xdutranslations/Missions/main_eo02/501000141_translations_jpn.json
2024-12-22 15:59:32 +03:00

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{
"501000141_0": "「フフ。\\n 相変わらず、よく食べるわね」",
"501000141_1": "(でも、このパンは……食糧が不足している中、\\n 巫女であるわたしのために用意されたなけなしの食事",
"501000141_2": "(それを勝手にこの子に食べさせているのは、\\n ……申し訳なく思うわね",
"501000141_3": "「……」",
"501000141_4": "「あら……どうしたの?",
"501000141_5": " わたしのことなんて気にしないで、どんどん食べなさい」",
"501000141_6": "「あなたが美味しそうに食べている姿を見るのが、\\n わたしの一番の楽しみなんだから」",
"501000141_7": "「……そういえば、\\n あなた、すっかり元気になったようね」",
"501000141_8": "「ついこの前は、\\n 弱っていたような気がしていたけど……」",
"501000141_9": "「食べものだけで、そんな回復はしないと思うのよね……\\n だとしたら……」",
"501000141_10": "(わたしがこの子を見つけたのは、街の人から嫌なことを言われて、\\n 少し、落ち込んでいた時だったかしら……",
"501000141_11": "(だけど、今はこんなに元気でいる。",
"501000141_12": " それって、ひょっとして――)",
"501000141_13": "(この子は、\\n わたしが抱いている感情に、影響されているということ",
"501000141_14": "「ねえあなた、もしかして……ご飯の他にも、\\n 他人の想いを、感情を、食べているの」",
"501000141_15": "「……」",
"501000141_16": "「……そういうことなら、\\n わたしは元気でいないとね」",
"501000141_17": "「誰かの感情を写し取る、\\n 鏡のようなこの子を、護るために」",
"501000141_18": "「……おかしな感情を食べて、\\n おなかを壊したりしたら、いけないもの」",
"501000141_19": "「……」",
"501000141_20": "「ねえあなた、わたしの歌を聴いてくれる?」",
"501000141_21": "「……」",
"501000141_22": "「……飢えも満たせない、神に祈りも届けられない、\\n 力のない歌」",
"501000141_23": "「だから、最近は誰のために唄うのか、\\n わからなくなっていた」",
"501000141_24": "「けど、今なら――」",
"501000141_25": "「あなたのために、唄えると思うから……」",
"501000141_26": "「――――♪\\n ……♪ …………♪」",
"501000141_27": "「……。",
"501000141_28": " ――♪」",
"501000141_29": "「――ッ!",
"501000141_30": " ああ、やっぱり……あなたはわたしの想いを、返してくれるのね」",
"501000141_31": "「言葉がなくたって……\\n わたしの<ruby=おもい>胸の歌</ruby>を、わかってくれる」",
"501000141_32": "「こんなに、嬉しいことはないわ……」",
"501000141_33": "「……♪\\n …………♪」",
"501000141_34": "「あれは、巫女様と……\\n まさか……そんな……ッ」",
"501000141_35": "「…………」",
"501000141_36": "「――たとえ、たった1人が、綺麗なままでいようとしても。\\n 世界は、それを許してはくれない」",
"501000141_37": "「誰もが飢えていた、この時代。\\n 終わらない飢餓は、人々から理性を奪い取る」",
"501000141_38": "「誰かを想うよりも、相手のことを考えるよりも……\\n ――わからないものは、排斥したほうが、手っ取り早い」",
"501000141_39": "「わからないから、排斥する。\\n わかってもらえないから……殺す」",
"501000141_40": "「たったそれだけのこと」",
"501000141_41": "「――悪意が、世界に満ちていく。\\n か細い歌なんかでは救えないほどに、強く――」",
"501000141_42": "「何が巫女だッ!\\n こいつは最初から、敵だったんだッ」",
"501000141_43": "「…………ッ!」",
"501000141_44": "「待っていただきたいッ!\\n これは、何かの間違いですッ」",
"501000141_45": "「間違いなものかッ!\\n 俺は、確かに見たんだッ」",
"501000141_46": "「そいつが、\\n 蛇を隠し持っているのをッ」",
