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"332000111_0": "呪いの館",
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"332000111_1": "「疲れたねー。今日の練習」",
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"332000111_2": "「ホントホント。\\n 同じとこ何度もやり直しさせてさ」",
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"332000111_3": "「わたし、また音外して怒られちゃった」",
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"332000111_4": "「次の発表会の選考、残れるかな……」",
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"332000111_5": "「気にしてもしゃーないって。\\n なるようになれよ」",
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"332000111_6": "「うん……そうだね」",
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"332000111_7": "「そんじゃ、ストレス発散にタピって帰るとしよっかー」",
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"332000111_8": "「ま、別にストレスなくてもタピるけどね~♪」",
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"332000111_9": "「それな」",
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"332000111_10": "「フフ……」",
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"332000111_11": "「今日こそ品切れ続きの新作フレーバーを――\\n って……あれ?」",
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"332000111_12": "「ん? どうしたの?」",
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"332000111_13": "「あんなとこ、あんな建物あったっけ?」",
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"332000111_14": "「どうだったっけ?」",
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"332000111_15": "「ぜんぜん記憶にないんだよねえ?」",
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"332000111_16": "「それにしても、なんか妙な雰囲気あるね……」",
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"332000111_17": "「うん。確かに、ヤバいの出そう……」",
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"332000111_18": "「も、もうッ! そういうのいいってば」",
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"332000111_19": "「それより、早く行かないと新作フレーバー、\\n また売り切れちゃうよ?」",
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"332000111_20": "「あ、忘れるとこだった」",
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"332000111_21": "「そうね。早く行こ」",
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"332000111_22": "「はあ、憂鬱だなあ……」",
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"332000111_23": "「もう、響の自業自得だよ」",
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"332000111_24": "「だって、まさかこんなに難しいものだとは\\n 思わなかったんだもん……」",
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"332000111_25": "「ひょっとして、これで単位落として留年なんてことに?\\n そうしたら未来と一緒に卒業できないッ!?」",
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"332000111_26": "「その可能性は、捨てきれないかなー」",
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"332000111_27": "「や、やっぱり……」",
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"332000111_28": "「フフ、大丈夫だよ。\\n 難しいところは、手伝ってあげるから」",
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"332000111_29": "「うん……」",
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"332000111_30": "「おっはようさんデースッ!」",
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"332000111_31": "「おはようございます」",
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"332000111_32": "「あ、2人共。\\n おはよう……」",
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"332000111_33": "「れれ? 珍しく元気ないデスね」",
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"332000111_34": "「『珍しく』は流石に失礼だよ、切ちゃん」",
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"332000111_35": "「なんだ、朝っぱらからお通夜みたいな顔して?」",
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"332000111_36": "「うん、ちょっとね……」",
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"332000111_37": "「2人と一緒に来たの?」",
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"332000111_38": "「おう。結局、こいつらに夜中まで付き合わされてな」",
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"332000111_39": "「ああ、そうだったんだ」",
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"332000111_40": "「夜中までって?」",
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"332000111_41": "「昨夜、クリス先輩の家で映画を観てたデスよ」",
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"332000111_42": "「え。何それ、楽しそうッ!?\\n なんで呼んでくれないの?」",
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"332000111_43": "「一応、そっちにも声かけたんだけどな」",
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"332000111_44": "「わたしが断ったの。\\n 響、昨夜は課題の続きやる予定だったでしょ?」",
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"332000111_45": "「そ、それはそうだけど……」",
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"332000111_46": "「課題、ですか?」",
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"332000111_47": "「うん。家庭科の課題で人形を作るってのがあってさ」",
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"332000111_48": "「ににッ!?」",
