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"201017211_0": "優しい風",
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"201017211_1": "「はい、はい……今からわたしも向かいます。\\n 迎えは必要ありません。では……」",
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"201017211_2": "「……まさか、お父様の墓参りに皆が来てくれるとは。\\n 遅れないようにここを出なければな」",
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"201017211_3": "「……」",
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"201017211_4": "「この部屋、こんなにも狭かったかな。\\n 昔はわたしには広すぎる部屋だと思ったのだが」",
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"201017211_5": "「わたしが成長したのか……。\\n いや、今までいた人がいなくなったからかな」",
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"201017211_6": "「お父様……」",
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"201017211_7": "「らららー、らららー」",
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"201017211_8": "「熱心に練習をしているな、翼」",
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"201017211_9": "「あッ、お父様、申し訳ありません。\\n うるさかったでしょうか……」",
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"201017211_10": "「いいや、そんなことはない。\\n だが、お前はなんのために歌の練習をしているんだ?」",
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"201017211_11": "「歌が好きで、いつか大きなステージに立って、\\n たくさんの人に歌を聴いてもらうのが、わたしの夢です」",
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"201017211_12": "「ならば、お前は風鳴の家を出るのか」",
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"201017211_13": "「え? 家を出るって?」",
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"201017211_14": "「風鳴の名は飾りではない。果たすべき使命があり、役目がある。\\n それはお前も変わらないのだ」",
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"201017211_15": "「果たすつもりがないのなら、\\n 風鳴の名を捨てるしかあるまい」",
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"201017211_16": "「で、でも、家を出るなんて……。\\n お父様、わたしはどうすれば……」",
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"201017211_17": "「他人に決めさせる程度の夢ならば諦めてしまえ」",
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"201017211_18": "「うぅ……」",
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"201017211_19": "「お前も大きくなればわかる。\\n 今、抱いている夢がどれほど小さなものなのかを」",
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"201017211_20": "「わ、わたしはどちらもやってみせます。\\n 風鳴の使命も、歌を唄うことも諦めませんッ!」",
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"201017211_21": "「ならばやってみろ。できるものならな」",
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"201017211_22": "(絶対に、やってみせるッ!)",
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"201017211_23": "「よし、お小遣いで録音のセットも買えた。\\n 家の人たちも用事があっていない」",
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"201017211_24": "「今日からたくさん練習するんだッ!」",
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"201017211_25": "「らららー、らららー」",
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"201017211_26": "「……」",
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"201017211_27": "「あれ? 今、誰かに見られてたような。\\n でも、今日はわたし1人で留守番をしてろって……」",
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"201017211_28": "「気のせい、かな。\\n あーッ! 録音ボタン押しっぱなしだった、止めないと」",
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"201017211_29": "「よし、また最初からッ!」",
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"201017211_30": "「お父様に聴いてもらって、\\n わたしの夢が小さなものじゃないってわかってもらうんだ」",
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"201017211_31": "「フフ、あのときの気配はお父様だったのかもしれない」",
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"201017211_32": "「今ならわかるような気がする。\\n お父様もわたしと似て、不器用なところがあった」",
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"201017211_33": "「厳しい言葉も今思えば、わたしに夢を諦めない、\\n 夢を追う覚悟を教えたかったのだろうな」",
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"201017211_34": "「お父様がくれた、夢を見続けることを恐れるなという言葉。\\n わたしは絶対に忘れません」",
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"201017211_35": "「本当はたくさん言いたいことがありますが、口にはしません。\\n 旅立つあなたを不安になどさせたくないから」",
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"201017211_36": "「ただ、1つだけ伝えなければ……。\\n お父様、風となったあなたに」"
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