"501000141_47": "「俺の親友は、戦場で喰われたんだッ!\\n 蛇に……全てを喰い尽くす『大喰らい』にッ」",
"501000141_48": "「皆、利用されていたんだッ!\\n こいつにッ」",
"501000141_49": "「そうだッ! 俺たちを癒やしていたのも、\\n 多くの餌を、『大喰らい』に献上するためだったんだッ」",
"501000141_50": "「違うッ!\\n 巫女様が、そんなことを考えるはずがないッ」",
"501000141_51": "「そいつを捕まえろッ!\\n 牢獄に閉じ込めておくんだッ」",
"501000141_52": "「俺たちは、もう騙されないぞッ!」",
"501000141_53": "「もとより『祈るだけ』の巫女なんざ……\\n なんの役にだって、立っちゃいなかったんだッ」",
"501000141_54": "「――ッ!!」",
"501000141_55": "「くッ……!\\n 巫女様ッ」",
"501000141_56": "「…………」",
"501000141_57": "「……どうして、\\n こうなっちゃったんだろう」",
"501000141_58": "「わたしは、\\n みんなの幸せを祈っていただけなのに――」",
"501000141_59": "「……祈っていた……だけ。\\n それが、ダメだったの……」",
"501000141_60": "「わたしの<ruby=いのり>歌</ruby>は……届かなかった。\\n 誰の望みも、飢えも、満たせなかった……」",
"501000141_61": "「……、\\n おなか、空いたな」",
"501000141_62": "「……、……♪\\n ――♪」",
"501000141_63": "(こんなにおなかが減っていても、\\n つい歌を口ずさんでしまう",
"501000141_64": "(求められるまま、ずっと唄ってきた歌。\\n わたしにとって、一番大事な歌",
"501000141_65": "「フフ……。\\n 牢に入れられたときの擦り傷は癒えたけれど……」",
"501000141_66": "「本当に……\\n 歌ではおなかが膨れるなんてこと、ないわよね」",
"501000141_67": "「なら……この歌に、\\n どんな意味があったんだろう……」",
"501000141_68": "「わたしは、\\n なんのために唄っていたんだろう……」",
"501000141_69": "「……あの『蛇』、\\n どうにかして処分できないの」",
"501000141_70": "「無理だよ。どんな攻撃も効きやしない。\\n 攻撃を餌と認識して食っちまうんだ」",
"501000141_71": "「しかも、こっちが焦れば焦るほど、力を増す始末だ。\\n 本当に、誰がどんな意図で造ったんだか……」",
"501000141_72": "「負の感情を食べて成長するなんて、本当に厄介ね。\\n ……ところで、巫女様の方はどうなったの」",
"501000141_73": "「ああ。\\n 正式に処刑が決まったらしい」",
"501000141_74": "「お付きの男は、最後まで擁護していたようだがな。\\n まあ、止めようがなかったな」",
"501000141_75": "「そう。\\n ……ま、仕方がないわよね」",
"501000141_76": "「戦意を維持するための象徴は、もう必要ない。\\n けれど……」",
"501000141_77": "「終わらぬ飢餓、出口の見えない絶望への捌け口……\\n スケープゴートは、必要だもの」",
"501000141_78": "『祈りの巫女』の処刑当日――",
"501000141_79": "「…………」",
"501000141_80": "「――痛ッ!\\n これは……石」",
"501000141_81": "「悪魔めッ!\\n 俺たちを騙しやがってッ」",
"501000141_82": "「全部お前のせいだッ!\\n お前のせいで、皆苦しんでいるんだッ」",
"501000141_83": "「ふざけるなッ!\\n 死んで償えッ」",
"501000141_84": "(……ああ……。\\n わたしは……こんなにも恨まれていたのね",
"501000141_85": "(みんなのために、\\n 唄っていたつもりだけれど……",
"501000141_86": "(――つまるところ、\\n <ruby=いのる>唄う</ruby>ことしか、できなかったから)",
"501000141_87": "(それでもわたしには、\\n もう、これしか……",
"501000141_88": "「…………♪」",
"501000141_89": "「――♪ ……♪\\n …………♪」",
"501000141_90": "「あいつ……ッ!\\n まだ歌なんて唄ってやがるッ」",
"501000141_91": "「聴くに耐えない……。\\n そんな呪われた歌、唄うんじゃないッ」",
"501000141_92": "「痛――ッ!」",
"501000141_93": "「――ッ!!」",
"501000141_94": "「……ざ、ざまあみろッ!\\n この<ruby=いしつぶて>石礫</ruby>は、皆の怒りだッ!」",
