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{
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"501000311_0": "世界を渡る者たち",
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"501000311_1": "「う、ん……、……?\\n ここは――」",
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"501000311_2": "「……良かった。ヨウ、目が覚めたんだね。",
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"501000311_3": " 身体の調子はどう? 痛いところはない?」",
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"501000311_4": "「キョウッ!",
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"501000311_5": " あたしのことなんてどうでもいいッ! キョウは大丈夫なのッ?」",
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"501000311_6": "「あたしたち……\\n 装者どもと戦って、それで……」",
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"501000311_7": "「その最中に、化け物じみた強さの……",
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"501000311_8": " そうだ、『世界蛇の巫女』が……ッ!!」",
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"501000311_9": "「ヨウ、落ち着いて。わたしは平気。",
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"501000311_10": " わたしも目が覚めたら、この部屋に寝かされていたの」",
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"501000311_11": "「きっと、あの時の状況を考えると、\\n 多分わたしたちは――」",
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"501000311_12": "「……捕虜になった、ということか。\\n 殺されなかったのが不思議だけど――」",
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"501000311_13": "「くそッ!」",
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"501000311_14": "「……ヨウ、そんなに自分を責めないで。\\n わたしは、ヨウが生きてくれていて、良かった」",
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"501000311_15": "「キョウ……。\\n そんなの、あたしだって……」",
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"501000311_16": "「――ッ!",
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"501000311_17": " 足音が、近づいてくる……」",
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"501000311_18": "「目が覚めたようですね」",
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"501000311_19": "「…………」",
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"501000311_20": "「交渉の時間――、\\n ということで、よろしいですか?」",
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"501000311_21": "「……そうですね。\\n お互いに、知りたいこともあるでしょう」",
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"501000311_22": "「特にそちらには、ね?」",
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"501000311_23": "「――ッ!」",
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"501000311_24": "「……控えろ、立花。\\n わたしたちの役割は聞いているだろう?」",
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"501000311_25": "「それに、立花とて、まだ目が覚めたばかりなんだ。\\n 無理はするな」",
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"501000311_26": "「う……\\n はい……」",
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"501000311_27": "「……ハ、なるほど。",
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"501000311_28": " 役に立つかは知らないが……」",
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"501000311_29": "「そいつらは、あたしたちへの抑止力のつもりか」",
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"501000311_30": "「ご安心を。\\n 『この状況で』わたしたちが抵抗をする意味はありませんから」",
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"501000311_31": "「……話が早くて助かります。\\n それではいくつか、質問をさせてもらいます――」",
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"501000311_32": "「……」",
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"501000311_33": "(ブラフは効かない、か。\\n ……やっぱりネームドはめんどくさいな)",
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"501000311_34": "(さて、踏ん張り時ですね。\\n 司令から任されたS.O.N.G.を好き放題に蹂躙されて――)",
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"501000311_35": "(このままで終わるわけにはいきません。\\n ここから巻き返してみせる……ッ!)",
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"501000311_36": "「――まずは、そちらの所属。\\n その目的について、教えていただけますか?」",
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"501000311_37": "「それについては、\\n 既にお仲間から聞き及んでいそうではありますが……」",
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"501000311_38": "「わたしたちは『OTHERS』。この世界を殺しに来た者……。\\n 端的に申しますと、あなたがたの敵です」",
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"501000311_39": "「この世界、ということは……、\\n 他の並行世界からやって来た、ということですね?」",
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"501000311_40": "「『見放された世界』より来たと、\\n そう話していたそうだが……」",
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"501000311_41": "「そうとも。お前たちが認識していない……、",
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"501000311_42": " いや、『認識しようともしなかった』世界から来たんだ」",
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"501000311_43": "「つまりは、自分たちの世界のために――」",
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"501000311_44": "「わたしたちの世界を攻撃してきたということか。\\n ――ベアトリーチェと徒党を組んで」",
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"501000311_45": "「およそ、その認識でいていただいて構いません。\\n ですが、訂正させてください」",
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"501000311_46": "「わたしたちは、あの世界蛇の巫女……。\\n ベアトリーチェとは、関係がない」",
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"501000311_47": "「並行世界を壊されるのは、\\n あたしたちにとっても非常に不本意だ」",
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"501000311_48": "「楽しいから世界を悪意に染めて、壊すだと……?\\n ふざけているにも程がある……ッ!」",
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"501000311_49": "「……わかりました」",
