{ "327000511_0": "暴走するテーマパーク", "327000511_1": "「……さん……しっか……さん……ッ!」", "327000511_2": "「ん……」", "327000511_3": "「よかった……。目が覚めたんですね」", "327000511_4": "「私は確か、激流に飲まれて……」", "327000511_5": "「そうか、助けてくれたのか……、ありがとう」", "327000511_6": "「いえ、当然のことですから」", "327000511_7": "「……他の者たちは?」", "327000511_8": "「この近くにはいませんでした。\\n 流されてるうちに、離れ離れになったみたいで」", "327000511_9": "「そうか……、でも私たちが無事なのだから、\\n きっと他の者たちも無事だろう」", "327000511_10": "「あ、あの、ところでここってどこなんですか?」", "327000511_11": "「私もパーク全体を把握できているわけではないが……」", "327000511_12": "「少し待て……」", "327000511_13": "「なるほど」", "327000511_14": "「恐らく、ここは『わくわくアドベンチャーゾーン』だ」", "327000511_15": "「わくわく……?」", "327000511_16": "「流れる水の道を通りながら、森や洞窟を進むアトラクションで、\\n 今はその洞窟の中みたいだな」", "327000511_17": "「局長が自慢げに話していたのを思い出した……」", "327000511_18": "「この足元の水は、あの激流の残りじゃなかったんですね」", "327000511_19": "「この場所からだと研究室へ向かうより、\\n 直接、主制御室へ向かったほうが早いな」", "327000511_20": "「他のみんなと合流しなくていいんですか?」", "327000511_21": "「近くを探して見つからなかったのなら、\\n これ以上、この場に留まるより、進んだほうが無難だ」", "327000511_22": "「なるほど、わかりました。\\n 出口は……水が流れる方に進めばいいんですよね」", "327000511_23": "「逆だ。出口に行くよりも入り口から抜けたほうが近い」", "327000511_24": "「ということは、流れに逆らって進んで……進んで……」", "327000511_25": "「あ、あれ? なんだか流れが速くなってないですか?」", "327000511_26": "「流れだけじゃない、水かさも増してきているッ!?」", "327000511_27": "「うわッ!? ほ、本当だ。全然、気づきませんでしたッ!」", "327000511_28": "「とにかく、これ以上、動けなくされる前に抜けるぞッ!」", "327000511_29": "「は、はいッ!」", "327000511_30": "「この音はもしかしてッ!?」", "327000511_31": "「くッ、またこの展開かッ!?」", "327000511_32": "「水が肩の上まで増えてるッ!\\n このままだと本当に動けなくなりますよッ!」", "327000511_33": "「ああ、わかっているッ!」", "327000511_34": "「あの……、遠回りになるかもですけど、\\n このまま流されるっていうのはどうですか?」", "327000511_35": "「……私もそう考えたが、後ろを見てやめた」", "327000511_36": "「後ろ?」", "327000511_37": "「……あ、あれは水の壁?」", "327000511_38": "「ウォーターカッターだ」", "327000511_39": "「本来、アレは加圧された水を1点から噴出させるものだが、\\n 何故か今は、扇状に広がっている」", "327000511_40": "「ただの水ならそこまで危なくなさそうですけど」", "327000511_41": "「普通の状態なら、当たっても、\\n ちょっと痛いくらいだと思うが――」", "327000511_42": "「先ほど、水流に巻き込まれて流れて行ったライオンさんが\\n 細切れになったのを見たな」", "327000511_43": "「今のアレは、鉄すら切り裂く水の刃。シンフォギアなら\\n ケガ程度で抜けられるかもしれないが……」", "327000511_44": "「怖ッ! 全然わくわくしないじゃないですかッ!」", "327000511_45": "「あの、錬金術でなんとかならないですか?」", "327000511_46": "「残念だが、手も足も出ないこの状況で術の錬成は難しい……」", "327000511_47": "「そうですよね……」", "327000511_48": "「仕方ない。ここはお前1人で――」", "327000511_49": "「サンジェルマンさん、イチかバチかですけど、\\n わたしに任せてもらっていいですか」", "327000511_50": "「どうするんだ?」", "327000511_51": "「……いや、任せよう」", "327000511_52": "「ありがとうございます。\\n それじゃ、やってみますッ!」", "327000511_53": "「水着型ギアにプールの水を限界まで吸収させて……よしッ!」", "327000511_54": "「サンジェルマンさん、わたしに抱きついてくださいッ!\\n 力いっぱい、ぎゅーっとですよッ!」", "327000511_55": "「抱きッ!? あ、ああ、わかったッ!」", "327000511_56": "「貯めた水を両手から一気に噴き上げるッ!」", "327000511_57": "「水圧を利用して飛んだッ!?」", "327000511_58": "「いっけえええええッ!」", "327000511_59": "(これが水着型ギアの力……)", "327000511_60": "「洞窟の入り口が見えましたよッ!