{ "321000332_0": "「これでもくらうデ――スッ!!」", "321000332_1": "「はあああ――ッ!!」", "321000332_2": "「はぁ、はぁ、はぁ……やっと、片付いた、デス……」", "321000332_3": "(なんだか、研究所やさっき相手したのよりも\\n 手こずった気が……)", "321000332_4": "(まさか、敵が強くなっているデスか?)", "321000332_5": "「……気のせいデス?\\n ちょっとばかしアタシが疲れてるからデスよね」", "321000332_6": "「なにしろ、ほとんど歩き通しだったデスから……」", "321000332_7": "「でも、このくらいッ!\\n 気合いでなんとかするデスよッ!」", "321000332_8": "(マムから受け取った『コレ』もあるデス。\\n アイツのところにまで辿り着けさえすれば……)", "321000332_9": "「それに、秘策もあるデス」", "321000332_10": "「……秘策?」", "321000332_11": "「そうデス」", "321000332_12": "「思い出したデス。\\n あの時、アイツは、アタシの絶唱を嫌って逃げたデス」", "321000332_13": "「だから、きっと絶唱なら――」", "321000332_14": "「いけませんッ!」", "321000332_15": "「どうしてデスか?」", "321000332_16": "「伝承でヴァンパイアは不死とされていますが、不死とは言え、\\n 魂を失えば生き存えることは流石にできないでしょう」", "321000332_17": "「ですから、確かにあなたの『魂を刈り取る』イガリマを\\n 警戒したとも考えられます」", "321000332_18": "「そうデスッ!\\n イガリマの刃なら、不死のヴァンパイアにだってッ!」", "321000332_19": "「――ですが、今のあなたは絶唱のバックファイアを\\n 受けたばかり」", "321000332_20": "「それに、戦いの傷自体も、まだ完全には癒えていません」", "321000332_21": "「そんな状態で、絶唱を使用すれば、恐らく……」", "321000332_22": "「それじゃ、どうすれば……?」", "321000332_23": "「……あなたにこれを預けます」", "321000332_24": "「……銃、デスか?」", "321000332_25": "「ただの銃ではありません。これに込められているのは、\\n 私たちの研究所で調査中だった、純銀の弾丸です」", "321000332_26": "「あの時の話の……」", "321000332_27": "「ええ。この弾丸は元はと言えば、\\n あのヴァンパイアのミイラに撃ち込まれていた代物」", "321000332_28": "「そのままミイラの体内に残っていたことから考えても、あの\\n ヴァンパイアは過去、これにより倒された可能性が高い……」", "321000332_29": "「なるほどデス。\\n でも、まだ起動していないんじゃないデスか?」", "321000332_30": "「いえ……。実は、あの襲撃の際に起動していたのです」", "321000332_31": "「えッ!? 急にどうしてデスッ!?」", "321000332_32": "「恐らくは、あなたの絶唱のフォニックゲインを\\n 受けてでしょう」", "321000332_33": "「それじゃ、\\n これを使えばあのヴァンパイアを倒せるデスか?」", "321000332_34": "「その可能性は高いと思います」", "321000332_35": "「ですが、それでも厳しい戦いになることには変わりありません」", "321000332_36": "「相手は、装者の攻撃をいとも簡単にあしらう強敵なのですから」", "321000332_37": "「……それは、わかってるデス」", "321000332_38": "「S.O.N.G.からの増援を待ちたいところですが、\\n あなたの心配するように、猶予はもうありません」", "321000332_39": "「切歌、くれぐれも気を付けるのですよ」", "321000332_40": "「……わかったデス。任せるデスよ」", "321000332_41": "「ところで、この弾丸の力ってどんなモノなんデスか?」", "321000332_42": "「以前話した通り、この弾丸には\\n 強力な破魔の特性があります」", "321000332_43": "「残念ながらマリアたちの治療に生かせるようなものではありま\\n せんでしたが、ヴァンパイアには天敵とも言えるでしょう」", "321000332_44": "「つまり、これがあのヴァンパイアの弱点ってことデスねッ!」", "321000332_45": "「恐らくは……」", "321000332_46": "「ですが同時に、危険もあることを忘れてはいけません」", "321000332_47": "「危険デスか?」", "321000332_48": "「ええ……その銀の弾丸も、強力な聖遺物の1種」", "321000332_49": "「同じ聖遺物であるギアと干渉し、ぶつかり合えば、\\n 使用者にどんな影響が現れるかわかりません」", "321000332_50": "「ですから、\\n くれぐれも使い方を誤らないように気を付けてください」", "321000332_51": "「わかったデス。気を付けるデスよ」", "321000332_52": "「この弾丸を、アイツの胸にぶち込んでくるデスッ!\\n アタシの命に代えてでもッ!」", "321000332_53": "「馬鹿なことを言ってはいけませんッ!」", "321000332_54": "「マ……マム?」", "321000332_55": "「この1発の銀の弾丸同様、あなた1人が、\\n 私たちの最後の希望だということを、忘れてはいけません」", "321000332_56": "「そしてあなたが大事に想っている者たちも、\\n あなたのことを大事に想っているということを――」", "321000332_57": "「だから……軽々しく命に代えるなどと言ってはなりませんよ」", "321000332_58": "「わかったデスよ、マム」", "321000332_59": "「ならいいのです」", "321000332_60": "「さあ……お行きなさい。\\n 務めを果たして、そして、必ず無事に戻ってくるのですよ」", "321000332_61": "「……はいデス」" }