113 lines
11 KiB
JSON
113 lines
11 KiB
JSON
{
|
||
"201028311_0": "うまから、オトナ味",
|
||
"201028311_1": "「……んん。\\n (ぽりぽり、もぐもぐ)」",
|
||
"201028311_2": "「……んんん〜ッ!\\n (ぽりぽりぽり、もぐもぐもぐ)」",
|
||
"201028311_3": "「やめられない止まらない、これがオトナ用の\\n 美味というやつデスか……もう1本デスッ!」",
|
||
"201028311_4": "「――はッ!?\\n もう1袋食べてしまったデスッ!?」",
|
||
"201028311_5": "「どうした、素っ頓狂な声あげて……。",
|
||
"201028311_6": " 何かあったのか?」",
|
||
"201028311_7": "「ううッ、クリス先輩……たった今、\\n とんでもなく悲しいことがあったのデスよ……」",
|
||
"201028311_8": "「悲しいこと……?」",
|
||
"201028311_9": "(……いつになく神妙なツラしやがって。\\n こいつのこんな表情、放っておけるわけがないだろ……)",
|
||
"201028311_10": "「話してみるか?\\n あたしだって聞き役くらいのことはできる」",
|
||
"201028311_11": "「クリス先輩……ッ!\\n 聞いてくれるデスかッ!?」",
|
||
"201028311_12": "「なら、それなら……ッ!\\n この袋を見てくださいデス……」",
|
||
"201028311_13": "「ん?\\n なんだよ、これ……」",
|
||
"201028311_14": "「お菓子の……空き袋?\\n ……『旨辛ニボシ』?」",
|
||
"201028311_15": "「そうなんデスよッ! こう、カリッとしたニボシに\\n 絶妙〜ッに辛い寄りの甘辛いタレが絡めてあってデスね……」",
|
||
"201028311_16": "「それは、今日の分、最後の1袋……ッ!\\n 最近のアタシのソウルフードデ――」",
|
||
"201028311_17": "「あーあーあー、みなまで言うなッ!\\n 心配したあたしがアホだったッ!」",
|
||
"201028311_18": "「デデデッ!?\\n と、突然どうしたデスかクリス先輩ッ!?」",
|
||
"201028311_19": "「どうしたもこうしたもへったくれもあるかーッ!」",
|
||
"201028311_20": "「はぁ……ったく。\\n 人の気も知らずに気楽なもんだ」",
|
||
"201028311_21": "「……で? お気に入りのおやつがなくなって、\\n だだ凹みしてたってだけか?」",
|
||
"201028311_22": "「だとしたら、\\n どんだけお子様だって話になるけど」",
|
||
"201028311_23": "「ムム……ッ!?\\n それは聞き捨てならないデスよ、クリス先輩」",
|
||
"201028311_24": "「何故ならそのおやつ、『旨辛ニボシ』は\\n オトナの味なんデスからッ!」",
|
||
"201028311_25": "「理由については否定しないのかよッ!?」",
|
||
"201028311_26": "「なーにが『オトナの味』だッ!」",
|
||
"201028311_27": "「どうせまたあいつに食わされたもんが、\\n たまたまうまくてハマったとかだろう」",
|
||
"201028311_28": "「うぐぐッ!」",
|
||
"201028311_29": "「あれ、切ちゃん?\\n クリス先輩も」",
|
||
"201028311_30": "「調ッ!」",
|
||
"201028311_31": "「切ちゃんは待っててくれるだろうと思ってたけど……\\n クリス先輩までどうしたんですか?」",
|
||
"201028311_32": "「一足お先にメディカルチェックが終わったからな。\\n 帰ろうとしたら、おぼこいのに捕まったってだけだ」",
|
||
"201028311_33": "「捕まったとはなんデスかッ!\\n クリス先輩が声かけてきてくれたデスよッ!?」",
|
||
"201028311_34": "「声かけたのがアホらしくなるくらいのことだったせいで、忘れたな。",
|
||
"201028311_35": " それで――なあ、おまえ」",
|
||
"201028311_36": "「はい……?」",
|
||
