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"397000811_0": "行き詰まった道",
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"397000811_1": "「す……すごいッ!",
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"397000811_2": " あっという間に本部までひとっ飛びッ!」",
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"397000811_3": "「戻られましたかッ!\\n お2人とも、無事でよかったです」",
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"397000811_4": "「それはこっちのセリフですッ!\\n 立花響、ただいま帰還しましたッ!」",
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"397000811_5": "「でも、どうして並行世界のキャロルちゃんが?」",
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"397000811_6": "「オレの世界でもこっちと同様、怪物の……ドッペルゲンガーの\\n 襲撃があってな。この世界の様子を見に来たんだ」",
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"397000811_7": "「幸いにも、APPLEの技術――\\n 新型デュプリケイターがオレの世界にも<ruby=もたら>齎</ruby>されていたからな」",
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"397000811_8": "「こちらの方が襲撃が激しいのがわかると、\\n 僕たちへの協力を申し出てくれまして」",
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"397000811_9": "「各地に散らばっていた装者の皆さんを、\\n 迎えに行っていただいてるんです」",
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"397000811_10": "「キャロルちゃんの世界まで……」",
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"397000811_11": "「そんな状況なのに、手を貸してくれたんだ……。",
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"397000811_12": " 改めて、ありがとう」",
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"397000811_13": "「オレの世界の連中は、\\n 一昼夜で折れるほどヤワじゃない」",
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"397000811_14": "「それに……ずっと借りっぱなしでは、気が済まない。\\n 利子が膨らむ前に返しておきたかっただけだ」",
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"397000811_15": "「フフフ……キャロルちゃんってば。\\n そんなこと言って、心配してくれてるんでしょ?」",
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"397000811_16": "「……フン。\\n 好きに考えろ」",
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"397000811_17": "「うんッ!\\n 好きに考えておくッ!!」",
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"397000811_18": "「では……申し訳ありませんが、\\n 引き続き装者の迎えをお願いできますか?」",
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"397000811_19": "「やると言ったからには、足にでもなんでもなってやるがな。",
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"397000811_20": " 今回だけだぞ、こんなことをしてやるのは」",
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"397000811_21": "「もちろんです。\\n この御恩は、いずれ必ず」",
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"397000811_22": "「うんうんッ! すっごく心強いよッ!\\n いざという時、持つべき友はキャロルちゃんだねッ!」",
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"397000811_23": "「本当は、いつ本部に戻れるか不安だったの。\\n キャロルちゃんが来てくれて、ホッとしたんだよ」",
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"397000811_24": "「いや、だから、オレは有言実行をしているまでで……",
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"397000811_25": " ええい、調子が狂うッ!」",
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"397000811_26": "「と、とにかくッ!\\n オレは次の装者の回収に向かうからなッ!」",
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"397000811_27": "「ああ、行っちゃった……」",
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"397000811_28": "「戻ってきたら、また会えるよ。\\n 今度は平和な時に来てもらいたいね」",
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"397000811_29": "「そうしたら、ふらわーにも連れて行きたいなぁ。\\n キャロルちゃん、お好み焼きなんて食べたことないだろうし」",
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"397000811_30": "「美味しくってほっぺた落ちちゃうかも」",
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"397000811_31": "「フフ、喜んでくれるといいね」",
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"397000811_32": "「戻ったようね」",
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"397000811_33": "「お2人とも、無事でよかったです」",
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"397000811_34": "「マリアさん、調ちゃん……ッ」",
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"397000811_35": "「こんにちは、響先輩、未来先輩ッ!",
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"397000811_36": " あたしも助太刀に来ましたよッ!」",
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"397000811_37": "「明日香ちゃんに茶蔵さんまでッ!?」",
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"397000811_38": "「お2人のおかげで、\\n 被害が最小限で済みました」",
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"397000811_39": "「そうだったんですか。\\n いざという時に本部にいられず、すみません……」",
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"397000811_40": "「任務と救助活動だったんでしょう?\\n 仕方ないわ」",
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"397000811_41": "「連絡が取れないままだったから、心配しました」",
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"397000811_42": "「わたしたちは平気だよッ。それより、2人こそ大丈夫ですか?",
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"397000811_43": " ギアがどうにかなっちゃったって聞いたけど……」",
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"397000811_44": "「その件も含めて、一度情報共有をしましょうか。\\n あなたたちの情報も合わせて、今後の方針を検討したいわ」",
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"397000811_45": "「わかりましたッ!\\n わたしからも、話したいことがいっぱいありますッ!」",