\\n もうすぐです、しっかり捕まっててくださいねッ!」", "327000511_61": "「ああッ!」", "327000511_62": "「よし、抜けた――ッ!」", "327000511_63": "「……え?」", "327000511_64": "「ど、洞窟を抜けたはずなのに、どうして水の中に……」", "327000511_65": "「後ろの洞窟も消えているな。これはどういう……」", "327000511_66": "「あれ? そういえばここ、なんか前に見たことあるような……」", "327000511_67": "「水に囲まれた空間……。\\n 随分と変わった場所だな」", "327000511_68": "「でも、どうして急に……?」", "327000511_69": "「もしかしたら、パークの出口と似たように、\\n 空間に歪みが生じて別の場所に飛ばされたのかもしれない」", "327000511_70": "「ええッ!? じゃあ、ここはパークの中じゃないんですか?」", "327000511_71": "「残念だが、その判断を下すには材料が足りない。\\n とにかく、周囲を探ってみよう」", "327000511_72": "「はいッ!」", "327000511_73": "「はあ……、どこまで行っても水しかないですね……」", "327000511_74": "「少し休憩しようか。\\n ここなら座れそうな岩がたくさんある」", "327000511_75": "「はい、でも、水着でよかったですよね。\\n サンジェルマンさんのいつもの服だと泳ぎづらそうですから」", "327000511_76": "「水着だからといって性能が上がるわけではないから、\\n あまり差は感じないな」", "327000511_77": "「そうなんですか?」", "327000511_78": "「まあ、水を吸って服が重くならないという点では、\\n 水着の方がいいかもしれない」", "327000511_79": "「それより、この場所から出るにはどうすればいいのか、\\n 何かいい案はないか」", "327000511_80": "「うーん……いっそのこと底でも掘ってみますか?」", "327000511_81": "「……」", "327000511_82": "「どうかしましたか?」", "327000511_83": "「どうやら、お迎えが来たようだ」", "327000511_84": "「一体、誰が来てくれたん――えええッ!?」", "327000511_85": "「……」", "327000511_86": "「さ、サンジェルマンさんッ!?\\n まさか、こっちでは双子なんですかッ!」", "327000511_87": "「私が知る限りだと、そういった肉親に心当たりはない。\\n もしも、あるとしたら……」", "327000511_88": "「あれは私の幻影だ」", "327000511_89": "「ああ、そのとおり。\\n 私はお前のデータを基に造られた」", "327000511_90": "「そうか、お前のおかげでやっと理解できた」", "327000511_91": "「唐突に変化する場所、どこまで行っても変わらない景色、\\n そして、幻影の私……」", "327000511_92": "「ここはパークの中にあるトレーニング用の設備が\\n 暴走して作った偽物の世界だな」", "327000511_93": "「そうか、シミュレータッ!\\n それなら急に洞窟からここに飛んだのも納得ですッ!」", "327000511_94": "「ああ、だが気を付けろ。暴走の影響で、\\n シミュレータと実体との境目が曖昧になっている」", "327000511_95": "「おまけに空間まで歪む始末。\\n 状況がわかってもこれから何が起きるかまではわからない」", "327000511_96": "「理解したところで、お前たちはここから出ることはできない。\\n なぜなら、私に倒されるからだッ!」", "327000511_97": "「そんなものまで使えるのかッ!」", "327000511_98": "「私はオリジナルの性格、能力、その全てを引き継いでいるッ!」", "327000511_99": "「ファウストローブを纏えないお前では私に勝てない。\\n シンフォギアを纏う装者とて同じこと」", "327000511_100": "「1人じゃ勝てないとしても、今は、サンジェルマンさんがいるッ!\\n 一緒に戦えば、わたしたちは絶対に負けないッ!」", "327000511_101": "「……」", "327000511_102": "「あ、あれ?\\n わたし何かいけないこと言いましたか?」", "327000511_103": "「いや、なんでもない」", "327000511_104": "「私たちに負ける道理はないッ!」", "327000511_105": "「私の頼れる上司にして、局長であるアダム様のため、\\n ここでお前たちを倒し、沢山褒めていただくのだッ!」", "327000511_106": "「……え?」", "327000511_107": "「…………」", "327000511_108": "「さあ、戦えオリジナルッ! 立花響ッ!\\n 私に勝つことができれば、ここから出してあげなくもない」", "327000511_109": "「……あのー」", "327000511_110": "「私をそんな目で見るなッ!\\n あれはシステムの暴走でAI自体もおかしくなっているんだッ!」", "327000511_111": "「あんな不快なものは早々に破壊するッ!」", "327000511_112": "「行くぞッ!」" }