"501000141_95": "「……呪われた、歌?\\n みんなの……怒り……」",
"501000141_96": "「……………………フフ」",
"501000141_97": "「フフ、フフフフフッ」",
"501000141_98": "「なんだ、あいつ。\\n 今度は笑い始めたぞ」",
"501000141_99": "「正体を現したなッ!\\n 呪いの巫女めッ」",
"501000141_100": "「正体に、呪い、ね。\\n ……フフッ、ああ――なんてバカバカしい」",
"501000141_101": "「……わたしは、ただ……\\n 願われるままに、唄っていただけよ」",
"501000141_102": "「なぁんの役にも立たない歌を、ね」",
"501000141_103": "「……あなたたちの傷が、癒えるように。\\n あなたたちの戦いに、勝利があるように」",
"501000141_104": "「……ねえ、そこのあなた。\\n 戦場から生きて帰った息子さんは元気」",
"501000141_105": "「――ッ!!」",
"501000141_106": "「あんなに感謝してくれていたのにね」",
"501000141_107": "「それすら忘れて石を投げるだなんて……\\n 恩知らず」",
"501000141_108": "「そ、それは……\\n お、恐ろしいッ 早く処刑しておくれッ」",
"501000141_109": "(……わたしが心をすり減らして祈り、\\n 護ろうとしていたものが、こんなものだったなんて",
"501000141_110": "(けれど随分と……この人たちは、活力に満ちている。\\n わたしの歌を聴いていたときよりも、ずっと",
"501000141_111": "「……そうよね。\\n 歌では、腹は満ちないのだもの」",
"501000141_112": "「けれど……フフッ。",
"501000141_113": " アハハハハッ!」",
"501000141_114": "「あいつ、なんて嗤いかたを……」",
"501000141_115": "「わたしを殺そうという意志に突き動かされるあなたたちの、\\n なんて生き生きとしたことかしら」",
"501000141_116": "「全部奪われたと被害者ヅラをして、最後に残った<ruby=これ>悪意</ruby>が、\\n 人の本質――」",
"501000141_117": "「……だったら」",
"501000141_118": "「……もう、\\n 我慢なんかしなくても、いいわよね」",
"501000141_119": "「かつてより、\\n この世界に語られる神話があった」",
"501000141_120": "「世界の底にて永く<ruby=まどろ>微睡</ruby>み、\\n 世界の黄昏において目覚めるモ」",
"501000141_121": "「その鳴動は大波を巻き起こし、\\n 大地を洗い流すという」",
"501000141_122": "「終末を謳う、\\n <ruby=うわばみ>蛇</ruby>の神話――」",
"501000141_123": "「ならば、わたしはあの子に……わたしの隣にいてくれて、\\n いつもおなかを空かせているあの子に、その名を与えよう」",
"501000141_124": "「万物を飲み込む世界蛇――、\\n 『ヨルムンガンド』とッ」",
"501000141_125": "「わたしの悪意を、全部あげる。\\n わたしの存在も、何もかも、全部あげるわ」",
"501000141_126": "「……本当は、<ruby=こんなもの>悪意</ruby>じゃなくて、\\n もっと素敵なものをあげたかったけど」",
"501000141_127": "「綺麗なあなたに似合うものを、\\n おなかいっぱい食べさせてあげたかった。けれど――」",
"501000141_128": "「ここには絶望しかない。\\n あなたを汚す、底なしの絶望しか残っていない」",
"501000141_129": "「だから、せめて……\\n 全てを喰らい尽くしなさいッ」",
"501000141_130": "「あなたを汚した、何もかもをッ!\\n 全部、全部、全部――ッ」",
"501000141_131": "「少女の、呪いの<ruby=いのり>歌</ruby>を、\\n 小さな蛇は聴き届けた」",
"501000141_132": "「絶望で染まった<ruby=いのり>歌</ruby>は、\\n フォニックゲインの高まりと共に――」",
"501000141_133": "「『蛇』と、\\n そう呼ばれていた聖遺物を、一瞬で励起させた」",
"501000141_134": "「『蛇』の放ったアウフヴァッヘン波形により、\\n 少女の中にあった『フィーネの魂』が目覚めて――」",
"501000141_135": "「だけど、それは\\n 一瞬で塗り潰された」",
"501000141_136": "「……まあ、\\n それも当然よね」",
"501000141_137": "「おなかが空いている時に、\\n 恋心なんて、なんの役にも立たないんだもの」",
"501000141_138": "「少女の感じていた絶望は、\\n それほどに大きくて――」",
