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"328000111_0": "闇に忍ぶ者たち",
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"328000111_1": "「はぁ、はぁ、はぁ……」",
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"328000111_2": "(急いでこの事態を伝えないと――)",
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"328000111_3": "(くッ!?)",
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"328000111_4": "(ここも先回りされていたッ!?)",
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"328000111_5": "(……こっちの裏路地はまだ包囲が薄いか?)",
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"328000111_6": "「はぁ……はぁ……ふぅ……」",
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"328000111_7": "(周囲に敵の気配は感じない。ここなら――)",
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"328000111_8": "(頼むから出てくれ……)",
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"328000111_9": "(…………)",
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"328000111_10": "「こんな時分にどうしたんですか?」",
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"328000111_11": "「非常事態なんだ。すぐ来てくれッ!」",
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"328000111_12": "「何があったんですか?」",
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"328000111_13": "「追われてるんだ。詳しい話は合流後に」",
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"328000111_14": "「わかりました。発信機は持っていますね?」",
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"328000111_15": "「ああ、今起動する」",
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"328000111_16": "「……確認しました。\\n 合流するまで上手く隠れていてください。いいですね?」",
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"328000111_17": "「ああ、わかった」",
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"328000111_18": "(合流できるのが先か、奴らに捕捉されるのが先か……)",
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"328000111_19": "「やれやれ。\\n 稼業とはいえ、こんな目立つ服を着てくるんじゃなかったな……」",
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"328000111_20": "「よし、全員揃ったなッ!」",
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"328000111_21": "「はい、師匠ッ!\\n 訓練と聞いて朝からワクワクが止まりませんッ!」",
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"328000111_22": "「うむ、いい心がけだ」",
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"328000111_23": "(こっちは不安のバーゲンセールだけどな……)",
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"328000111_24": "「ところで、本日は対応力の向上を\\n 主眼とした訓練と聞きましたが」",
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"328000111_25": "「対応力って、具体的にはどういった意味合いですか?」",
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"328000111_26": "「ああ。ノイズなどの単純な敵は力押しで対処できることが多いが、\\n 知性や特殊な力を持つ敵は搦め手を使ってくることもあるだろう」",
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"328000111_27": "「アダムみたいな狡猾な敵とか……」",
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"328000111_28": "「ああ。騙し、すかし、こちらの思惑を外されてしまえば、\\n 仮にどれほど強力な力を持っていても、意味を成さん」",
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"328000111_29": "「当たらなければ意味がない、ってやつデスね」",
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"328000111_30": "「そうだ。知謀、技術、特殊能力――それらを駆使する相手に\\n 適切に対応できるか否かは、作戦の成否を大きく左右する」",
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"328000111_31": "「つまり、相手の思惑に嵌まらない判断力と、\\n 臨機応変な対処能力を身につけろ――ということかしら?」",
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"328000111_32": "「簡単に言えば、そういうことだな」",
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"328000111_33": "「搦め手か。特にお前は単純一直線だから要注意だな」",
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"328000111_34": "「ひどいよ、クリスちゃん」",
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"328000111_35": "「誰しも大なり小なり課題はある。そのための全体訓練だ」",
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"328000111_36": "「趣旨は理解したわ。\\n でも、対応力をどうやって鍛えるの?」",
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"328000111_37": "「シミュレータでは少々荷が勝ちすぎてしまうかと」",
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"328000111_38": "「そこで今日の訓練相手は、緒川に務めてもらうことにした」",
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"328000111_39": "「はい、お任せください」",
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"328000111_40": "「緒川さんが? なるほど……」",
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"328000111_41": "「彼は飛騨忍群の流れを汲む技前の持ち主だ。\\n 存分に揉んでもらうといい」",
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"328000111_42": "「つまりは、忍者が相手……」",
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"328000111_43": "「これは手強そうデス……」",
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"328000111_44": "「趣旨を理解してもらったところで、早速始めるとしよう」",
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"328000111_45": "「緒川さん、今日はよろしくお願いしますッ!」",
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"328000111_46": "「こちらこそお手柔らかにお願いします」",
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"328000111_47": "「それで勝利条件は? 『やめッ!』の声がかかるまでですか?」",
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"328000111_48": "「いや。今回は制限時間内に\\n 緒川の動きを捉えられればクリアと見なそう」",
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"328000111_49": "「それって、極端に言えば触るだけでもいいってこと?」",
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"328000111_50": "「できるものならな」",
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"328000111_51": "「なんだか鬼ごっこみたいデスね」",
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"328000111_52": "「厳密には違うがな。緒川からの攻撃もアリだ。\\n もちろんその際の接触についてはノーカウントとする」",
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"328000111_53": "「だとしても随分となめられたもんだな……」",
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"328000111_54": "「よーしッ! 1番、立花響ッ! お願いしますッ!」",
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"328000111_55": "「1人ではまず捉えきれんだろう。2人でかかるんだな」",
