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{
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"391000721_0": "時間は少しばかり遡り――",
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"391000721_1": "「色んな種類のアイスがあるね。\\n ギンくん、何味のアイスが食べたい?」",
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"391000721_2": "「…………」",
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"391000721_3": "「……ギンくん?」",
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"391000721_4": "「ねえ、ミクお姉ちゃん。\\n ヒビキお姉ちゃんと喧嘩しちゃったの?」",
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"391000721_5": "「えッ!?",
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"391000721_6": " ……ヒビキから、聞いたの?」",
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"391000721_7": "「ううん、聞いてないよ。\\n でも、見てたらわかるよ」",
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"391000721_8": "「そっか……」",
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"391000721_9": "(わからないようにしていたつもりだったけど、\\n よっぽど顔に出てたのかな……)",
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"391000721_10": "「えっとね。\\n わたしたちは、喧嘩をしてるんじゃないよ」",
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"391000721_11": "「ただ、少しだけ……\\n わからなくなっちゃっただけなんだ……」",
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"391000721_12": "「違わないったら。\\n ヒビキなら大丈夫だよ。だってヒビキは響だもの――」",
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"391000721_13": "「違うよッ!」",
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"391000721_14": "「わたし、ヒビキが……\\n <ruby=ふたり>響</ruby>が大事にしていること、わかるはずなのに……」",
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"391000721_15": "「なんて言ったら、\\n 伝わったのかな……」",
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"391000721_16": "「わたし……、\\n どうしたら、いいんだろ……」",
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"391000721_17": "「ミクお姉ちゃん……」",
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"391000721_18": "「――って、ごめんねッ!?",
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"391000721_19": " ギンくんにこんなこと話すなんて……」",
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"391000721_20": "「えっと……あのね。\\n ぼく、ミクお姉ちゃんと一緒にアイスを食べるの、楽しいよ」",
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"391000721_21": "「でもね、ヒビキお姉ちゃんとは一緒に食べたことない。\\n マリアお姉ちゃんとも、食べたことないよ」",
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"391000721_22": "「きっと楽しいだろうなぁって思うけど……」",
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"391000721_23": "「まだ、ヒビキお姉ちゃんやマリアお姉ちゃんが\\n どんな味が好きかもわかんないんだ」",
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"391000721_24": "「え……」",
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"391000721_25": "「ヒビキお姉ちゃんは何味のアイスが好きかな?\\n パチパチするやつかな? それとも果物のやつかな?」",
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"391000721_26": "「え、ええと……。\\n 響が好きな味ならわかるけど、ヒビキが好きな味は……」",
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"391000721_27": "「アハハ、変なのーッ!\\n わかるのに、わからないの?」",
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"391000721_28": "「う、ううん、違うのッ!\\n 音は……名前は同じなんだけど、響とヒビキ、2人いてね?」",
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"391000721_29": "「よく似てるんだけど、違ってて。\\n わたしにとっては、2人とも大事なんだけど……」",
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"391000721_30": "「ミクお姉ちゃんにとっては、\\n どっちの『ひびきお姉ちゃん』が一番大切なの?」",
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"391000721_31": "「えッ!?」",
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"391000721_32": "(わたしが一番大切に思っているのは……響。\\n それは間違いない……)",
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"391000721_33": "(でも、ヒビキのことも、大切に思ってる。\\n それも、間違いない……)",
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"391000721_34": "(でも、それはヒビキが『響』だからじゃない。\\n わたしは、ヒビキとして……)",
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"391000721_35": "(だから、どっちかなんて――)",
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"391000721_36": "「すごいねッ!」",
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"391000721_37": "「……え?」",
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"391000721_38": "「だって、\\n そんなに悩むってことはさッ!」",
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"391000721_39": "「2人の『ひびきお姉ちゃん』を\\n 2人とも、一番大切にしたいってことでしょ?」",
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"391000721_40": "「2人……とも……」",
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"391000721_41": "「…………」",
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"391000721_42": "「……うん。\\n そうッ! そうだよッ!」",
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"391000721_43": "「やっぱりッ!\\n それだけ『ひびきお姉ちゃん』のことが、大切なんだねッ!」",
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"391000721_44": "「うん……」",
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"391000721_45": "(そうか……。\\n それで良かったんだ)",
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"391000721_46": "(わたしにとっては、\\n 響も、ヒビキも、大切)",
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"391000721_47": "(でも、響を大切に想う気持ちを、\\n そのままヒビキに当てはめたらいけない)",
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"391000721_48": "(だってわたしは、\\n まだヒビキの好きなアイスの味だって、知らないから)",
