{ "382000541_0": "「ふぅ……。\\n なかなかうまくはいきませんね」", "382000541_1": "「でも、これはボクが修復しなければいけないんです。\\n 未来のボクの無念は、ボクが晴らさなきゃッ!」", "382000541_2": "「さあ、もうひと頑張りですッ!」", "382000541_3": "「失礼します」", "382000541_4": "「明日香さん?\\n どうしたんですか、こんな夜遅くに?」", "382000541_5": "「ずっと休んでないと思ったら、案の定ですね。", "382000541_6": " 飲み物の差し入れです」", "382000541_7": "「えーっと、あったかいものどうぞッ!」", "382000541_8": "「フフ、あったかいものどうも」", "382000541_9": "「今のあたしには、なにができるか分かりませんから。\\n せめて、少しでもできることがあれば、手伝いたいなって」", "382000541_10": "「掃除でも雑用でも、なんでもするので、\\n 遠慮せずに言ってくださいねッ!」", "382000541_11": "「ありがとうございます。\\n それは頼りになりますね」", "382000541_12": "「でも……明日香さんこそ、寝なくて大丈夫ですか?\\n 今日はいろいろあって、疲れたでしょう」", "382000541_13": "「そうなんですけど……なんだか最近、夢見がよくなくって。\\n あんまり眠りたくないんですよね」", "382000541_14": "「イシムの眷属のことがストレスになっているのかも\\n しれませんね」", "382000541_15": "「とはいっても、まったく寝てないわけじゃないですし、\\n 体力には自信がありますからッ! 心配しないでくださいッ!」", "382000541_16": "「それじゃあ、ここはありがたく、\\n 散らかった資料の整理をお願いします」", "382000541_17": "「了解しましたッ! お任せくださいッ!」", "382000541_18": "「……この方法もダメですか」", "382000541_19": "「修理は難しいですか……?」", "382000541_20": "「はい……ボクの知識も技術も、想い出を扱うことに長けた\\n キャロルには遠く及びません……」", "382000541_21": "「ここにキャロルがいれば、どうにかなるかもしれませんが……」", "382000541_22": "(並行世界のキャロルのもとにこれを届けてもらって、\\n 代わりに修復してもらうことは可能でしょうか……)", "382000541_23": "(……いけません。弱気になっちゃダメです。\\n それは、もう少しボクが頑張ってからでも遅くありませんッ!)", "382000541_24": "(エルフナインさん……大変そうだな)", "382000541_25": "(かといって、励まそうにも、護られるばかりの\\n あたしが言っても……)", "382000541_26": "「……あたしは部屋に戻ります。エルフナインさん、\\n あまり根を詰めすぎないでくださいね」", "382000541_27": "「ん……もうこんな時間……」", "382000541_28": "「明日香さんは……いつの間にか部屋に帰ったみたいですね。\\n さすがに、ボクも休んだ方がよさそうです……」", "382000541_29": "「警報……ッ!?\\n まさか……イシムの眷属ッ!?」", "382000541_30": "「不明勢力による破壊活動の報告ありッ!」", "382000541_31": "「映像を確認、やはりイシムの眷属ですッ!」", "382000541_32": "「場所はどこだッ!?」", "382000541_33": "「地図に出しますッ!」", "382000541_34": "「これは……。\\n 本部からは、かなり離れているな」", "382000541_35": "「今度の目的は明日香ちゃんじゃない、っていうことですかね?」", "382000541_36": "「まだ断定はできん」", "382000541_37": "「司令ッ、状況はッ!?」", "382000541_38": "「来たか、お前たち」", "382000541_39": "「デースッ!? またイシムの眷属がッ!?\\n どれだけ大盤振る舞いする気デスかッ!」", "382000541_40": "「すぐに出撃できますッ!」", "382000541_41": "「これくらいの数、全員で対処すればすぐに倒せるはずッ!」", "382000541_42": "「いや、イシムの眷属は統率された動きを見せていた。