{ "380000331_0": "「邪魔をする」", "380000331_1": "「……わざわざ二課にやってくることになるとはな」", "380000331_2": "「よく来てくれた。歓迎する」", "380000331_3": "「早速だけど、あの敵について話させてほしい」", "380000331_4": "「ということは、あれについて何か知っているということか?」", "380000331_5": "「そうだ。あれは『ザックーム』。\\n 錬金術師協会で管理していた植物型の完全聖遺物だ」", "380000331_6": "「やはり聖遺物だったか」", "380000331_7": "「ああ。地脈のエネルギーを吸い、成長する\\n 自律型の聖遺物と言うことだ」", "380000331_8": "「もしかして、他の聖遺物からもエネルギーを奪ったり、\\n 干渉したりする性質もある?」", "380000331_9": "「そんな報告は聞いた事がないが……、\\n ――他の聖遺物に異常があったのか?」", "380000331_10": "「……いいえ。\\n もしそうなら備えないといけないと思っただけよ」", "380000331_11": "「…………」", "380000331_12": "「成長過程で自らの葉を産み落とし、\\n それらを操ることによって自身を守護させるようだな」", "380000331_13": "「大量に現れていた雑魚共がそうだ」", "380000331_14": "「ザックームが、周囲に葉を振り撒くのが第1段階。\\n そしてさらに成長すると第2段階になる」", "380000331_15": "「第2段階は、幻覚作用と毒性のあるガスを内包した実を\\n つけるようになる」", "380000331_16": "「ちょうど今がこの状態だろう」", "380000331_17": "「実が発するガスは、私たちのファウストローブでさえ\\n 防げない、肌に触れるだけでも危険な代物だ」", "380000331_18": "「当然ギアでも無理だろうな。\\n 前も言ったが、息を止めれば大丈夫などとは思わないことだ」", "380000331_19": "「……ザックームがさらに成長していくとどうなる?」", "380000331_20": "「次の状態となる第3段階――これが最終形態だ。\\n 天にそびえる巨木へと成長するらしい」", "380000331_21": "「そこへ至れば、大地が枯れるまで\\n 地脈からエネルギーを吸い尽くすという」", "380000331_22": "「時間の経過に従い、ザックームは根を伸ばし続け、\\n いずれ日本の国土は、全ての範囲が荒地と化すだろうな」", "380000331_23": "「――ッ!」", "380000331_24": "「無論、生み出す眷属や、ガスの実の量も増える。\\n 成長すればする程、対処は困難になる」", "380000331_25": "「そこまでのものか……。\\n それにしても何故そんなものがこの日本に?」", "380000331_26": "「……ザックームは、錬金術師協会で封印、管理されていたが、\\n 先日、裏切り者によって盗み出されたのだ」", "380000331_27": "「件の協会員が、ザックームを持ち出した理由は不明。\\n 私たちは局長の命により、彼を追っていた」", "380000331_28": "「まぁ、アイツにとっても、こんな極東の島国で\\n ザックームを起動するなど、予想外のことだと思うがな」", "380000331_29": "「その根拠はあるの?」", "380000331_30": "「彼の過去に、日本を恨むような事柄はない。\\n ……それと、これは侮蔑とは思ってほしくはないが……」", "380000331_31": "「簡単な事だ。人類に混沌を齎したければ、こんな島国よりも、\\n 大陸で起動した方が、被害が甚大になるからな」", "380000331_32": "「……ありていに言えば、そういう事だ。\\n 彼は欧州を横断するように日本にやってきた」", "380000331_33": "「その気になれば、いくらでも機会はあったはずだ」", "380000331_34": "「まさか、デンマークでのあの騒ぎはッ!?」", "380000331_35": "「ああ、彼を追っての行動だった。\\n こんな状況にならなければ、秘密裏に処理したかったのでな」", "380000331_36": "「言っておくが、オレたちが日本で追い詰めたから、\\n ザックームを起動したという線もないからな」", "380000331_37": "「私たちが日本に来たのは、ザックームの起動が確認された後。\\n 追い詰めて自棄になった訳ではないことは理解してほしい」", "380000331_38": "「……承知した。錬金術師協会の企みや、攻撃の意思がない事は、\\n 上にも報告しておく」", "380000331_39": "「取り計らいに感謝する。代わりと言ってはなんだが、\\n 私たちもザックームの対処には、協力させてもらいたい」", "380000331_40": "「待て。わざわざ二課と手を組むのか?」", "380000331_41": "「ザックームはすでにこの日本に根を張っている。\\n 戦闘統制や索敵についても、この国では二課に一日の長がある」", "380000331_42": "「それはそうだが……」", "380000331_43": "「そちらの返答は?」", "380000331_44": "「…………」", "380000331_45": "「ザックームに詳しい君たちの協力は不可欠だろう。\\n 協力に感謝する」", "380000331_46": "「ここで判断しちゃって大丈夫なの?」", "380000331_47": "「上の連中はうまく丸め込むさ」", "380000331_48": "「こちらこそ、感謝する。ところで、ザックームが出現した\\n 前後の状況について、一応聞かせてもらえるだろうか?」", "380000331_49": "「ああ、分かった。それだが――」", "380000331_50": "「――といった状況だ」", "380000331_51": "「……協会の研究より、成長速度は早いようだな」", "380000331_52": "「なぁ……公園で眷属の死骸を見たんだけど、\\n 倒したのはお前らなのか?」", "380000331_53": "「ここに来るまで、見かける度に処理はしてきた。\\n 痕跡があったのなら、そうなのではないか?」", "380000331_54": "「そうか……」", "380000331_55": "「…………」", "380000331_56": "(弦十郎のダンナは、やっぱりゲートの事は伝えないつもりか。\\n それに、望み薄だったけど……)", "380000331_57": "(ゲートが閉じる前に、あっちの翼たちが、こっちの世界に\\n 来てるかもしれないなんて希望も絶たれちまったな……)" }