「もちろん解けていないだろうな」",
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"321000541_62": "「どうした、あの針に刺された仲間でもいるのか?」",
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"321000541_63": "「そうなんデス……。\\n アタシの家族が……」",
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"321000541_64": "「って、研究所でのことは覚えてないデスか?」",
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"321000541_65": "「ああ。俺自身が目覚めたのは、本当にさっきのことだからな」",
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"321000541_66": "「銀の弾丸が起動した時じゃなかったんデスか……」",
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"321000541_67": "「恐らくは弾丸としてヴァンパイア相手に使われたことで、\\n 眠っていた俺の思念が目覚めることができたのだろうな」",
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"321000541_68": "「そうだったんデスか……。\\n やっぱり、あの針を持って行かれたのが悔やまれるデス……」",
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"321000541_69": "「あれがあれば、マリアたちの呪いの進行を\\n 食い止めることができるかもしれないのに……」",
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"321000541_70": "「針のことは諦めろ。\\n どのみち、奴を倒さねば呪いは完全には解けないのだからな」",
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"321000541_71": "「そうデスか……」",
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"321000541_72": "「もう質問がないなら、少しだけでも寝ておくがいい。\\n その間は俺が見張っていよう」",
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"321000541_73": "「それじゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうデス……」"
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