{ "105000131_0": "「どう? どう?」", "105000131_1": "「ビッキー唄ってる。\\n 大丈夫……だと思うけど」", "105000131_2": "「立花さん、ファイトですッ!」", "105000131_3": "「……はァ……はい、合格です……」", "105000131_4": "「ホントですかッ!? やった―――ッ!」", "105000131_5": "「よかった」", "105000131_6": "「イヒヒー……ブイブイッ!」", "105000131_7": "「立花さんッ!」", "105000131_8": "「――ッ!?」", "105000131_9": "「調子に乗らないのッ! 合格とは言いましたが、学ばなければ\\n いけない技術は、まだまだたくさんありますッ!」", "105000131_10": "「メンボク・シダイモ・ゴザイマセン」", "105000131_11": "「――ですが……」", "105000131_12": "「?」", "105000131_13": "「聴き入ってしまう歌声です。\\n きっと立花さんは、心で唄っているからなのでしょうね」", "105000131_14": "「心……胸の歌――先生ッ!」", "105000131_15": "「……あれ?」", "105000131_16": "「はい。これにて居残りテストは終了。いろいろあるとはいえ、\\n 次の試験はすっぽかさないようにッ!」", "105000131_17": "「ああ……アハハ……」", "105000131_18": "「やったやったッ! 合格だってッ!」", "105000131_19": "「もう、心配ばかりかけるんだから」", "105000131_20": "「フフ、それではわたしたちも帰りましょう」", "105000131_21": "「誕生日プレゼント、いいのが見つかって良かった」", "105000131_22": "「クリスちゃん、喜んでくれるかな?」", "105000131_23": "「きっと大丈夫」", "105000131_24": "「ヘヘ(フフ)」", "105000131_25": "「さて、期待が集まる月開発に関するニュースです」", "105000131_26": "「…………」", "105000131_27": "「かねてより進められてきた、日米共同の宇宙開発プロジェクトは、\\n その後の閣僚級協議を経て、ここに来て大きく進展」", "105000131_28": "「冷えきった国家間の関係修復の象徴として、まもなく、その目的\\n 地である月面に向けて、歴史的な一歩を踏み出そうとしています」", "105000131_29": "「――月へ……」", "105000131_30": "「おそーいッ! もう、どうしたの?」", "105000131_31": "「どわおッ!? ごめん、ごめーんッ!\\n なんかお腹すいちゃったなーッ!」", "105000131_32": "「何それ? 響のおごりねッ!」", "105000131_33": "「はぁーしょうがないか」", "105000131_34": "「はーむッ!\\n それにしても、胸の歌には、何度助けられたかわからないよ」", "105000131_35": "「ホントホント」", "105000131_36": "「なんだか最近……特別なくらい普通の毎日。\\n 普通って幸せなんだって実感するよ」", "105000131_37": "「しばらく任務続きだったものね。響ったら、\\n 困っている人がいると、あっという間に飛び出してばかり」", "105000131_38": "「アハハハハ」", "105000131_39": "「わたしが困ってても、助けに来てくれるのかしら?」", "105000131_40": "「そんなの、当たり前だよ。未来だったら超特急で行くよッ!」", "105000131_41": "「じゃあ――わたしが誰かを困らせていたら、響はどうするの?」", "105000131_42": "「――えッ!?」", "105000131_43": "「たとえばの話よ。たとえば」", "105000131_44": "「いじわるだよ、そんな質問」", "105000131_45": "「真に受けすぎなんだから」", "105000131_46": "「――ッ!?」", "105000131_47": "「……響……」", "105000131_48": "「うんッ!」", "105000131_49": "「響さんッ! 乗ってくださいッ!」", "105000131_50": "「未来さんも一緒にッ!」", "105000131_51": "「大型船舶に偽装した、S.O.N.G.の研究施設にて事故が発生した」", "105000131_52": "「海上の研究施設? デスか?」", "105000131_53": "「もしかして……街中では扱えないような危険物を対象に……?」", "105000131_54": "「ああ。そこでは先だって回収したオートスコアラーの残骸を\\n 調査していたのだ」", "105000131_55": "「――ッ……」", "105000131_56": "「破壊されたアンティキティラの歯車とオートスコアラーの\\n 構造物からは、パヴァリア光明結社――」", "105000131_57": "「……ひいてはアダム・ヴァイスハウプトの目的を探るための\\n 解析が行われていたの」", "105000131_58": "「先ほどの爆発事故は、機密の眠る最深奥に触れたがための\\n セーフティーとも考えられますが……」", "105000131_59": "「ティキと呼ばれたあのオートスコアラーには、\\n 惑星の運行を観測し――」", "105000131_60": "「記録したデータを元に様々な現象を割り出す\\n 機能があったようです」", "105000131_61": "「これはッ!? 南極大陸?」", "105000131_62": "「爆発の直前、最後にサルベージしたデータは、\\n 南極の一地点を示す座標でした」", "105000131_63": "「ここは、南極大陸でも有数の湖、ボストーク湖。\\n 付近に位置するのは、ロシアの観測基地となります」", "105000131_64": "「湖ってどれ? 一面の雪景色なんですけど?」", "105000131_65": "「その雪景色のほとんどがボストーク湖さ。\\n 正確には、氷の下に広がっているんだけどね」", "105000131_66": "「地球の環境は一定ではなく、\\n たびたび大きな変化を見せてきました」", "105000131_67": "「とくに近年、その変動は著しく、\\n 極冠の氷の多くが失われています」", "105000131_68": "「まさか、氷の下から何かが出てきたってわけじゃないよな?」", "105000131_69": "「そのまさかよ」", "105000131_70": "「先日、ボストーク観測基地の近くで発見されたのが、\\n この氷漬けのサソリです」", "105000131_71": "「照合の結果、数千年前の中東周辺に存在していた種と判明。\\n 現在では絶滅していると聞いています」", "105000131_72": "「なぜ、そんなものが南極に?」", "105000131_73": "「詳細は目下調査中……」", "105000131_74": "「ですが、額面通りに受け止めるなら、先史文明期に\\n なんらかの方法で中東より持ち込まれたのではないでしょうか」", "105000131_75": "「――ッ……」", "105000131_76": "「気になるのは、これだけではありません」", "105000131_77": "「情報部は、瓦解後に地下へと潜ったパヴァリア光明結社の\\n 残党摘発に努め、さらなる捜査を進めてきました」", "105000131_78": "「得られた情報によると、アダムは占有した神の力を\\n もって遂げようとした目的があったようだな」", "105000131_79": "「その目的とは、一体」", "105000131_80": "「この星の支配者となるため――、\\n 時の彼方より浮上する棺を破壊ッ!」", "105000131_81": "「なんデスとッ!?」", "105000131_82": "「でも、時の彼方からの浮上って……南極のサソリと\\n 符合するようで、気味が悪い……」", "105000131_83": "「次なる作戦は、南極での調査活動だ。ネタの出所に結社残党が\\n 絡む以上、この情報自体がワナという可能性もあるッ!」", "105000131_84": "「作戦開始までの1週間、各員は準備を怠らないでほしいッ!」", "105000131_85": "「了解(デス)ッ!」" }