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"397000811_46": "「そう……\\n あなたたちも、あの連中に会っていたのね」",
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"397000811_47": "「まさか、本部にも現れていたなんて……ッ!」",
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"397000811_48": "「あの人たちは、響を前から知っていたような……\\n ううん、この世界を、ずっと観察していたような口ぶりでした」",
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"397000811_49": "「ええ。\\n どうやら、入念に襲撃の準備を整えていたようね」",
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"397000811_50": "「各場所の襲撃時間を考えるに、あの空間の亀裂による移動に、\\n 空間座標の縛りはないようですね」",
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"397000811_51": "「新型デュプリケイターとは違い、まさに神出鬼没……。",
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"397000811_52": " なかなか厄介な移動手段だわ」",
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"397000811_53": "「あとは……明日香ちゃんが見た感じだと、\\n 奪われた想い出はどこか別の場所に流れてるんだよね?」",
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"397000811_54": "「はい。その先がどこかまでは追えないので、\\n 別の並行世界なのかもです。お役に立てず、すみません」",
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"397000811_55": "「ううん、その話を聞けただけで十分だよッ!」",
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"397000811_56": "「どこかに集めてるっていうことは、\\n 元の人に返してあげることもできるかもしれないもんッ!」",
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"397000811_57": "「確かに……",
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"397000811_58": " そう考えると、希望が湧きますねッ!」",
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"397000811_59": "「うんッ!\\n だから、わたしはあの子たちにもう一度会わなくちゃ」",
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"397000811_60": "「奪った想い出を返して、と言ったところで、\\n 素直に返してくれる手合いでもなさそうなのが問題ね」",
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"397000811_61": "「それでも、まずは話をしたいです。",
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"397000811_62": " わかり合える道もあるって……信じたいんです」",
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"397000811_63": "「……そうだといいのだけど」",
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"397000811_64": "「忘れるな……その呪われた力が、\\n お前たちに返ってくる時が来たッ!」",
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"397000811_65": "(あの言葉……呪われた力がわたしたちに返ってくるとは、\\n どういうこと?)",
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"397000811_66": "(いったい、なにを目的にこんなことを……)",
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"397000811_67": "「こ、困ります、どうかここでお待ちを――」",
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"397000811_68": "「そんな、すっとろいことを言ってる場合じゃないだろうッ!」",
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"397000811_69": "「なんだか廊下が騒がしいような……」",
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"397000811_70": "「この声は、まさか――」",
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"397000811_71": "「邪魔するよ」",
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"397000811_72": "「「環さんッ!?」」",
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"397000811_73": "「頭数が少ないね。\\n 他の連中はどうした?」",
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"397000811_74": "「申し訳ありません、お止めしたのですが……」",
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"397000811_75": "「いえ、構いません。\\n 協力体制がとれる相手は多い方がいいです」",
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"397000811_76": "「ん……今はあんたが仕切ってんのかい?",
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"397000811_77": " あいつはどうした?」",
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"397000811_78": "「司令とは連絡が取れない状況です。\\n 他の装者は、協力者の助けを借りて間もなく合流できるかと」",
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"397000811_79": "「そうかい……。しかし、この状況、\\n 嫌な予感が当たっちまったみたいだね」",
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"397000811_80": "「大地震に続いての、得体のしれない化け物の出現……。\\n 一連の流れは、誰かが手引きしてるんだね?」",
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"397000811_81": "「お察しの通りです」",
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"397000811_82": "「おまけに、敵は自ら作り出した<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>を餌に\\n 装者をおびき出し、世界中に分散させていました」",
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"397000811_83": "「その隙に本部を襲撃され、\\n 通信設備を中心に被害は甚大です」",
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"397000811_84": "「装者の不在状況を作り出されて、\\n まんまとしてやられたってわけか」",
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"397000811_85": "「しかし、<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>だって……?\\n 随分とまぁ、ふざけたものを作ってくれるね」",
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"397000811_86": "「おい、お前たちッ!」",
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"397000811_87": "「へい、姐さんッ!」",
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"397000811_88": "「なんでしょうか?」",
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"397000811_89": "「さっさと復旧作業に入るよッ!\\n 終わるまで寝られないものと思いなッ!」",
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"397000811_90": "「ご助力いただけるのですか?」",
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"397000811_91": "「アタシらはアタシらの仕事をする。\\n あんたも自分の務めを果たしな。今はあんたが頭なんだろ?」",