"501000141_139": "「彼女を糾弾したその世界を、\\n いとも簡単に、まるごと滅ぼしてしまった」",
"501000141_140": "「――ッ!\\n 巫女様……」",
"501000141_141": "「あら、こんな惨状でも生きていたのね。\\n しぶといこと」",
"501000141_142": "「……申し訳ありません、巫女様。\\n 私は、あなたの心を護れなかった」",
"501000141_143": "「私にもっと力があれば。\\n このようなことには……」",
"501000141_144": "「……ふぅん。\\n それが遺言ということでいいのかしら」",
"501000141_145": "「一時でも世話になった礼よ。\\n 苦しませずに、食べてあげる」",
"501000141_146": "「……お待ちください」",
"501000141_147": "「あら?\\n 命乞い」",
"501000141_148": "「違います。\\n 私を、連れて行ってくださいませんか」",
"501000141_149": "「……?」",
"501000141_150": "「あなたの行く道は、\\n 私にとっての道でもあります」",
"501000141_151": "「これから、あなたが、\\n 祈りではなく、絶望を、悪意を携え進むのであれば――」",
"501000141_152": "「私も、\\n それを自分の道としましょう」",
"501000141_153": "「……わたしに、ついてくると?」",
"501000141_154": "「はい、巫女様……\\n いいえ、ベルダンディ様」",
"501000141_155": "「……今更ね。",
"501000141_156": " 祈っていただけの馬鹿な少女は、もういない」",
"501000141_157": "「ヨルムンガンドと繋がったからかしら……\\n あの子が絶望を食べている今、わたし……」",
"501000141_158": "「満たされているとは言えないけれど、\\n 飢えてはいないわ」",
"501000141_159": "「…………」",
"501000141_160": "「…………けれど、そうね。\\n 人きりで食事をしても、つまらないもの」",
"501000141_161": "「であれば、わたしに仕えなさい」",
"501000141_162": "「わたしは最早、祈りの巫女ベルダンディに非ず。\\n わたしは――<ruby=ヨルムンガンド>世界蛇</ruby>の巫女、ベアトリーチェ」",
"501000141_163": "「全ての世界に、\\n 悪意と絶望をもたらすもの――」",
"501000141_164": "「あなたは精々頑張って、\\n その手伝いをするといいわ」",
"501000141_165": "「……はい。\\n 御心のままに」",
"501000141_166": "「それじゃあ、\\n まずはこの世界――」",
"501000141_167": "「どうしようもなく終わったこの世界の、\\n 中途半端な食い残しを、片付けてしまいましょう」",
"501000141_168": "「――そうしてわたしは、\\n わたしを虐げていた世界を喰らい尽くした」",
"501000141_169": "「自分が正しいという顔をして、\\n わたしに石を投げていた奴ら――」",
"501000141_170": "「そんな奴らの顔が、絶望に染まるところは、\\n とても愉快で、胸がすく思いだった」",
"501000141_171": "「しかし、その世界は既に枯れていた。\\n 大して腹の足しにはならなかった」",
"501000141_172": "「だから、次の世界に向かった。\\n 『大喰らい』を送り込んできた、侵略者たちの世界へ」",
"501000141_173": "「そこも、簡単に食い終わった。\\n だけど、それでも腹は満たされなかったから――」",
"501000141_174": "「手当たり次第に、\\n <ruby=あの子>世界蛇</ruby>と共に、世界を喰らった」",
"501000141_175": "「食えば食うほどに、\\n そう、癖になっていった」",
"501000141_176": "「今なら、\\n わたしに石を投げていた奴らの気持ちが、よくわかる」",
"501000141_177": "「悪意を振りかざすのは楽で、我慢する必要なんてなくて……\\n そこに返ってくる感情は、とても、美味しかったから」",
"501000141_178": "「数百年……、\\n いえ、数千年も経った頃だったかしら」",
"501000141_179": "「わたしに仕えると言った男が、\\n いつの間にか『ウロボロス』なんて組織を作っていた頃」",
"501000141_180": "「『スクルド』とかいう連中が、\\n わたしの前に立ち塞がった」",
"501000141_181": "「どうやら、\\n わたしが元いた世界に由来する者がいたらしい」",
"501000141_182": "「自分自身の祈りも呪いも持たずに、\\n わたしと世界蛇を倒すことだけを教えられた自動人形――」",