"201028311_37": "「あんまりこいつに『オトナ味』とか言ってやるなよ。\\n ブラックコーヒーすら飲めないやつにはハードル高いだろ」",
|
||
"201028311_38": "「ああ、それなら……」",
|
||
"201028311_39": "「フッフッフ……何を隠そう、このアタシ、\\n オトナ味マイスターになりつつあるのデスよッ!」",
|
||
"201028311_40": "「デスので、苦いコーヒーだって、\\n きっと近いうちに飲めちゃうようになるのデスッ!」",
|
||
"201028311_41": "「それは……例えるならデスね、ほろ苦い想い出だって\\n <ruby=わら>微笑</ruby>って楽しめるような――まさに大人のスタイルデスッ!」",
|
||
"201028311_42": "「何言ってんだ……」",
|
||
"201028311_43": "「まぁ、ええと、その。調のおさんどんのおかげなのは\\n 間違いないデスけど……」",
|
||
"201028311_44": "「フフッ」",
|
||
"201028311_45": "「最近、ちょっと渋めだったり、辛めだったり、ほろ苦だったり……\\n そういうお料理も作れるようになりたくて、練習してるんです」",
|
||
"201028311_46": "「もちろん、切ちゃんもわたしもおいしく食べられる程度には\\n 色々と控えめなんですけど……」",
|
||
"201028311_47": "「なるほどな。それでオトナ味……\\n ニボシはその副産物ってとこか?」",
|
||
"201028311_48": "「そうなんです。",
|
||
"201028311_49": " ……あッ! そうだッ!」",
|
||
"201028311_50": "「アタシもピーンときてしまったデスよ、調ッ!」",
|
||
"201028311_51": "「お?」",
|
||
"201028311_52": "「クリス先輩ッ!」",
|
||
"201028311_53": "「お、おおッ!?」",
|
||
"201028311_54": "「今晩、クリス先輩にも『オトナ味』を\\n 振る舞わせてもらえませんか……ッ!?」",
|
||
"201028311_55": "「わたしや切ちゃんの口に合うだけじゃない、\\n おいしいオトナ味が作れているかどうか……」",
|
||
"201028311_56": "「クリス先輩に判断してほしいんですッ!」",
|
||
"201028311_57": "「い、いや、あたしは――」",
|
||
"201028311_58": "「おやおやデスよ……? クリス先輩、",
|
||
"201028311_59": " 実はオトナ味がわからなかったりするデスか……?」",
|
||
"201028311_60": "「んな……ッ!?",
|
||
"201028311_61": " そ、そんなわけないだろッ!」",
|
||
"201028311_62": "「ダメ、ですか……?」",
|
||
"201028311_63": "「〜〜〜ッ!! わ、わかったよッ!",
|
||
"201028311_64": " わかったからそんな目で見るなッ!」",
|
||
"201028311_65": "「……ッ!」",
|
||
"201028311_66": "「それじゃあ、アタシたちのお部屋に、\\n クリス先輩1名様をご案内デスッ!」",
|
||
"201028311_67": "「仕込みは昨晩終わっているので……",
|
||
"201028311_68": " 少しだけ待っていてくださいねッ!」",
|
||
"201028311_69": "「アタシはやればデキる子デスからねッ!\\n オトナ味まで、きちんと着席して待つデスよッ!」",
|
||
"201028311_70": "「へいへい。殊勝なことで……",
|
||
"201028311_71": " ……ん? なんだ、これ?」",
|
||
"201028311_72": "「ああ、それは調がオトナ味を極めるために集めた、\\n 色んなスパイスとか、唐辛子やらデスよ」",
|
||
"201028311_73": "「蓋を開けただけでも、\\n ふわわわーって辛い香りが漂ってくるデス」",
|
||
"201028311_74": "「あいつがメシにかけてる想いが強いのは、\\n それなりに知ったつもりだったけどよ……」",
|
||
"201028311_75": "「思ったより本格的だな、これは」",
|
||
"201028311_76": "「切ちゃん、クリス先輩、おまたせしましたッ!\\n 今日のおさんどんは、こちらになりますッ!」",
