{ "386000511_0": "装者と勇者", "386000511_1": "「こらぁー!\\n 逃げるなぁー!」", "386000511_2": "「ヤコちゃんッ!\\n そっち行ったよッ!」", "386000511_3": "「おのれちょこまかとッ!」", "386000511_4": "「ニャニャニャニャッ!」", "386000511_5": "「ええいッ、このままでは埒があかんッ!\\n こうなったら3方向から同時に攻めるぞッ!」", "386000511_6": "「タイミングを合わせて飛び掛かるんだねッ!", "386000511_7": " よーし、3――」", "386000511_8": "「2――」", "386000511_9": "「1――」", "386000511_10": "「ゼロ――ッ!」", "386000511_11": "「ニャァッ!?」", "386000511_12": "「フハハハハッ、ついに捕まえたぞッ!\\n わしの前では、貴様など赤子も同然よッ!」", "386000511_13": "「……その割には、\\n 随分時間がかかったような気がするんだけど」", "386000511_14": "「それは言わないであげましょう」", "386000511_15": "「さあネコハチよッ! 盗んだお上さまを返してもら……", "386000511_16": " んんんッ!?」", "386000511_17": "「お、おいネコハチッ!\\n さっきまで咥えていたお上さまをどこへやったのじゃッ!?」", "386000511_18": "「まさか、\\n どこぞに落としたというのかッ!?」", "386000511_19": "「ここまで来て、また振り出しかよッ!?」", "386000511_20": "「最初に見かけた時は、確かに御神体を咥えていたはず。", "386000511_21": " その後の移動ルートがわかれば、探すことも可能なのだが」", "386000511_22": "「ちょっと待って!", "386000511_23": " この匂いは……」", "386000511_24": "「くんくんくん。\\n スーハー、スーハー……」", "386000511_25": "「おいおい、\\n いきなり猫を吸い始めて、なんのつもりだ?」", "386000511_26": "「うん間違いない!\\n ネコハチちゃんから! 出汁の匂いがする!!」", "386000511_27": "「これなら、御神体を見つけられるかも!\\n スーハー、スーハー……」", "386000511_28": "「ええッ!?\\n どうして見つけられるのッ!?」", "386000511_29": "「麺も、出汁も、うどん屋さんによって違う。\\n だから、出汁の匂いを嗅ぎ分けることさえできれば――」", "386000511_30": "「ネコハチちゃんの移動ルートが導き出せる!\\n そのルート上に、御神体が落ちているはずだよ!」", "386000511_31": "「すごいよ友奈ちゃんッ!\\n まるで、うどん探偵だねッ!」 ", "386000511_32": "「スーハー、スーハー……。\\n この匂いは……商店街のお店? それとも……?」", "386000511_33": "「頑張れッ!\\n わしらの未来は、おぬしの鼻にかかっておるぞッ!」", "386000511_34": "「……なあ、\\n 四国の人間はみんなアレができるのか?」", "386000511_35": "「できるわけないでしょ!\\n 四国をなんだと思ってるのよ!!」", "386000511_36": "「……あれ、友奈ちゃん?\\n 鼻のところ、何か付いているわよ?」", "386000511_37": "「え、本当だ。\\n これは……黒いペンキ? いつの間に付いたんだろ?」", "386000511_38": "「猫を嗅いでる間に付いたんじゃないか?\\n 見ろ、猫にもペンキが付いている」", "386000511_39": "「本当じゃな。\\n 道理で、いつもより黒い部分が多いと思ったぞ」", "386000511_40": "「なあ、そのペンキもルートのヒントになるんじゃないか?\\n 触るだけでひっつくなんて、塗りたてってことだろ?」", "386000511_41": "「うどん屋さんの近くで、ペンキが塗りたての場所。\\n それなら、そんなに数はなさそうね」", "386000511_42": "「全員で動いては非効率的だな。\\n ここは、道のわかる勇者と装者で、3ペアにわかれるか」", "386000511_43": "「だったら!\\n 私、風鳴さんと一緒がいいです!」", "386000511_44": "「いい、ですか?」", "386000511_45": "「あ、ああ。\\n よろしく頼む」", "386000511_46": "「スーハー……スーハー……」", "386000511_47": "「ちょっと!\\n アンタいつまで猫を吸ってるのよ!」", "386000511_48": "「ああんっ!?\\n もうちょっとだけ!」", "386000511_49": "「いいから!\\n 誰とペアになるか決めなさい」", "386000511_50": "「それはもちろん!\\n 猫探し同盟の仲間、響ちゃんに決まってるよ!」", "386000511_51": "「うんッ!\\n 今度はお上さま探し同盟だねッ!」", "386000511_52": "「……ということは、\\n 残った私たちがペアね」", "386000511_53": "「ああ、よろしく頼む」", "386000511_54": "「ヤコちゃんは、さっきの疲れも残ってるだろうから、\\n 待っててくれるかな?」", "386000511_55": "「う、うむッ、吉報を期待しておるぞッ!」", "386000511_56": "「……。", "386000511_57": " …………」", "386000511_58": "「ヤコちゃん、すっごくそわそわしてるね?」", "386000511_59": "「し、仕方なかろうッ!」", "386000511_60": "「わしが不甲斐ないせいで奪われた \\n お上さまをみんなが探してくれるというに、わしが留守番では……」", "386000511_61": "「じゃあ、一緒に行こっか?」", "386000511_62": "「うんッ、そうだよねッ。大丈夫。\\n わたしと友奈ちゃんが、ヤコちゃんのこと護るからッ!」", "386000511_63": "「……ッ!", "386000511_64": " ああ、よろしく頼むッ!」" }