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"501000311_50": "「……驚いた。\\n 簡単に信じるのですか?」",
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"501000311_51": "「簡単に信じたわけではありません。\\n これでも、人を見抜く目には長けているつもりです」",
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"501000311_52": "「……」",
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"501000311_53": "「あなたがたの言うことを信じ、\\n その上で、お願いがあります」",
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"501000311_54": "「お願い、だって?」",
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"501000311_55": "「響さんより、あなたがたが、\\n ベアトリーチェ相手に奮戦していたと聞いています」",
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"501000311_56": "「……あのザマを奮戦とは。\\n 嫌味もここまでくると清々しいな」",
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"501000311_57": "「そんなつもりじゃ……」",
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"501000311_58": "「であれば、\\n 我々S.O.N.G.としては――」",
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"501000311_59": "「あなたがた、お2人に、\\n 世界蛇及びベアトリーチェを倒すまで共同戦線を提案します」",
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"501000311_60": "「――ッ!?」",
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"501000311_61": "「なッ!?\\n 本気ですかッ!?」",
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"501000311_62": "「本気です。\\n ベアトリーチェは、以前よりも力を増しています」",
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"501000311_63": "「他の並行世界からの援軍も、\\n OTHERSの活動により、望めない状況です」",
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"501000311_64": "「全ての世界の危機だとしても、\\n まずは自分たちの世界を護り、目の前の人々を護る……」",
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"501000311_65": "「それが、僕たちの知る\\n 『並行世界の装者』たちでしょう?」",
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"501000311_66": "「……」",
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"501000311_67": "「ですから、こちらとしては、\\n 使える戦力を放っておくわけにはいきません」",
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"501000311_68": "「……確かに。\\n 現実的な案であることはわかります……」",
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"501000311_69": "「……以前、我々は並行世界との共同作戦により、\\n 世界蛇及びベアトリーチェを撃退しました」",
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"501000311_70": "(……数年前に記録した事象のことか。よく覚えている。",
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"501000311_71": " だからこそ、並行世界を分断できるよう奇襲を掛けたわけだけど)",
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"501000311_72": "(今回はそれが裏目に出た、ということ……。\\n まったく、ままならないものですね)",
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"501000311_73": "「しかし、今回復活したベアトリーチェは、\\n その時よりも遙かに力を増している」",
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"501000311_74": "「あなたがたが『あの時』の\\n ベアトリーチェをご存知かはわかりませんが……」",
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"501000311_75": "「実際戦って、ベアトリーチェの脅威がわからないほど、\\n あなたがたの力量は低くはないはずです」",
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"501000311_76": "「……チッ」",
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"501000311_77": "「……ええ、その通りです。\\n 残念ながら、あんな化け物レベルが出て来るのは予想外でした」",
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"501000311_78": "「我々、そしてシンフォギア装者に対しての備えは、\\n 相当練ってきたのでしょう」",
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"501000311_79": "「しかし、事は最早、\\n あなたがた……そして僕たちの想定を越えています」",
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"501000311_80": "「ならば、我々がすべきことは、\\n 世界蛇及びベアトリーチェに対しての共同戦線」",
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"501000311_81": "「少なくとも。\\n 僕たちが敵対している場合ではない。違いますか?」",
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"501000311_82": "「…………」",
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"501000311_83": "(すごいな。\\n 的確に相手を詰めていく……)",
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"501000311_84": "(まるで、\\n お父様の交渉を見ているかのようだ……)",
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"501000311_85": "「…………」",
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"501000311_86": "「…………」",
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"501000311_87": "「……わかりました。\\n 共同戦線の申し出、受けましょう」",
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"501000311_88": "「そうだな。\\n 飽くまでも、一時的、表面的な――な」",
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"501000311_89": "「本当ッ!?」",
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"501000311_90": "「あなたの言う通り、この問題は、\\n わたしたちだけで突破するのは難しそうです」",
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"501000311_91": "「それで、\\n わたしたちに何を求めるつもりですか?」",
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"501000311_92": "「捕虜としてのわたしたちに、そのような提案をするのです。\\n 何か、してもらいたいことがあるのでしょう?」",
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"501000311_93": "(切り替えが早いな。\\n 余程頭が回るか、あるいは……)",
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"501000311_94": "(常在戦場の生き方が染み付いているか。\\n どちらにしろ、相当に過酷な世界を生き抜いてきたようだ)",
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"501000311_95": "「はい。\\n 各地に出現しているドッペルゲンガーを退かせてください」",
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"501000311_96": "「ああ……順当だな。\\n だが、それはできない」",
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"501000311_97": "「――ッ!\\n それは、どうして……?」",
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"501000311_98": "「……意地悪で言っているわけではないんですよ、\\n ファム・ファタール」",