|
||
"201028311_77": "「こ、これは……ッ!?」",
|
||
"201028311_78": "「まさか……食べてる間ずっと、\\n 舌が、ピリピリするという……ッ!?」",
|
||
"201028311_79": "「うん。\\n 担々麺だよッ!」",
|
||
"201028311_80": "「切ちゃんがおいしいって感じてくれる\\n 辛さのラインはわかってるつもりだけど……」",
|
||
"201028311_81": "「クリス先輩が大丈夫って言える、\\n 辛さのラインがわからなくて」",
|
||
"201028311_82": "「ですので、\\n この香辛料たちを使ってあげてください」",
|
||
"201028311_83": "「山椒、唐辛子はもちろん、青唐辛子、\\n 柚子に陳皮、青紫蘇や生姜……」",
|
||
"201028311_84": "「スープも、わたしなりに作りましたけど……",
|
||
"201028311_85": " その上で、クリス先輩好みに加えていただければ」",
|
||
"201028311_86": "「こ、この既に赤いスープに、さらに唐辛子を……\\n 香辛料を足せってのか……ッ!?」",
|
||
"201028311_87": "「こ、これは……とんがらしの瓶も\\n 昨日一昨日よりも増えてる気がするデス」",
|
||
"201028311_88": "「うん、正解。色々種類を増やしたんだ。\\n だから、切ちゃんも好きに加えてみてほしいな」",
|
||
"201028311_89": "「デ……ッ!?」",
|
||
"201028311_90": "「もちろん、2人がおいしいって思えるラインで。\\n 食べ物で遊んだらダメだからね」",
|
||
"201028311_91": "「お、おう、そうだな。食い物で遊ぶのは良くないし……\\n それじゃ――」",
|
||
"201028311_92": "「いただき、ます……(デス)ッ!」",
|
||
"201028311_93": "「いや、これはなかなか、……っぐ。\\n うまい、けど、辛……ッ!!」",
|
||
"201028311_94": "「は、はひぃ……」",
|
||
"201028311_95": "「おいおい、なんだよ。ふー……\\n そっちは、ひー……もう涙目になってないか?」",
|
||
"201028311_96": "「お、おいしさのあまり感動してるデスよ。\\n クリス先輩こそお箸が止まってるデスッ!」",
|
||
"201028311_97": "「これはその、奥深い風味を、\\n じっくり味わうためにだな……ッ!?」",
|
||
"201028311_98": "「…………」",
|
||
"201028311_99": "(か、辛い……ッ!\\n おいしいのに、辛い(デス)……ッ!!)",
|
||
"201028311_100": "「ちょ……ちょっとだけ頭がふわーっとしてきたデスよ。\\n 辛くておいしすぎるとこうなるデスね……?」",
|
||
"201028311_101": "「お、おう、あたしもだ……\\n でもここはオトナ味ってやつを、もう一振り……」",
|
||
"201028311_102": "「へ、へへ……アタシももう少しだけ、\\n この赤いのを足しちゃうデスよ……癖になってきたデス」",
|
||
"201028311_103": "「あの、2人とも……\\n 本当に、ちゃんとおいしいって感じるところで……」",
|
||
"201028311_104": "「いや、本当に本当だ。ちゃんとおいしい。\\n ……旨味、コクがあるって言うのか?」",
|
||
"201028311_105": "「でも、辛いッ!\\n さらに――だが、うまいッ!」",
|
||
"201028311_106": "「完全に同意デスよ……ッ!\\n これが本物の『うまから』なんデスね……ッ!」",
|
||
"201028311_107": "「昨日までのオトナ味より、さらにッ! 今日のアタシは\\n もう一段階オトナの階段を上がったデスよ……ッ!」",
|
||
"201028311_108": "「うまくて、からい……ッ!\\n これが、オトナ味……ッ!!」",
|
||
"201028311_109": "(ふ、2人とも新しい境地に目覚めた顔をしてる……ッ!)",
|
||
"201028311_110": "(でも、次に2人に作ってあげるときは、\\n 追加用の香辛料、もう少し減らしておこうかな……?)"
|
||
} |