{ "101001411_0": "防人の歌", "101001411_1": "「うわぁ、学校の真下にこんなシェルターや地下基地が……」", "101001411_2": "「へへ、すごいでしょうッ!\\n ……あ、翼さーんッ!」", "101001411_3": "「立花か。……そちらは、確か協力者の」", "101001411_4": "「こんにちは。小日向未来です」", "101001411_5": "「えっへんッ! わたしの一番の親友ですッ!」", "101001411_6": "「風鳴翼だ、よろしく頼む。立花はこういう性格ゆえ、\\n 色々面倒をかけると思うが支えてやってほしい」", "101001411_7": "「いえ、響は残念な子ですので、\\n ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」", "101001411_8": "「ええ~、なに?\\n どういうこと~?」", "101001411_9": "「響さんを介して、\\n おふたりが意気投合してるということですよ」", "101001411_10": "「むむ~、はぐらかされた気がする」", "101001411_11": "「ふふ」", "101001411_12": "(変わったのか、それとも変えられたのか。響さんに出会い、\\n 翼さんは良い笑顔を見せてくれるようになりました)", "101001411_13": "「でも、未来といっしょにここにいるのは、\\n なんかこそばゆいですよ」", "101001411_14": "「司令が手を回し小日向を外部協力者として二課に登録したが、\\n ……それでも、不都合を強いるかもしれない」", "101001411_15": "「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです。\\n 不都合だなんて、そんな」", "101001411_16": "「あ、そういえば師匠は?」", "101001411_17": "「ああ、わたしたちも捜しているのだが――」", "101001411_18": "「あら~、いいわね。ガールズトーク? 混ぜて混ぜて。\\n 私のコイバナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ~?」", "101001411_19": "「りょ~うこさんのコイバナ~ッ! きっとうっとりメロメロ\\n おしゃれで大人な銀座の恋の物語~ッ!」", "101001411_20": "「そうね……。遠い昔の話になるわねぇ……。\\n こ~う見えて呆れちゃうくらい、一途なんだからぁ」", "101001411_21": "「おお~ッ!」", "101001411_22": "「意外でした。櫻井女史は恋というより、研究一筋であると」", "101001411_23": "「命短し恋せよおとめッ! というじゃなぁい?\\n それに女の子の恋するパワーってすっごいんだからぁッ!」", "101001411_24": "「私が聖遺物の研究を始めたのも、そもそも――あ」", "101001411_25": "「うんうんッ! それでッ!?」", "101001411_26": "「……ま、まあ、私も忙しいから\\n ここで油を売ってられないわッ!」", "101001411_27": "「とにもかくにも、できる女の条件は、\\n どれだけいい恋をしているかにつきるわけなのよッ!」", "101001411_28": "「ガールズたちも、いつかどこかでいい恋なさいね?\\n んじゃ、ばっはは~い」", "101001411_29": "「んむむ~、ガードは堅いかぁ。\\n でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出してみせるッ!」", "101001411_30": "「……それにしても、司令。\\n まだ戻ってきませんね」", "101001411_31": "「ええ。メディカルチェックの結果を\\n 報告しなければならないのに……」", "101001411_32": "「次のスケジュールが迫ってきましたね」", "101001411_33": "「もうお仕事入れてるんですか?」", "101001411_34": "「少しずつよ。\\n 今はまだ、慣らし運転のつもり」", "101001411_35": "「じゃあ、以前のような過密スケジュールじゃないんですよね?\\n だったら翼さん、デートしましょッ!」", "101001411_36": "「え、デート?」", "101001411_37": "(……らしくないこと言っちゃったわね)", "101001411_38": "(変わったのか……。\\n それとも、変えられたのか……?)", "101001411_39": "「……ここか」", "101001411_40": "(……あたし、いつまでこんなとこに。\\n これから、どうすりゃいいんだ……?)", "101001411_41": "(――ッ!? 誰だ、ここ、空き家じゃねーのかよッ!)", "101001411_42": "(怪しい奴だったら、ぶん殴って――)", "101001411_43": "「――ほらよ」", "101001411_44": "「えッ……? あッ……」", "101001411_45": "「応援は連れてきていない。……君の保護を命じられたのは、\\n もう俺ひとりになってしまったからな」", "101001411_46": "「どうして、ここが……?」", "101001411_47": "「元公安の御用牙でね。慣れた仕事さ。\\n ……ほら、差し入れだ」", "101001411_48": "「あ……。\\n くッ……なにが目的だ?」", "101001411_49": "「腹が減ってるんじゃないかと思ってな。\\n (ばくりッ)……何も盛っちゃいないさ」", "101001411_50": "「……ッ! くッ!\\n はぐ、もぐもぐ……。――あぐ、もぐッ!」", "101001411_51": "「………………」", "101001411_52": "「バイオリン奏者雪音雅律と、声楽家のソネット・M・ユキネが\\n 難民救済の活動中に戦火に巻き込まれ死亡したのが8年前」", "101001411_53": "「残されたひとり娘は行方不明になったが、介入した国連軍により\\n 保護され、日本に移送されることとなった――」", "101001411_54": "「ふん、よく調べているじゃねぇか。\\n ……そういう詮索、反吐が出るッ!」", "101001411_55": "「当時の俺たちは適合者を探すために、\\n 音楽界のサラブレッドに注目していてね」", "101001411_56": "「天涯孤独となった少女の身元引受先として、手を挙げたのさ」", "101001411_57": "「……ふん、こっちでも女衒かよ」", "101001411_58": "「ところが、少女は帰国直後に消息不明。俺たちも慌てたよ。\\n 二課からも相当数の捜査員が駆り出されたが――」", "101001411_59": "「――この件に関わった者の多くが死亡。\\n あるいは行方不明という最悪の結末で幕を引くことになった」", "101001411_60": "「……何がしたい、おっさんッ!」", "101001411_61": "「俺がやりたいのは、君を救い出すことだ。\\n 引き受けた仕事をやり遂げるのは、大人の務めだからな」", "101001411_62": "「はんッ! 大人の務めときたかッ!\\n 余計なこと以外はいつも何もしてくれない大人が偉そうにッ!」", "101001411_63": "「Killter Ichaival tron……」", "101001411_64": "「……行ってしまったか」", "101001411_65": "(……あたしは何を……、――ッ!?)", "101001411_66": "「ちッ……またお前らかよ。\\n 雨だってのにご苦労なこった」", "101001411_67": "「今のあたしはムシャクシャしてんだ。\\n 腹も膨れたところだしさ……」", "101001411_68": "「――街や、無関係な奴らを巻き込んでくれた借りは、\\n ここで返させてもらうからなッ!」" }