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"328000111_56": "「どこまでもなめまくりだな……ならあたしも行くッ!」",
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"328000111_57": "「では遠慮なくッ! 一緒に頑張ろうッ!」",
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"328000111_58": "「おうよッ!」",
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"328000111_59": "「頑張って、2人ともッ!」",
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"328000111_60": "「こいつを食らえ――ッ!」",
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"328000111_61": "「もらったああ――ッ!」",
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"328000111_62": "「なるほど。誘導弾で追い詰めての挟撃ですか」",
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"328000111_63": "「流石は長年おふたりが培ってきた連携ですね。\\n ですが――」",
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"328000111_64": "「くッ! でも、へいき、へっちゃらですッ!」",
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"328000111_65": "「ええ、わかっています。\\n ですが、これではどうでしょう」",
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"328000111_66": "「なんだとッ!?」",
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"328000111_67": "「ミサイルを蹴って弾道を逸らした?」",
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"328000111_68": "「ハチャメチャすぎデス……」",
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"328000111_69": "「あわわわわッ!?」",
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"328000111_70": "「おい、避けろッ!」",
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"328000111_71": "「い、いきなりじゃ無理――ッ!!」",
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"328000111_72": "「それを狙って立花の視界を奪いにッ!?」",
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"328000111_73": "「あああ――ッ!?」",
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"328000111_74": "「クソッ! あたしだけでも――」",
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"328000111_75": "「って、いない? どこ行った?」",
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"328000111_76": "「ここです。\\n ダメですよ、戦闘中に敵から視線を切っては」",
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"328000111_77": "「いつの間に、後ろに……」",
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"328000111_78": "「連携はいいが普段からの手癖に頼りすぎだッ!\\n 常に最善手を模索しろッ!」",
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"328000111_79": "「とほほ……」",
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"328000111_80": "「時間切れだ、次ッ!」",
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"328000111_81": "「くっそぉ……」",
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"328000111_82": "「次はアタシたちの出番デスッ!」",
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"328000111_83": "「これまでの訓練の成果、お見せします」",
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"328000111_84": "「息もつかせぬ連続技なら――」",
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"328000111_85": "「お手の物デスよッ!」",
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"328000111_86": "「流石はザババのおふたり、素晴らしい連携です」",
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"328000111_87": "「事前に示し合わせているかの様な、\\n 臨機応変かつ完璧なタイミングですね」",
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"328000111_88": "「ですが――こういう局面ではどうでしょうか」",
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"328000111_89": "「消えたデスッ!?」",
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"328000111_90": "「一体、どこに――」",
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"328000111_91": "「切ちゃん、後ろッ!」",
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"328000111_92": "「えッ、いつの間にッ!?」",
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"328000111_93": "「……あれ? いないデスよ、しら――」",
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"328000111_94": "「違う、今のはわたしじゃッ!」",
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"328000111_95": "「おおおおお――ッ!?」",
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"328000111_96": "「切ちゃんッ!!」",
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"328000111_97": "「隙だらけです」",
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"328000111_98": "「きゃああ――――ッ!!」",
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"328000111_99": "「まさか、お互いの信頼関係を逆手に取るなんて……」",
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"328000111_100": "「澄ました顔してエグい真似してくれるじゃないの」",
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"328000111_101": "「信頼と依存をはき違えるなッ!」",
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"328000111_102": "「お前たちも時間切れだッ! 次ッ! 残りの3人でかかれッ!」",
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"328000111_103": "「屈辱……と言える相手と状況ではないわね」",
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"328000111_104": "「ああ。マリア、小日向。気を引き締めてかかるぞッ!」",
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"328000111_105": "「はいッ!」",
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"328000111_106": "「あなたは遠距離から相手の行動範囲の制限をッ!」",
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"328000111_107": "「はいッ! 任せてくださいッ!」",
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"328000111_108": "「なるほど、鳥籠ですか。\\n でもこんなに隙間だらけでは意味がありません」",
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"328000111_109": "(クッ、ヌルヌルと器用に躱すわねッ!)",
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"328000111_110": "「けれどこれで終わりじゃないわッ! 翼ッ!」",
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"328000111_111": "「承知ッ! はあああ――ッ!!」",
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"328000111_112": "「なるほど。\\n 籠の隙間から刃の雨……これは少々厄介ですね」",
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"328000111_113": "「それだけじゃないわッ!」",
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"328000111_114": "「圧倒的な物量を重ね合わせて、\\n 3方向からの同時面制圧できましたか」",