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"397000811_92": "「――ありがとうございます」",
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"397000811_93": "「環さんがいれば、百人力ですッ!」",
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"397000811_94": "「フッ、おだてたってなにも出ないよ」",
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"397000811_95": "「それじゃあ、全部終わったら、一緒にご飯でも行きましょうッ! \\n わたしの行きつけの店にご案内しますッ!」",
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"397000811_96": "「フッ……ああ、楽しみにしてるよ」",
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"397000811_97": "「ふらわーのおばちゃん、\\n 大忙しになりそう……」",
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"397000811_98": "「うーん……\\n ううううーん……」",
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"397000811_99": "「どうかしたの、明日香ちゃん?」",
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"397000811_100": "「なにもしないっていうのが、どうしても落ち着かなくって……。",
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"397000811_101": " よしッ! あたしと師範で、買い出しに行ってきますッ!」",
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"397000811_102": "「買い出し……?」",
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"397000811_103": "「響先輩たちは、遠方から帰ってきたばかりで疲れてますし、\\n いざという時のために、身体を休めるべきですッ!」",
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"397000811_104": "「それに、お腹が空いてませんか?」",
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"397000811_105": "「言われてみれば……\\n お腹と背中がくっつきそうかも……」",
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"397000811_106": "「ですよねッ!\\n 響先輩の好きそうなもの、たくさん買ってきますッ!」",
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"397000811_107": "「それじゃあ……お願いしちゃおうかな?」",
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"397000811_108": "「まっかせてくださいッ!",
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"397000811_109": " ほら、行きますよ、師範ッ!」",
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"397000811_110": "「あぁ? なんで俺が……」",
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"397000811_111": "「荷物持ちですよッ! 師範だってたくさん食べるんですから、\\n 文句言わないでくださいッ!」",
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"397000811_112": "「……仕方ねぇな」",
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"397000811_113": "「と、いうわけなので、水流明日香、\\n 買い出しに行ってきまーすッ!」",
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"397000811_114": "「行っちゃった……」",
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"397000811_115": "「すごい行動力……。",
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"397000811_116": " さすがは明日香ちゃん」",
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"397000811_117": "「実際、そういうところに意識を割くのがおろそかに\\n なっていたわね。腹が減ってはなんとやら、とも言うし」",
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"397000811_118": "「……決して、楽観視をするつもりではないのだけれど」",
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"397000811_119": "「こんなにも多くの仲間が手を貸してくれるなら、この先に\\n あるのは不確かな<ruby=みらい>未来</ruby>じゃなく、みんなで掴む明日、よね」",
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"397000811_120": "「はいッ! 手を繋いだみんなが力を貸してくれるなら、\\n どんな危機だって切り抜けられる――いつもと同じですッ!」",
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"397000811_121": "「そして、あの2人……キョウちゃんやヨウちゃんとも、\\n きっと、手を繋げるって、わたしは信じます」",
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"397000811_122": "「だから……この手を伸ばすことを、\\n 絶対に諦めませんッ!」",
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"397000811_123": "「う……」",
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"397000811_124": "「――無駄な抵抗をするから、そうなるんです」",
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"397000811_125": "「あなたたちは……なにが目的なのですか?」",
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"397000811_126": "「そんなこと、あなたに教える必要がありますか?\\n 仮に願ったとして、拒絶されることがわかっているのに?」",
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"397000811_127": "「わたしたちとあなたたちは、\\n どこまで行っても通じ合えない『他人』――」",
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"397000811_128": "「他人同士がわかり合える<ruby=みらい>未来</ruby>なんて、いつまでも来ない。\\n そんなもので救えるほど、わたしたちの絶望は浅くない」",
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"397000811_129": "「――誰かの善意が、正義が、\\n 他の誰かを地獄に突き落とすことだってあるんですよ」",
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"397000811_130": "「……私には、確かにあなたの求めることがわかりません。\\n けれど、あなたが何かを諦めてしまっていることだけはわかります」",
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"397000811_131": "「……ハ。",
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"397000811_132": " 知ったような口を、偉そうに」",
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"397000811_133": "「いいんですよ、理解なんてしなくたって。\\n わたしたちも、あなたたちを知ろうとは思わない」",
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"397000811_134": "「手を繋げばお友達、なんていうおとぎ話では\\n 救えないくらい――」",
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"397000811_135": "「わたしたちの世界は、\\n どうしようもなく行き詰まっているのですから」"
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