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"501000311_99": "「一度『避雷針』を導に召喚した『<ruby=ドッペルゲンガー>器</ruby>』は、\\n もう元に戻すことは不可能です」",
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"501000311_100": "「そんな……」",
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"501000311_101": "「……わたしたちは、\\n 星命力がほぼ枯渇した世界からやって来ました」",
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"501000311_102": "「星命力、って……\\n 確か……?」",
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"501000311_103": "「エレクライトを纏うヒビキさんから、報告を受けた……\\n ニコラ・テスラが求めていたものですか?」",
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"501000311_104": "「如何にも。\\n とは言え、わたしたちの収集方法はそれとは違います」",
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"501000311_105": "「死にかけの、守護者にすら見放されたわたしたちの世界。\\n しかし、だからこそ、他の並行世界には存在しない技術がありました」",
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"501000311_106": "「それは、『乾いた器に、潤ったものを捕らえる』技術。",
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"501000311_107": " ……元々は、飲料水を得るための……生きるための、技術です」",
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"501000311_108": "「水は、高きから低きに流れる。道理ですよね。\\n リンゴが上から下に落ちるのと同じです。だから――」",
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"501000311_109": "「今にも死にそうな、弱々しい魂を導にして、\\n この世界に召喚した『<ruby=うつわ>ドッペルゲンガー</ruby>』こそ……」",
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"501000311_110": "「強者を捕らえるのに相応しい、\\n そんな強い器となる、ということですよ」",
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"501000311_111": "「けれど……そんなに大きな器を用意するのに、\\n 代償がないわけがないでしょう?」",
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"501000311_112": "「――ッ!」",
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"501000311_113": "「避雷針役は召喚時点で死を免れませんし……\\n ドッペルゲンガーは、飽くまで『自律する器』」",
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"501000311_114": "「作戦開始時点にインプットした『生命力を回収する』という任務を、\\n 粛々と、休むことなく遂げ続ける機械でしかありません」",
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"501000311_115": "「あたしたちの生死に関わらず――な」",
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"501000311_116": "「……なるほど」",
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"501000311_117": "「……他に、確認事項はありますか?\\n なければ、これで話は終わりに――」",
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"501000311_118": "「――あのッ!\\n だったらッ!」",
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"501000311_119": "「キョウちゃんとヨウちゃんの世界についても、\\n 何か、教えてくれることはあったりするかな……?」",
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"501000311_120": "「……勘違いしないでくださいね、\\n ファム・ファタール」",
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"501000311_121": "「わたしたちにできるのは、\\n 世界蛇撃破のため、力を振るうことだけ」",
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"501000311_122": "「つまり、世界蛇を倒すところまでいけば、\\n 共同戦線は即終了です」",
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"501000311_123": "「あたしたちの目的は、『見放された世界』のために、\\n この世界から奪い尽くすこと。……それは変わらない」",
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"501000311_124": "「精々寝首を掻かれないよう、\\n 気をつけることだな」",
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"501000311_125": "「……」",
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"501000311_126": "「……それは、こちらとて同じことだ」",
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"501000311_127": "「……最後に、\\n もう1つだけ教えていただけますか」",
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"501000311_128": "「……」",
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"501000311_129": "「この状況下です。並行世界への攻撃を中止して、\\n あなたがたの世界に逃げるという選択肢もあったのでは?」",
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"501000311_130": "「馬鹿を言うな。\\n あたしたちは、世界を託されて戦っているッ!」",
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"501000311_131": "「『見放された世界』のためなら、\\n 泥水だって啜って生き延びてやるッ!」",
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"501000311_132": "「ええ、その通りです。\\n こちらにも、決して譲れないものがある」",
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"501000311_133": "「<size=25>――それに、容易く『逃げ帰れる』わけでもないんですよ。\\n カヴァーチャが、許してくれるはずもない……</size>」",
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"501000311_134": "「え……?」",
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"501000311_135": "「……いえ、こちらの話です」",
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"501000311_136": "「大して実のある話ではなかっただろうお詫びに……",
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||
"501000311_137": " そうですね、こんな『話のタネ』はいかがでしょうか?」",
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||
"501000311_138": "「あなたたちは、\\n わたしたちのことを『世界の敵』と呼びましたが――」",
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||
"501000311_139": "「わたしたちにとっては、\\n シンフォギアこそ『世界の敵』です」",
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"501000311_140": "「だって、わたしたちの世界が『見放された世界』になってしまったのは、\\n ――シンフォギアのせいなんですから」",
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"501000311_141": "「――ッ!?」",
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||
"501000311_142": "「……」",
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"501000311_143": "「……世界創生の神話に興味があるわけではないでしょうから、\\n わたしの『雑談』はこれくらいにさせていただきますね?」",
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"501000311_144": "(シンフォギアが、世界の敵……?\\n どうして、そんなことに……)"
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