"501000141_183": "「そして、『歌の力を信じなさい』なんて妄言を、\\n 吐きながら立ち向かってくる人間――」",
"501000141_184": "「徒党を組んでいるだけで、\\n まるで、かつての<ruby=祈りの巫女>わたし</ruby>を見ているようだった」",
"501000141_185": "「わたしが相手をするほどでもなかったから、\\n 『ウロボロス』に全て任せたのだけど――」",
"501000141_186": "「あら。\\n 随分と手酷くやられたものね」",
"501000141_187": "「……申し訳ありません。\\n 不覚を取りました」",
"501000141_188": "「スクルドの『マスター』とやらは、\\n どうにか葬ったようだけど――」",
"501000141_189": "「相打ちでやられているようでは、\\n まったく世話ないわね」",
"501000141_190": "「どう?\\n 自分の無能さが、よくわかったでしょう」",
"501000141_191": "「何もできないまま死んでいく自分に、\\n 絶望したでしょう」",
"501000141_192": "「もう諦めなさい。\\n 楽にしてあげるわ」",
"501000141_193": "「……いいえ。\\n 私は、あなたの『絶望』には、まだ足りない」",
"501000141_194": "「ですから、\\n ここで終わるわけには、いきません」",
"501000141_195": "「……そう。\\n 往生際が悪いのね」",
"501000141_196": "「そこまでして、\\n わたしの目指す『絶望』を、見たいというのなら――」",
"501000141_197": "「こんなところで野垂れ死んでいる場合では、\\n ないでしょう」",
"501000141_198": "「仰る、通りです……」",
"501000141_199": "「……そうよね。\\n だから、この力を試してあげるわ」",
"501000141_200": "「ぐぅッ……!?」",
"501000141_201": "「わたしの……あの子の、力の一部をあげる。\\n 耐えきれなかったらそれまでだけど」",
"501000141_202": "「精々生き残れるように、頑張りなさい」",
"501000141_203": "「……はい。\\n ありがとう、ござい、ま……ぐぁぁッ」",
"501000141_204": "「……ああ、それと。\\n これからも、わたしの<ruby=かたわら>傍</ruby>に仕えるつもりなら」",
"501000141_205": "「何か名前を考えておきなさい。\\n そうね、呼びやすいものがいいわ」",
"501000141_206": "「かつて、わたしを呼ばなかったものとは\\n 別のものよ。いいわね」",
"501000141_207": "「……畏まりました」",
"501000141_208": "(……私の名、アルヴィース。\\n 『全てを知る者』などと、誰が言ったか……",
"501000141_209": "(巫女様の……\\n いいえ、かつての、ベアトリーチェ様の苦悩を知ろうともせず ",
"501000141_210": "(受けた恩も何一つ返せぬ男の、何が……ッ!)",
"501000141_211": "(――)",
"501000141_212": "(だが、私が聞いたことのある、この名の元の持ち主は――\\n 光に焼かれ、石になったという",
"501000141_213": "(……なら、私は――)",
"501000141_214": "「…………」",
"501000141_215": "「歌の力を信じなさい。\\n 歌には人の想いが、可能性が詰まっている」",
"501000141_216": "「それは誰かを慈しむ心、護ろうとする魂の輝き。\\n 歌は生命そのものなんだよ……」",
"501000141_217": "「例え世界が、星が滅んだとしても、\\n そこに生き続けた者たちの想いは、歌に残る――」",
"501000141_218": "「だから『諦めるな』などと……\\n よくも、わたしにまで言えたものだわ」",
"501000141_219": "「――『<ruby=スクルド>希望</ruby>』を謳った者たちよ、\\n 知っていて」",
"501000141_220": "「どれだけ、祈るように言葉を紡いでも、\\n 想いは届かない」",
"501000141_221": "「<ruby=わたし>絶望</ruby>に塗り潰された『フィーネの魂』が、\\n 叫び、嘆いていたような気がするわ」",
"501000141_222": "「バラルの呪詛……、\\n きっと、それのせいなんでしょうね」",
"501000141_223": "「けれど、不思議なものね。\\n そんな呪詛が存在していたおかげで――」",
"501000141_224": "「遍く世界に満ちる絶望を、\\n わたしとこの子は、腹に収め続けていける」",
"501000141_225": "「で、あるならば。\\n 呪いとは――」",
"501000141_226": "「わたしたちにとって、祝福なのよ」"
}