96 lines
10 KiB
JSON
96 lines
10 KiB
JSON
{
|
||
"201013911_0": "運命の相手",
|
||
"201013911_1": "「秋といえば読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋ッ!\\n そして、文化祭の秋ッ!」",
|
||
"201013911_2": "「というわけで、わたしたちのクラスは出し物で演劇、\\n シンデレラをやることに決まりましたッ! のはいいけど……」",
|
||
"201013911_3": "「なんでわたしが王子様役なのッ!?\\n セリフの量すごいッ! 全然、覚えられる気がしないよッ!」",
|
||
"201013911_4": "「シンデレラのわたしに比べれば少ないんだから、\\n ちゃんと覚えなきゃダメだよ?」",
|
||
"201013911_5": "「それはわかってるんだけど……。\\n どうしてこうなっちゃったのかな……」",
|
||
"201013911_6": "「どうしてって決まってるじゃない。\\n 2人がシンデレラの絵にバッチリ合うからよッ!」",
|
||
"201013911_7": "「そういえば、シンデレラをやるって決まってから、\\n とんとん拍子で配役が埋まっていったよね」",
|
||
"201013911_8": "「シンデレラはわたしがやることになって、\\n なら王子様は響だ、って感じで……」",
|
||
"201013911_9": "「まあ、シンデレラがヒナなら、\\n 相手役はビッキー以外はありえないから」",
|
||
"201013911_10": "「衣装はわたしが腕によりをかけて作りますので、\\n 期待しててくださいね」",
|
||
"201013911_11": "「そして監督・脚本はこのあたしッ! 培ったアニメの知識を\\n 総動員して完璧にシナリオをアレンジしておいたよッ!」",
|
||
"201013911_12": "「まあ、わたしは2人があんまりやり過ぎないように\\n 見張っとくから。期待してるよ、シンデレラと王子の演技」",
|
||
"201013911_13": "「期待されたらちゃんと応えないとだよねッ!\\n 一緒に頑張ろう、未来ッ!」",
|
||
"201013911_14": "「うん、そうだね。わたしも響となら頑張れそう」",
|
||
"201013911_15": "「よーし、練習始めるぞーッ!」",
|
||
"201013911_16": "「次は王子がシンデレラをダンスに誘うシーンね」",
|
||
"201013911_17": "「お、おお、こんなにも美しいじょ、女性は見たことがない。\\n ぜひ一度、わ、わたしと踊っていただけませんか?」",
|
||
"201013911_18": "「なんかビッキーの動きがカクカクしてるけど大丈夫かな」",
|
||
"201013911_19": "「え、ええっと、お、王子様。わたしでよろしければ喜んで」",
|
||
"201013911_20": "「じゃあ、そのまま踊ってみて。\\n こう、くるくる~って感じでよろしく」",
|
||
"201013911_21": "「……よし。行くよ、未来……」",
|
||
"201013911_22": "「う、うん。響に合わせるから好きに動いて」",
|
||
"201013911_23": "(ど、どうしよう、これくらいの距離、いつものことなのに\\n なんだかドキドキしてきちゃった……)",
|
||
"201013911_24": "(みんなに見られてるから?\\n 響がいつもと雰囲気が違うからかな……)",
|
||
"201013911_25": "「……はい、オッケーッ! 完璧だよッ!」",
|
||
"201013911_26": "「つい見とれてしまいました、さすがですね。\\n ダンスの息もぴったりでした」",
|
||
"201013911_27": "「わたしと未来だもん、当然だよッ!」",
|
||
"201013911_28": "「もう、どこからそんな自信が出てくるの。\\n 合わせるの大変なんだからね」",
|
||
"201013911_29": "「はいはーい、お喋りはあとにして。\\n 次のシーンの練習始めるよー」",
|
||
"201013911_30": "「ふー、夢中で練習してたら、もうこんな時間になっちゃった。\\n クラスのみんなも帰っちゃったし、どうしよっか?」",
|
||
"201013911_31": "「それがね、ダンスしながらのセリフが、\\n なんだか上手くできなくて……」",
|
||
"201013911_32": "「あと少しだけ、付き合ってもらってもいいかな?」",
|
||
"201013911_33": "「もちろんッ! 納得いくまで、何時間だって付き合うよッ!」",
|
||
"201013911_34": "「ありがとう、あんまり遅くならないうちに帰ろうね」",
|
||
"201013911_35": "「よーし、さっそく始めよっか」",
|
||
"201013911_36": "「うんッ! じゃあ最初のステップのところから、\\n お願いしていい?」",
|
||
"201013911_37": "「では……お手をどうぞ」",
|
||
"201013911_38": "「ッ!?」",
|
||
"201013911_39": "「エヘヘ、王子様らしくしてみたんだよッ!」",
|
||
"201013911_40": "「もう、いきなり役に入り込むんだから……。\\n ……こほん。気を取り直して、お願いだよ」",
|
||
"201013911_41": "(……ターンに入る前はまず、ゆっくりと手を広げて……\\n 王子様の腕の中でくるっとして……そしてッ!)",
|
||
"201013911_42": "「今のターン、いい感じだねッ!」",
|
||
"201013911_43": "(ダンスの中で浮かないようにそっとお辞儀をして……)",
|
||
