{ "328000931_0": "「クッ……はぁ、はぁ、はぁ……」", "328000931_1": "「フ……流石に息も絶え絶えといったところか」", "328000931_2": "「護国などという無意味な志を捨てれば、楽になれるぞ」", "328000931_3": "「……無意味な、志などでは、ない……」", "328000931_4": "「今にもポキリと折れそうなくせに、よく吠えるものよ」", "328000931_5": "「まだ、わたしの心も、この刀も折れてはいないぞ……」", "328000931_6": "「フン、そのようななまくら刀がなんだと言うのだ。\\n この天叢雲剣に比べれば、道端の棒切れにも等しい」", "328000931_7": "「棒切れなどでは、ないッ!」", "328000931_8": "「国を、人を護らんと振るわれ続けた刀だッ!\\n なまくらなどとは言わせんッ!」", "328000931_9": "「ええいッ! その鬱陶しい目で俺を見るなッ!!」", "328000931_10": "「もういいッ! 余興は終わりだッ!」", "328000931_11": "「く……刀がッ!?」", "328000931_12": "「わかっただろう。それが現実だ。\\n 人を護るために振るわれようとも、所詮、なまくら」", "328000931_13": "「くッ……」", "328000931_14": "(そんなはずはない……、\\n 国を護り続けた刀が、なまくらのはずは……)", "328000931_15": "(いや……、\\n なまくらにしているのは……刀を振るう、わたし?)", "328000931_16": "(やはり、ギアも無く、心も弱いわたしでは……)", "328000931_17": "「なッ!? これは――刃毀れだとッ!?」", "328000931_18": "「ありえんッ! 無名の刀が天叢雲剣に傷をつけるなどと……」", "328000931_19": "「……そうだッ!」", "328000931_20": "「護国の想いをのせた刀が、簡単に敗れるはずはないッ!」", "328000931_21": "(その証拠に、この刀は砕けつつも、天叢雲剣に傷をつけた)", "328000931_22": "(それは、刀の強さではなく、護国の……想いの強さ)", "328000931_23": "(わたしはダメだな……ギアを失い、剣を折られ、\\n そして、心までも折れるところだった)", "328000931_24": "(その弱さのせいで、この刀が犠牲に……、\\n だが、もう迷いはしない。この刀の想いはわたしと共にある)", "328000931_25": "「オロチ、それこそが、防人の意地だ。\\n 護国を体現していた、刀の最後の抵抗……」", "328000931_26": "「黙れッ! この程度の小さな傷でいきがるでないわッ!」", "328000931_27": "「それでも、無銘の刀でも傷をつけられた。\\n ならば……わたしも一振りの刀として、それに続くのみッ!」", "328000931_28": "「武器も無く、殺されるだけの小娘の分際で――ッ!」", "328000931_29": "「むッ!?」", "328000931_30": "「銃弾――ッ!?」", "328000931_31": "「何者だ、邪魔立てするのはッ!」", "328000931_32": "「お待たせしました」", "328000931_33": "「緒川さんッ!」", "328000931_34": "「貴様はッ!」", "328000931_35": "「ブリル協会の錬金術師め、しくじったか。\\n せっかく術のお膳立てまでしたというのに」", "328000931_36": "「後は僕に任せてください」", "328000931_37": "「いえ。わたしは、まだやれます」", "328000931_38": "「ですが、その傷では……」", "328000931_39": "(単身傷だらけで武器を失って尚、\\n 護国のために戦意を失わずに戦い続けるとは……)", "328000931_40": "(彼女こそ、真の防人というもの……。\\n その彼女の志、否定するわけにはいきませんね……)", "328000931_41": "「緒川さん?」", "328000931_42": "「いえ……わかりました。\\n 共に、この戦いに決着を付けましょうッ!」", "328000931_43": "「はいッ!」", "328000931_44": "「オロチのあの剣……天叢雲剣を。\\n あれさえ奪うことができれば勝機があります」", "328000931_45": "「あの剣を? ですが、どうやって?」", "328000931_46": "「僕が隙を作ります。\\n だから翼さんは、オロチの手からあれを」", "328000931_47": "「内緒話は終わったか?」", "328000931_48": "「単に死体が1つから2つに増えるだけのこと。\\n 重ねて4つに切り裂いてくれるわッ!」", "328000931_49": "「やれるものなら――」", "328000931_50": "「やってみるがいいッ!!」" }