77 lines
7.2 KiB
JSON
77 lines
7.2 KiB
JSON
{
|
||
"201012411_0": "揺蕩う歌姫",
|
||
"201012411_1": "「撮影の予定時間はとうに過ぎているが……。\\n 本当に間に合うのか?」",
|
||
"201012411_2": "「お待たせしました、状況がわかりました」",
|
||
"201012411_3": "「予定していた読者モデルが、\\n 急な体調不良で来られなくなったそうです」",
|
||
"201012411_4": "「わたしと一緒に撮影する子ですか?」",
|
||
"201012411_5": "「はい。その代役が見つからなくて、困っているようで」",
|
||
"201012411_6": "「撮影時間がおしているようですが、大丈夫でしょうか……」",
|
||
"201012411_7": "「早急に代役が見つからないと、\\n 厳しいかもしれませんね」",
|
||
"201012411_8": "「今、撮影しているモデルではダメなのですか?」",
|
||
"201012411_9": "「衣装デザイン的にも今現場に来ているモデルでは、\\n 身長や体格が合わないようで……」",
|
||
"201012411_10": "「時間が無い中、困難極まる条件ですね。\\n 代役が見つからないのも納得です」",
|
||
"201012411_11": "「こちらが体調不良になってしまったモデルの写真なのですが、\\n 誰かに似ていると思いませんか?」",
|
||
"201012411_12": "「これは……。なるほど、たしかに、彼女なら\\n 代役が務まるかもしれません」",
|
||
"201012411_13": "「僕も翼さんと、同じ考えです。\\n スタッフへ提案してみますね」",
|
||
"201012411_14": "「それでね、丸々とした猫が、\\n ゴローンって転がってて……」",
|
||
"201012411_15": "「いいなあ。わたしも見たかった」",
|
||
"201012411_16": "「あれ、こんな時間に誰だろう?」",
|
||
"201012411_17": "「……翼さんだ。響の端末と、かけ間違えたのかな……」",
|
||
"201012411_18": "「はい、もしもし。小日向です」",
|
||
"201012411_19": "「わたしだ。夜分にすまないな」",
|
||
"201012411_20": "「こんばんは。あの、響じゃなくて、\\n わたしにご用でしょうか……?」",
|
||
"201012411_21": "「大丈夫だ、間違っていない。\\n 今夜、予定はあるか?」",
|
||
"201012411_22": "「いえ、何もありませんけど……」",
|
||
"201012411_23": "「少し長くなるが、聞いてほしい。\\n 実は……」",
|
||
"201012411_24": "「出版社への確認は取れている。\\n 小日向ならば、代役として起用しても問題無いそうだ」",
|
||
"201012411_25": "「現場のスタッフからも、撮影が初めてと承知の上で、\\n どうか引き受けてほしいとの伝言を貰っている」",
|
||
"201012411_26": "「どうだろう、引き受けてもらえないだろうか?」",
|
||
"201012411_27": "「で、でも……」",
|
||
"201012411_28": "「ためらうのは当然だ。\\n だが落ち着いて考えてもらうだけの時間は無い」",
|
||
"201012411_29": "「悪いが10分以内に、引き受けるか否かの\\n 連絡を貰えないだろうか?」",
|
||
"201012411_30": "「わ、わかりました……」",
|
||
"201012411_31": "「よろしく頼む」",
|
||
"201012411_32": "「響、聞こえてた?」",
|
||
"201012411_33": "「もちろんッ!\\n 翼さんと一緒に撮影なんてすごいことだよッ!」",
|
||
"201012411_34": "「だって、水着だよ? 恥ずかしい……」",
|
||
"201012411_35": "「うーん、それもわかるけど……」",
|
||
"201012411_36": "「でも、翼さんが困っているなら、\\n 協力してあげたい……」",
|
||
"201012411_37": "「やっぱり、そうだよね……」",
|
||
"201012411_38": "「ねえ、響ならどうする?」",
|
||
"201012411_39": "「そうだなあ、わたしなら……。\\n うん、引き受けると思う」",
|
||
"201012411_40": "「撮影は不安だけど、\\n 翼さんが一緒だからッ!」",
|
||
"201012411_41": "「悪いことには絶対にならないよ」",
|
||
"201012411_42": "「響は翼さんを、信頼しているんだね」",
|
||
"201012411_43": "「ありがとう、響。\\n わたしも翼さんを信じる。やってみるよッ!」",
|
||
"201012411_44": "「きゃッ! お、落ちそう……」",
|
||
"201012411_45": "「落ち着け。緊張すればするほど体は硬くなり、\\n バランスが取れなくなる」",
|
||
"201012411_46": "「撮影が終わるまで、水着を濡らすことは厳禁だ」",
|
||
"201012411_47": "「どうしてもバランスが取れなかったら、\\n フロートから落ちる前に、わたしにしがみつくといい」",
|
||
"201012411_48": "「でも、そんなことをしたら、\\n 2人とも一緒に落ちちゃいますよ」",
|
||
"201012411_49": "「フッ、しがみつかれた程度でバランスを崩すようでは、\\n 防人は務まらない」",
|
||
"201012411_50": "「あ、ありがとうございます。……響が翼さんを\\n 全面的に信頼している理由が、わかる気がします……」",
|
||
"201012411_51": "「立花が……?」",
|
||
"201012411_52": "「落ちそうになった時はしがみつくので、\\n よろしくお願いします」",
|
||
"201012411_53": "「ああ、任せておけ」",
|
||
"201012411_54": "「お疲れ様です。今回は助かりました」",
|
||
"201012411_55": "「いえいえ、わたしは何もしてません。\\n 未来が自分でやるって、決めたんです」",
|
||
"201012411_56": "「それでは、撮影を始めまーす。\\n 2人とも、目線をこっちにお願いします」",
|
||
"201012411_57": "「は、はいッ!」",
|
||
"201012411_58": "「小日向さん、まだ表情が硬いな。\\n もう少し自然な笑みを浮かべて」",
|
||
"201012411_59": "「自然な笑みですか?\\n ど、どうやって……」",
|
||
"201012411_60": "「そうだな、お好み焼きを口いっぱいに頬張っている、\\n 立花を思い浮かべてはどうだろう」",
|
||
"201012411_61": "「えッ!?」",
|
||
"201012411_62": "「フフッ、すぐに想像できちゃいますね」",
|
||
"201012411_63": "「あッ、いいね。そのまま笑ってて」",
|
||
"201012411_64": "「小日向はモデルとしてのスジがいいな。\\n 素質があるんじゃないか」",
|
||
"201012411_65": "「わたしにそんな素質、ありませんよッ!」",
|
||
"201012411_66": "「お世辞ではない。\\n 本心でそう思ったから、口にしたんだ」",
|
||
"201012411_67": "「あ、ありがとうございます……」",
|
||
"201012411_68": "「おや、小日向さん、少し余裕が出てきたのかな?\\n 自信のある表情、とても似合うよ」",
|
||
"201012411_69": "「そんな、自信なんてッ!」",
|
||
"201012411_70": "「2人とも、水着が似合ってて綺麗だな。\\n 見てて、うっとりしちゃうよ」",
|
||
"201012411_71": "「響さんも十分、魅力的だと思いますよ。\\n 撮影に興味がありますか?」",
|
||
"201012411_72": "「うーん……、翼さんとのアクションシーンなら、\\n 撮ってもらいたいかもッ!」",
|
||
"201012411_73": "「それ、いいですね。\\n 機会があったら、よろしくお願いします」",
|
||
"201012411_74": "「はい、喜んでッ!」"
|
||
} |