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"399001111_0": "また明日、可能性の世界へ",
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"399001111_1": "「現地の組織が徹底的に探してくれたけど、\\n ソロモンの杖らしき聖遺物はどこにも見つからなかったわ」",
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"399001111_2": "「こちらの調査でも同様だ。\\n 砕けて散ったか、再構築の際に消えてなくなったか」",
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"399001111_3": "「最後の瞬間、オレたちが完全に破壊したはずだ。",
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"399001111_4": " だが……」",
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"399001111_5": "「人の殺意の籠った歌が、\\n 眠っていた聖遺物を励起させ、その場の想い出と溶けあった」",
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"399001111_6": "「故にこそ、その存在は単一となり、意志を持つに至った。\\n 聖遺物を器にして、な」",
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"399001111_7": "「そして、『ソロモンの杖』として砕いたけれど、\\n この世から消え去ったわけではない…」",
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"399001111_8": "「ああ、そうだ。\\n あれもまた、紛れも無く、人を作っていた心だったからな」",
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"399001111_9": "「杖自体は……修復された世界と同じように巻き戻って、\\n 元々あった場所に戻っている可能性は?」",
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"399001111_10": "「杖は戻っていなかったよ、友の墓にはね。\\n 彼が眠っているだけさ、何も変わらずに」",
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"399001111_11": "「とすれば……この世界のソロモンの杖は、\\n 完全に失われたと考えるべきか」",
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"399001111_12": "「バビロニアの宝物庫からノイズが漏れ出す理屈は不明瞭よ。\\n 対抗策がなくなったのはちょっと面倒かもね」",
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"399001111_13": "「何かのきっかけで再び門が開けば、\\n 永劫に閉じることはできないだろう」",
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"399001111_14": "「ノイズと永遠に戦い続けるワケダね」",
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"399001111_15": "「その時はソロモンの杖が残っている世界に\\n お願いして借りる……とか?」",
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"399001111_16": "「……。\\n ソロモンの杖が、感化されていたように」",
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"399001111_17": "「誰もが他者の善意を信じられるわけじゃないわ。\\n 気軽に貸してはくれないでしょうね」",
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"399001111_18": "「……」",
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"399001111_19": "「例え杖があったところでノイズへの警戒は必要だろう。\\n アルカ・ノイズを含め、継続して対策していくだけだ」",
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"399001111_20": "「いままでと変わらず対処する。\\n それだけのことさ」",
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"399001111_21": "「異論はないよ、キミの結論にね。\\n こちらでも研究を進めさせよう、根本的なノイズ対策の」",
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"399001111_22": "「分解された民間人の方はどう?\\n こっちは門外漢だし、協会に任せきりだったけれど……」",
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"399001111_23": "「無事に人間への再構築が完了している。\\n ノイズになっていた時の記憶は、残っていないようだがな」",
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"399001111_24": "「さすがね。よかったわ。\\n 記憶も残っていたらトラウマもの、いっそ幸運だったわね」",
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"399001111_25": "「ならば……残る問題はドラウプニルか。\\n 放置しておくには余りにも危険な力だ」",
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"399001111_26": "「無論、可能な限り厳重な管理を行う」",
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"399001111_27": "「二課と錬金術師協会が共同で、\\n 科学と錬金術の双方を用いての封印を行うわ」",
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"399001111_28": "「これなら封印の解除はできないからね、\\n 片方の組織の独断では」",
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"399001111_29": "「甘さを捨てられない二課に、すぐにはぐれを出す錬金術師協会。\\n どちらか一方に任せなかったのは悪くない判断だ」",
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"399001111_30": "「手厳しいね。相変わらず。",
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"399001111_31": " だが、信じてもらえるよう前に進むさ、統制局長としてね」",
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"399001111_32": "「……カリオストロ、\\n 最後に使った術式を覚えているか?」",
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"399001111_33": "「あーしの愛で世界を救っちゃった、\\n あの錬金術のことよね?」",
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"399001111_34": "「愛かはさて置き、その件だ。\\n 再び再現することは可能なのか?」",
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"399001111_35": "「これでもあなたの見出した錬金術師よ?\\n 土壇場のでっち上げでも、1度成功した術を忘れたりしないわ」",
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"399001111_36": "「もちろんドラウプニルか、\\n その複製の力は必要だけどね」",
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"399001111_37": "「ならば、そちらも封印だ。\\n この力は、易々と人間が振るって良いものではない」",
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"399001111_38": "「そんなに怖い顔をしなくてもわかってるわよん。",
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"399001111_39": " ……やっぱりドラウプニルの力が怖い?」",
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"399001111_40": "「――いいや、そうではない」",
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"399001111_41": "「この世界に生きる者の奮起がなければ、\\n 並行世界の支援がなければ……」",
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"399001111_42": "「この世界は滅んでいたかもしれない、それは事実だ。\\n だが……」",
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"399001111_43": "「可能性とは本来、神の力添えなしに、\\n 人こそが切り開いていくべきものだからだ」",
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"399001111_44": "「……フフッ!\\n ええ、その通りねッ!」",
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"399001111_45": "「もしも、また不届き者の手に\\n ドラウプニルが渡る<ruby=みらい>未来</ruby>があったとしても――」",
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"399001111_46": "「その時はまた、止めるだけのことだ。\\n 今よりもさらに前へと進んだオレたちがな」",
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"399001111_47": "「そういうことね。\\n あーしの愛は無限なんだから」",
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"399001111_48": "「存外、新しい身体も馴染みがいいワケダ。\\n その時にはついでにまた身体を乗り換えさせてもらうワケダ」",
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"399001111_49": "「フ……そうだな。\\n 次があれば、その時は今回のような不覚はとらないと誓おう」",