"201013911_44": "「申し訳ありません、踊ったことがなくご迷惑を……」",
|
||
"201013911_45": "(すごい、聞こえてないくらい集中しているんだ。\\n 未来は本当に努力家さんだなあ……わたしも未来に続かなきゃッ!)",
|
||
"201013911_46": "「……いいえ、そんなことはありません。\\n 今この瞬間、あなたと踊れることがわたしにとって――」",
|
||
"201013911_47": "「……ん? ちょっと待ったッ! 足元、気を付けてッ!\\n 机の脚が――」",
|
||
"201013911_48": "「えッ!」",
|
||
"201013911_49": "「……ぎりぎりセーフッ! 転ばなくてよかったよ」",
|
||
"201013911_50": "「ありがとう、響。わたしが注意散漫だったから……\\n ごめんね。本番までにはなんとかしなくちゃ……」",
|
||
"201013911_51": "「未来はすごく集中していたよッ!\\n むしろそれで見えなくなっちゃっていたのかなって」",
|
||
"201013911_52": "「未来は今まで通り、気兼ねなく踊ってッ!\\n わたしが未来を完璧にエスコートしてみせるからッ!」",
|
||
"201013911_53": "「響……」",
|
||
"201013911_54": "「誰とでもじゃない、未来となら、\\n 最高のシンデレラになるって信じてるッ!」",
|
||
"201013911_55": "「おーい、まだ居残りして――」",
|
||
"201013911_56": "「つまり……あなたこそ、わたしの運命の相手ッ!」",
|
||
"201013911_57": "「……」",
|
||
"201013911_58": "「あッ、クリスちゃん。\\n わたしたちも帰るところだから一緒に――」",
|
||
"201013911_59": "「あああッ!?」",
|
||
"201013911_60": "「ああッ、響ッ!?」",
|
||
"201013911_61": "「きゅ、急に叩くなんて酷いよ……」",
|
||
"201013911_62": "「お前ら、人がいないからって、\\n 何をしようとしてんだッ!?」",
|
||
"201013911_63": "「えッ、それは――」",
|
||
"201013911_64": "「言わなくていいッ!\\n とにかく、そういうことは家で――いや、家でもするなッ!」",
|
||
"201013911_65": "「うーん……なんだったんだろう、今の?」",
|
||
"201013911_66": "「……あとでちゃんとクリスに連絡しておこう」",
|
||
"201013911_67": "「待ちに待った文化祭ッ!\\n 端から端まで屋台を巡って食べ尽くすデスッ!」",
|
||
"201013911_68": "「切ちゃん、本来の目的を忘れちゃダメだよ」",
|
||
"201013911_69": "「あのバカの演劇を見に来たんだろ。\\n シンデレラをやるってことだけは聞いたけど」",
|
||
"201013911_70": "「おお、そうだったデスッ!\\n 早く会場に行って、1番前の席を確保するデスッ!」",
|
||
"201013911_71": "「……で、劇の間に食べるものを確保。\\n なんてことをしてる間に時間ギリギリなわけだが」",
|
||
"201013911_72": "「なんだかお客さん多くないデスか?」",
|
||
"201013911_73": "「これよりシンデレラを開演致します」",
|
||
"201013911_74": "「ちょうど始まったみたい。\\n 立ったままになるけど、この辺りで見ようか」",
|
||
"201013911_75": "「シンデレラは舞踏会の会場へとたどり着いたのでした」",
|
||
"201013911_76": "「おお、ついに響王子の出番デス」",
|
||
"201013911_77": "「というか、この劇の監督・脚本は何者だ……?\\n かぼちゃの馬車が馬じゃなくてペガサスになってたぞ」",
|
||
"201013911_78": "「魔女のおばあさんも、魔女っ子になってましたね」",
|
||
"201013911_79": "「でも、城に行くまでに12個の試練を乗り越えるところは\\n 応援したくなったデスッ!」",
|
||
"201013911_80": "「……これ、シンデレラなんだよな?」",
|
||
"201013911_81": "「あッ、2人のシーンですよ」",
|
||
"201013911_82": "「おお、こんなにも美しい女性は見たことがない。\\n 姫。ぜひ一度、わたしと踊っていただけませんか?」",
|
||
"201013911_83": "「はい、王子様。わたしでよろしければ喜んで」",
|
||
"201013911_84": "「うわあ……優雅なダンスを2人が踊ってるデス」",
|
||
"201013911_85": "「素敵なワルツだね。本当の王子様とお姫様みたい」",
|
||
"201013911_86": "「どこの誰か知らないけど、この2人にやらせたのは正解だな。\\n こりゃ、相当な練習量が窺えるレベルだ」",
|
||
"201013911_87": "「申し訳ありません、踊ったことがなくご迷惑を……」",
|
||
"201013911_88": "「いいえ、お気になさらないで」",
|
||
"201013911_89": "「今この瞬間、あなたと踊れることがわたしにとって\\n 至福の時間です」",
|
||
"201013911_90": "「ああ、王子様……」",
|
||
"201013911_91": "「あなたこそ、わたしの運命の相手ッ!」",
|
||
"201013911_92": "「わたしも、同じ気持ちです。\\n 神がいるのなら、この時間が永遠に続くようにと願いたい……」",
|
||
"201013911_93": "(本当に神様がいるのなら。\\n もう少しだけ、響とのこの時間を……)"
|
||
} |