{ "328000821_0": "「僕の話は、これで概ね、お話ししました」", "328000821_1": "「オロチの目論む野望というのは――?」", "328000821_2": "「それについては、あなたたちのお話を伺ってから、\\n お話しするかどうか判断させてください」", "328000821_3": "「確かに一方的に値踏みするばかりでは、\\n フェアではありませんね」", "328000821_4": "「少しだけ、仲間と相談させてください」", "328000821_5": "「ええ、結構です」", "328000821_6": "「それで、どうするの?」", "328000821_7": "「今の緒川さんの話に嘘は無いと感じた」", "328000821_8": "「その行動目的についても、納得のいくものだった」", "328000821_9": "「ならば、こちらも嘘偽りなく話すべきだろう」", "328000821_10": "「ああ、いいんじゃないか」", "328000821_11": "「そうね、異論はないわ」", "328000821_12": "「つまり、あなたがたは、ある手段を用いて\\n 並行世界からやってきたと……そう言うのですか?」", "328000821_13": "「ええ、その通りです」", "328000821_14": "「確かに、そうであるならば\\n これまでの違和感は全て解消されますが……」", "328000821_15": "「……にわかには信じがたいお話です」", "328000821_16": "「並行世界の実在について、\\n 僕が確信を持てるような証拠はありますか?」", "328000821_17": "「証拠……ね」", "328000821_18": "「つかぬことを伺いますが、\\n 弟さんはホストのお仕事をしていませんか?」", "328000821_19": "「……その通りです」", "328000821_20": "「ってことは、\\n 源氏名は亜蘭。そして、本名は捨犬、違うか?」", "328000821_21": "「弟のことまで知っているとは……」", "328000821_22": "「わたしたちはあなたの弟さんに\\n 直接会ったことはないけれど――」", "328000821_23": "「わたしたちの世界のあなたからこれを受け取って、\\n お仕事について話を聞いたことがあるの」", "328000821_24": "「これは……弟の店の名刺?」", "328000821_25": "(僕が知るものとデザインが少し違うものの、\\n 店名も源氏名も弟のもの……)", "328000821_26": "(この世界で弟の店に行った可能性は否定できませんが)", "328000821_27": "(いや、例え店に行ったとしても、\\n 弟の本名を知る手段まではなかったはず……)", "328000821_28": "「……わかりました。\\n あなたたちのことを信じます」", "328000821_29": "「それではッ!」", "328000821_30": "「ええ。あなたたちの世界についての詳しい話を\\n お聞きしてもいいですか?」", "328000821_31": "「なるほど。そちらの世界の僕が、\\n 翼さんの幼い頃から風鳴家に仕えていたと……」", "328000821_32": "「これで全てが1本に繋がりました」", "328000821_33": "「初見で僕の名を呼び、飛騨忍群の流れを汲むと知っていたこと。\\n 影縫いを自力で解いたこと――」", "328000821_34": "「緒川の直系しか知らぬこの場所へと辿り着いたこと、\\n 弟の店の名刺を持ち、彼が捨てた本名を知っていたこと」", "328000821_35": "「そして、何より翼さん。\\n あなたの戦い方に、草薙の流儀の片鱗を見たこと……」", "328000821_36": "「向こうの世界の僕がお教えしたならば、納得です」", "328000821_37": "「はい。幼い頃、あなたに武芸の手ほどきを受けました。\\n ですから、あなたはわたしの師とも言えます」", "328000821_38": "「フフ……。いきなり弟子ができるなどとは\\n 思ってもいませんでしたよ」", "328000821_39": "「納得してもらえたなら……」", "328000821_40": "「そろそろ教えてもらえないか」", "328000821_41": "「草薙の……オロチの野望について」", "328000821_42": "「…………」", "328000821_43": "「もしそれが、この国を脅かすものであるなら、\\n 防人として放っておくことはできません」", "328000821_44": "「防人として、ですか……」", "328000821_45": "(ああ、やはりこの人の眼差しは。かつての草薙の者が抱き、\\n いつしか失ってしまった、誇りを持つ者の耀きだ……)", "328000821_46": "「わかりました。お話ししましょう」", "328000821_47": "「鳴子の音ッ? まさか――」", "328000821_48": "「外から気配がッ! 囲まれたッ!?」", "328000821_49": "「ずいぶんと大勢さんでお越しみたいだなッ!」", "328000821_50": "「遂にこの隠れ家も嗅ぎつけられてしまいましたか」", "328000821_51": "「とにかく、迎撃します。お話の続きはその後で」", "328000821_52": "「それなら手伝うわ」", "328000821_53": "「よろしいのですか?」", "328000821_54": "「ああ。黙って待ってるのは性にあわないからなッ!」", "328000821_55": "「わかりました。ありがとうございます」", "328000821_56": "「ならば、わたしも――」", "328000821_57": "「先輩はギアが使えないんだから大人しくしてろって」", "328000821_58": "「オロチ戦の損傷が、まだ……?」", "328000821_59": "「……はい」", "328000821_60": "「ここは僕と彼女たちに任せてください」", "328000821_61": "「……承知しました。ご武運を」", "328000821_62": "(わかっている。本職の忍び、そしてアルカ・ノイズが\\n 相手では、ギアの無いわたしは足手纏いにしかならない)", "328000821_63": "(ギアの損傷はわたしがオロチに剣を折られたせい。\\n 彼奴に負けた、わたしが不甲斐なかったためだ)", "328000821_64": "(だが、それでも――仲間の戦いをこうして待つしか\\n できないとは、なんて歯がゆいんだ……)" }