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"399001111_50": "「その時代の人間がなんとかする、\\n とは言わないところが錬金術師ね」",
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"399001111_51": "「みんな長生きで頼りになりますねッ!」",
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"399001111_52": "「長生き、なんて言葉で表現していいのかしら……」",
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"399001111_53": "「それを言うのかい。\\n キミが」",
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"399001111_54": "「え?」",
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"399001111_55": "「フ。\\n ――独り言さ」",
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"399001111_56": "「報告はこのぐらいだな。\\n では、アダム局長」",
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"399001111_57": "「よろしく頼むよ、今後もね。",
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"399001111_58": " 僕は期待しているんだ、誰よりも人間らしいキミたちに」",
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"399001111_59": "「同じ志を持つ人間からの信頼だ。\\n 必ず応えるとも」",
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"399001111_60": "「……それは嬉しい言葉だね、僕にとっては」",
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"399001111_61": "「キャロルちゃん、キャロルちゃんッ!\\n 帰る前に、ちょっとだけお話してもいいかな?」",
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"399001111_62": "「立花響か……。",
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"399001111_63": " まあ、聞くだけは聞いてやる」",
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"399001111_64": "「良かったッ!",
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"399001111_65": " キャロルちゃん、あの時、助けてくれてありがとう」",
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"399001111_66": "「……礼を言いに来たのか?\\n お前を死地へと走らせたこのオレに?」",
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"399001111_67": "「キャロルちゃんがわたしと手を繋いでくれたから、\\n 最後まで諦めずに、希望へ手を伸ばすことができたんだよ」",
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"399001111_68": "「わたし、身体が崩れていったあの時……確かに怖かった。\\n 怖かったのも、前に進みたかったのも、どっちも本当」",
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"399001111_69": "「でも、キャロルちゃんが隣にいてくれた。\\n いつか、繋げなかった手を、わたしと繋いでいてくれた」",
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"399001111_70": "「本当に、ありがとう」",
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"399001111_71": "「……感謝など必要ない\\n オレはオレ自身のために、適切な術を行使しただけだ」",
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"399001111_72": "「またそんな言い方で……」",
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"399001111_73": "「……あらゆる可能性の中には、過去・現在・<ruby=みらい>未来</ruby>全てに、\\n オレが奇跡の殺戮者となった特異点があったのだろう」",
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"399001111_74": "「キャロルちゃん……\\n ううん、そんなこと、何があったってさせな――」",
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"399001111_75": "「そうだ。オレはもう、それを二度と選ばない。\\n だからこそ――」",
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"399001111_76": "「――オレの方こそ、お前に礼を言うべきだった。\\n 本当は、もっと早くに」",
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"399001111_77": "「え……ッ!?\\n キャロルちゃん、それって……」",
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"399001111_78": "「――ッ!!」",
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"399001111_79": "「や、やめろッ!\\n 腹の立つ顔で寄ってくるなッ!」",
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"399001111_80": "「そもそも、お前は何も気にならないのか?\\n ドラウプニルの力を目にしておいて……」",
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"399001111_81": "「えっと……すごい聖遺物だとは思ったけど。\\n 何か心配なことがあるの?」",
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"399001111_82": "「……いや、確証のないことだ。\\n 気づいていないのなら、お前に話しても意味はない」",
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"399001111_83": "「ええーッ!?\\n 教えてよッ!」",
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"399001111_84": "(並行世界の立花響。\\n お前の世界にもオレは存在したと聞く)",
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"399001111_85": "(並行世界、『可能性』の世界。\\n その存在はオレも予期していた)",
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"399001111_86": "(しかしドラウプニルという本物を複製する聖遺物を目にして、\\n 1つの可能性に行き当たった)",
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"399001111_87": "(ドラウプニルを手にした人間は、誰もその力を使わなかった。\\n アダムはそう言っていた)",
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"399001111_88": "(だが人間ではなく、\\n 神が使っていたとしたら……?)",
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"399001111_89": "(ドラウプニルの本来の用途は、\\n 数多の並行世界を作り出すことだったのではないか?)",
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"399001111_90": "(だとすればドラウプニルの存在するこの世界が『本物』なのか?\\n それとも観測者たるギャラルホルンの存在する世界か?)",
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"399001111_91": "(もしくは真の意味で『本物』の世界が存在し、\\n 他の世界は全て複製された可能性もある)",
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"399001111_92": "(オレの世界もお前の世界も『本物』ではない。\\n そんな可能性すら否定できない……)",
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"399001111_93": "「お、教えてよキャロルちゃん。このままじゃ気になって、\\n ご飯の時間にしかご飯が喉を通らないよッ!」",
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"399001111_94": "(――だが、大した意味のないことだ。\\n こんな考えは)",
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"399001111_95": "「お前と食事をとったことなどないが、\\n それでも嘘だとわかるような戯言を言うな」",
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"399001111_96": "「ええーッ!?」",
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"399001111_97": "(もはやこの世界も、それぞれの並行世界も、\\n 神の手を離れて歩き出している)",
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"399001111_98": "(それは、全ての世界が――全ての人の想いが\\n 本物だということに他ならないのだから)",
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"399001111_99": "(オレはこの世界を識ろう。そしてあまねく並行世界を識ろう。\\n それがパパの遺した命題――そして)",
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"399001111_100": "(オレ自身が、\\n 幾らでも拓いていける可能性なのだから)"
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