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"391000721_49": "(響と同じかもしれないし、\\n 違うかもしれない)",
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"391000721_50": "(それを今知っているのは、『わたし』じゃないんだ。\\n ヒビキの世界の、<ruby=わたし>未来</ruby>なんだ……)",
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"391000721_51": "(貫きたい想いが、同じだったとしても。\\n ヒビキがそこに至った道程は、きっと響とは違った)",
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"391000721_52": "(ヒビキは、響じゃない)",
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"391000721_53": "(わたし、ヒビキが歩こうとしている道を……、ううん、\\n 今まさに歩いている道を、否定しちゃうところだったんだ――)",
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"391000721_54": "(わたし自身が、向き合わなきゃ。\\n 思い込んで決め付けて、勝手に悩んでちゃ駄目なんだッ!)",
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"391000721_55": "「ね、ギンくん。\\n 待ってる2人に、お土産を買っていこっか?」",
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"391000721_56": "「わあ、きっと2人とも喜ぶよッ!",
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"391000721_57": " でも、何味のアイスを買うの?」",
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"391000721_58": "「うーん……そうだなぁ、",
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"391000721_59": " このお店のアイス、全種類なんてどうかな?」",
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"391000721_60": "「ぜ、全種類ッ!?」",
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"391000721_61": "「うんッ!",
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"391000721_62": " だってわたし、ヒビキの好きなアイスの味、知らないから」",
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"391000721_63": "「だから、全種類買っていって……\\n 何味が好きなのか、訊いてみようと思うんだ」",
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"391000721_64": "「それ、いいねッ!",
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"391000721_65": " でも袋がいっぱいになっちゃうね。持ちきれるかな?」",
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"391000721_66": "「大丈夫だよ。\\n わたしとギンくん、2人で持てば――」",
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"391000721_67": "「ノイズ……ッ!?」",
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"391000721_68": "「しかも、こんなに沢山――ッ!?」",
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"391000721_69": "(どうしよう、これだけの数……。\\n わたし、1人だけじゃ――)",
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"391000721_70": "「ギンくんッ!\\n 急いでここから離れてッ!」",
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"391000721_71": "「う、うんッ!」",
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"391000721_72": "(ギンくんの動きに、\\n ノイズが反応していない――ッ!?)",
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"391000721_73": "(そういえば、最初に襲われたときも、\\n ノイズは、わたしたちだけを狙って襲ってきた……)",
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"391000721_74": "「――それならッ!」",
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"391000721_75": "「ギンくんッ!\\n そのままそこに隠れていてッ!」",
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"391000721_76": "「そんな、ミクお姉ちゃんはどうするのッ!?」",
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"391000721_77": "「わたしはこのまま、\\n ノイズを連れて、ヒビキたちと合流するッ!」",
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"391000721_78": "「後で迎えに来るから、\\n そこに隠れて動かないでねッ!」",
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"391000721_79": "「わ、わかったッ!\\n 気をつけてねッ!」",
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"391000721_80": "(ノイズは人類のみを殺戮するために作られた、\\n 自律兵器……)",
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"391000721_81": "(何をセンサーにしているのかわからないけど、\\n 本来なら、隠れたりしたって無駄なはず……でも……)",
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"391000721_82": "「くッ、考えるのは後ッ!",
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"391000721_83": " このまま、さっきいた場所まで誘導して――」",
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"391000721_84": "「確か……こっちの道で合ってるはずだけど、",
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"391000721_85": " ――いたッ!」",
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"391000721_86": "「ヒビキッ! マリアさんッ!\\n こっちに……ッ!」",
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"391000721_87": "「ノイズに追われているッ!?」",
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"391000721_88": "「待ってて未来ッ!\\n すぐに行くから――ッ!」",
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"391000721_89": "「わたしの攻撃に合わせてッ!」",
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"391000721_90": "「うんッ!\\n やあ――ッ!」",
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||
"391000721_91": "「びっくりするくらい息ぴったりじゃない。",
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||
"391000721_92": " これは、余計なお節介をしちゃったかしら……?」",
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||
"391000721_93": "「ううん、そんなことない。\\n ……ありがとう」",
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||
"391000721_94": "「ギンくんにも、\\n あとでちゃんとお礼を言わなきゃね」",
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"391000721_95": "「うん。でも、油断しないでッ!\\n まだ終わりじゃないッ!」",
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"391000721_96": "「大丈夫ッ!\\n わたしたちが一緒ならッ!」",
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"391000721_97": "「――うんッ!",
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"391000721_98": " 戦おう、一緒にッ!」"
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