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"328000111_115": "「ですが、少々無闇に撃ち過ぎです」",
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"328000111_116": "「はッ!」",
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"328000111_117": "「え? ここは――」",
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"328000111_118": "「きゃああ――ッ!」",
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"328000111_119": "「未来――ッ!!」",
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"328000111_120": "「どういうことッ!?」",
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"328000111_121": "「変わり身だとッ!? ならば――上だ、マリアッ!」",
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"328000111_122": "「えッ!?」",
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"328000111_123": "「遅いですよ」",
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"328000111_124": "「あああ――――ッ!?」",
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"328000111_125": "「女性を盾にするのも足蹴にするのも不本意ですが、ご容赦ください」",
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"328000111_126": "「物量で押すのは結構ですが、自分たちの攻撃が相手に\\n 利用される可能性も、頭の片隅に置いておいてください」",
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"328000111_127": "(流石は緒川さん。変幻自在の技の持ち主だ)",
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"328000111_128": "(その動きを止めねばわたしたちに勝機はないかッ!)",
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"328000111_129": "「2人の犠牲は無駄にはしないッ!」",
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"328000111_130": "「はあ――ッ!!」",
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"328000111_131": "「なるほど、影縫いできましたか」",
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"328000111_132": "「かかったッ!」",
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"328000111_133": "「緒川さん、覚悟ッ!!」",
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"328000111_134": "「お見事、と言いたいところですが――」",
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"328000111_135": "「くッ? いつの間にッ!」",
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"328000111_136": "「もしかして翼さんにも影縫いをッ?」",
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"328000111_137": "「いつ撃ったか、全然見えなかったデス……」",
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"328000111_138": "「うん……流石、本家本元」",
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"328000111_139": "「互いに身動きの取れぬ膠着状態……。\\n ですが飛び道具ならばこちらが優勢――」",
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"328000111_140": "「ええ。ですが――」",
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"328000111_141": "「そこまでッ! 時間切れだッ!」",
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||
"328000111_142": "「あッ!?」",
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||
"328000111_143": "「惜っしいッ! あと少しだったのにッ!」",
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||
"328000111_144": "「もう少し時間があったら……」",
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||
"328000111_145": "「いや、それは言っても仕方がない。\\n 制限時間を失念した、わたしたちの失態だ」",
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||
"328000111_146": "「そうね。仮にこれが、敵の大規模破壊兵器の発動を\\n 阻止する類いの任務であったなら……」",
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"328000111_147": "「阻止失敗、ということですね……」",
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"328000111_148": "「そういうことだ。\\n 我々の任務にもう少しだった、などという言い訳はきかん」",
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||
"328000111_149": "「すみません……」",
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||
"328000111_150": "「目の前の敵との駆け引きに集中しすぎて、残り時間を失念したな」",
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||
"328000111_151": "「……はい」",
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||
"328000111_152": "「個々の戦いだけでなく、常に戦局全体を念頭に置いて戦え。\\n 打ち克つべき敵は目の前にいる相手だけとは限らん」",
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||
"328000111_153": "「己が不甲斐なさに恥じ入るばかりです」",
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||
"328000111_154": "「……それに、例え時間があったとしても、\\n 今の攻防では緒川は捉えられんだろう」",
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"328000111_155": "「なッ!? か、影縫いをまだ解いていないのにッ!?」",
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"328000111_156": "「どんな術も絶対ではありません。\\n 少しの時間があれば、破る方法も考えられます」",
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"328000111_157": "「……完敗です」",
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||
"328000111_158": "「でも、まさか誰1人捉えられないなんて……」",
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"328000111_159": "「素早い上に技もトリッキーすぎるデス」",
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"328000111_160": "「すみません。\\n 手加減するなと言い含められまして」",
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||
"328000111_161": "「そうでなければ訓練にならんからな」",
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||
"328000111_162": "「こんな負け方するだなんて……」",
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"328000111_163": "「さて。誰もクリアできなかったペナルティとして、\\n この後の戦闘訓練のノルマを倍にするとしようか」",
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"328000111_164": "「うええッ!? そんなの聞いてないデスッ!」",
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"328000111_165": "「事前にペナルティを知っていたらクリアできていたとでも?」",
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"328000111_166": "「そ、そんなことはないですけど……」",
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||
"328000111_167": "「つべこべ言わず始めるぞッ! 配置につけッ!」",
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"328000111_168": "「ちょッ、休みなしでかよッ!?」",
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||
"328000111_169": "「師匠、流石にこれは鬼過ぎますーッ!」"
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