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"332000111_49": "「でも、授業時間に終わらなくて。\\n 家で続きやってても、ゼンゼン終わる気しないんだよね……」",
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"332000111_50": "「昨夜も、ハサミと針で何度自分の指を傷つけたか……、\\n あいたたた……」",
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"332000111_51": "「ん? 切歌ちゃん?\\n どうしたの、急に青い顔して?」",
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"332000111_52": "「ににに……人形デスと~~ッ!?」",
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"332000111_53": "「うわあッ!? なになにッ!?」",
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"332000111_54": "「そ、その人形って……、\\n まさか血の涙を流したりしないデスよね?」",
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"332000111_55": "「どうどう。\\n 大丈夫だから」",
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"332000111_56": "「血の涙って。\\n いくらわたしだって、そこまで不器用じゃないってば」",
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"332000111_57": "「いや、返り血とかじゃなくてデスね、\\n 人形が目から血をだらだらと流すデスよッ!」",
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"332000111_58": "「ブルブルッ! ああ、思い出しても恐ろしいデスッ!」",
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"332000111_59": "「えーと、どういうこと?」",
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"332000111_60": "「昨夜観たホラー映画の影響だな。\\n その内容が、まあ、なんつーか……」",
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"332000111_61": "「ちょうど、呪いの人形が出てくるやつで……」",
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"332000111_62": "「おおお、また全身に鳥肌が立ってきたデスよー。\\n 血塗れの凶悪な顔がッ、顔がッ! 洋館の窓からニタリとッ!!」",
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"332000111_63": "「ったく。自分が一番見たがってたクセに。\\n オーバーなんだよ、たかが映画くらいで」",
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"332000111_64": "「そう言うクリス先輩も、鑑賞している間、\\n ずっとわたしの腕にしがみついていましたよね?」",
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"332000111_65": "「片方の腕は切ちゃんにしがみつかれていたから、\\n おかげで両腕がまだ赤いままです」",
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"332000111_66": "「そ、それは、お前も怖いだろうと思ってだな……、\\n 先輩の優しい気づかいだよッ!」",
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"332000111_67": "「でも、どうしてそんな怖そうな映画を観ようとしたの?」",
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"332000111_68": "「だって、ぱっと見、面白そうだったデスし……」",
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"332000111_69": "「一応、あたしもその気持ちはわかる」",
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"332000111_70": "「で、その人形っていうのは――?」",
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"332000111_71": "「大丈夫だよ。\\n 人形って言っても、こういうのだから」",
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"332000111_72": "「え?」",
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"332000111_73": "「あ、可愛い」",
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"332000111_74": "「はあー、安心したデス。\\n こういうのならモーマンタイデスよッ!」",
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"332000111_75": "「でしょ?」",
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"332000111_76": "「へー、けっこう上手くできてるな」",
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"332000111_77": "「これって、未来さん?」",
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"332000111_78": "「うん。自分の姿の人形を作るって課題なの」",
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"332000111_79": "「やっぱり」",
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"332000111_80": "「ふーん。あたしらん時は別の課題だったな」",
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"332000111_81": "「で、響さんのはどんなデス?」",
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"332000111_82": "「今、こんなだけど……」",
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"332000111_83": "「うわあ。まだほとんど素材のままデスッ!?」",
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"332000111_84": "「流石に予想外……」",
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"332000111_85": "「同じ時間使って、どうすればこんな差が出るんだよ?」",
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"332000111_86": "「それが……上手に切れなかったり、縫おうとして\\n 生地を破いちゃったり、何度も最初からやり直ししたから……」",
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"332000111_87": "「どうせ馬鹿力で適当やってたんだろ?」",
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"332000111_88": "「それは……否定できない……」",
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"332000111_89": "「大丈夫だよ。最初よりすっごくよくなってるから。\\n 裁断し直しは終わったから、あとは丁寧に縫っていくだけだし」",
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"332000111_90": "「うう……。未来は優しいなあ」",
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"332000111_91": "「よしよし」",
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"332000111_92": "「あー、もうッ! 熱っ苦しいんだよッ!\\n そういうのは家でやれッ!」"
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