{ "328000842_0": "(国を、人を護るため、\\n わたしは、防人として育てられた……)", "328000842_1": "(しかし、そのわたしの振るう天羽々斬は折られた。\\n 防人としての剣が……)", "328000842_2": "(名も知らぬ勇士が、振るっていた刃は、こうして\\n 今も残っているというのに――)", "328000842_3": "「どうしたの?」", "328000842_4": "「いえ……こうしているしかない自身と、\\n 剣を折られたことが情けなくて……」", "328000842_5": "「あなたの振るう剣が天羽々斬。オロチの剣は天叢雲剣。\\n ならばぶつかれば、あなたの剣が折れるのは必然」", "328000842_6": "「伝承にある通りでしょうに」", "328000842_7": "「それは、わかっています……」", "328000842_8": "「納得できないって顔ね。\\n 話くらいなら聞いてあげるわよ?」", "328000842_9": "「……過去、幾度か天羽々斬を折られたことはあります」", "328000842_10": "「それは哲学の刃や、未知の分解機能によってでした。\\n しかし、今回は――」", "328000842_11": "「いくら忍びであるとはいえ、只人の振るう剣。\\n しかも日本を転覆せんと企む、賊でもある」", "328000842_12": "「そんな相手に、わたしは剣を折られてしまった……」", "328000842_13": "「伝承による不利を差し引いても、わたしは負けてはいけない\\n 相手に負けてしまった、という想いが拭いきれないのです」", "328000842_14": "「それに……天叢雲剣は天羽々斬と同じく、この国の神宝。\\n 本来は、護国のために振るわれるべき剣です」", "328000842_15": "「しかし、間違った使い手に間違った刃として使われている。\\n だからこそ、わたしは負けてはならなかったのに……」", "328000842_16": "「全く、難儀な考え方をしているわね……」", "328000842_17": "「道具は所詮、道具よ。使い手の行動が全て。\\n 道具としての剣は斬るためだけにあるの」", "328000842_18": "「あなたが気にするべきは、単純にその道具のポテンシャルを\\n 引き出せていたのかどうかでしょ」", "328000842_19": "「わたしが、天羽々斬の……?」", "328000842_20": "「そうよ。力を十全に発揮して折られたなら、\\n それは悩んでも意味は無いわ。もっと力をつけるしかない」", "328000842_21": "「でもそうじゃないなら、次は全力を発揮すればいいわ」", "328000842_22": "「……」", "328000842_23": "「はああ――ッ!!」", "328000842_24": "「ガガッ!?」", "328000842_25": "「これもまた傀儡人形……」", "328000842_26": "(生身の人間がほとんどいない?)", "328000842_27": "(本来の草薙の忍びたちは、一体……)", "328000842_28": "「オロチはいたかッ!?」", "328000842_29": "「いえ、まだ見つけていません」", "328000842_30": "「こちらも見かけていませんね」", "328000842_31": "「ったく、どこにいやがるんだよ……。\\n まさか、ハズレってんじゃないだろうな」", "328000842_32": "「これだけの抵抗よ。きっとここが本隊のはず」", "328000842_33": "「そうですね」", "328000842_34": "「まだ調べられていないのは――」", "328000842_35": "「フム……僕らが踏破してきた方角を考えると、\\n 残るはこの廊下の奥だけのようですね」", "328000842_36": "「オロチに逃げられない内に急ぎましょうッ!」", "328000842_37": "「フフ……やはり来たか」", "328000842_38": "「余裕のつもりですかッ!」", "328000842_39": "「やっぱりいやがったかッ!」", "328000842_40": "「ッ!? みんな、注意して――ッ!」", "328000842_41": "「くッ!? 避けられないッ!」", "328000842_42": "「これは――影呪縛の術ッ!?」", "328000842_43": "「なんだそりゃッ?」", "328000842_44": "「影縫いの上位忍術です」", "328000842_45": "「ええい、忌々しい技ですねッ!」", "328000842_46": "「フ……そんな腰砕けの攻撃が当たるものか」", "328000842_47": "「それにしても愚かな奴らよ。\\n こうも簡単に餌に食いつくとは」", "328000842_48": "「ッ!?」", "328000842_49": "「フ……オロチ様ならば、ここにはおられぬ」", "328000842_50": "「何ッ!?」", "328000842_51": "「まさか……替え玉ッ!?」", "328000842_52": "「くッ……、全てはオロチの罠……ッ!」" }