もしも、\\n 知性ある何者かの制御下にあるとすれば、陽動という線もある」", "382000541_43": "「何者か、か……」", "382000541_44": "「とはいえ、無視することもできん」", "382000541_45": "「それなら、戦力を二手に分けましょう」", "382000541_46": "「それが最善手だろうな」", "382000541_47": "「翼、調くん、切歌くん。\\n 3人は指定のポイントへ向かい、イシムの眷属を殲滅せよ」", "382000541_48": "「了解(デース)ッ!」", "382000541_49": "「師匠、わたしたちは?」", "382000541_50": "「残りの4人は本部に残ってくれ。\\n 万が一、ここが襲われた際の備えだ」", "382000541_51": "「翼たちならいざという時にガーディアンギアで乗り切れる、\\n ということね」", "382000541_52": "「そういうことだ。本部に残る4人は俺たちがバックアップする」", "382000541_53": "「分かりましたッ! もしもイシムの眷属が襲ってきても、\\n 絶対に食い止めてみせますッ!」", "382000541_54": "「頼んだぞ。今は外部協力者である明日香くんも\\n 乗っているからな」", "382000541_55": "「はぁ、はぁ……ッ! み、皆さんッ!」", "382000541_56": "「どうしたの、そんなに慌てて?」", "382000541_57": "「あ、明日香さんが……」", "382000541_58": "「明日香さんが、部屋にいないんですッ!」", "382000541_59": "「えッ!?」", "382000541_60": "「この状況で行方不明なんて……まさか、外に出て行った\\n なんてことないでしょうね?」", "382000541_61": "「いえ、艦内から誰かが無断で外に出た形跡はありません」", "382000541_62": "「こんな時にのんきにかくれんぼってタイプでもないよな。\\n ……ちょっと探してくる」", "382000541_63": "「わたしも行くよッ!」", "382000541_64": "「明日香さんが寝泊まりしているのは、この部屋なんですが……」", "382000541_65": "「……ベッドにわずかに体温が残っている。\\n 少し前までここにいたのは確かなようね」", "382000541_66": "「明日香ちゃん、どこに行っちゃったんだろう……。\\n ひょっとして、迷子になっちゃったとか?」", "382000541_67": "「そんなマヌケなオチだったらいいんだけどな」", "382000541_68": "「……ッ! みんな、ちょっと来てくれッ!」", "382000541_69": "「どうしたの、クリス?」", "382000541_70": "「部屋の前にある、この汚れ……足跡じゃないか?」", "382000541_71": "「確かにそうね。相当大きいみたいだけど……」", "382000541_72": "「こんなに大きな靴を履いてる人なんて、そうそういないよね。\\n S.O.N.G.の中だと、師匠くらい?」", "382000541_73": "「……なあ。ひょっとしてこれ……、\\n 茶蔵のおっさんの足跡じゃないか?」", "382000541_74": "「茶蔵さんのッ!?」", "382000541_75": "「確かに、サイズは一致しそうだけど……なにか根拠はあるの?」", "382000541_76": "「……今日の昼、街でイシムの眷属と戦ってる時、\\n 茶蔵のおっさんの姿を見た気がしたんだ」", "382000541_77": "「あたしたちの戦いを、こっそり見ていたみたいだった」", "382000541_78": "「茶蔵さんがわたしたちを……?\\n でも、どうしてそんなこと……」", "382000541_79": "「そういえば、世界を敵に回すラスボスになる\\n とか言ってたよな……」", "382000541_80": "「もしかしたら、もしかするとだけど、\\n イシムの眷属を操ってるのは……」", "382000541_81": "「乗員に告げるッ! 現在、艦内にて敵性勢力の侵入を\\n 多数確認ッ! 敵性勢力はイシムの眷属と思われるッ!」", "382000541_82": "「……ッ!」", "382000541_83": "「乗員は敵性勢力との接敵は避け、ただちに防衛体制に\\n 移行せよッ! 繰り返す――」", "382000541_84": "「このタイミングで……ッ!?\\n 間が悪いにもほどがあるわッ!」", "382000541_85": "「いや……むしろ、しっくりくる流れだ」", "382000541_86": "「あなた……もしかして、あの人を疑っているの?」", "382000541_87": "「ああ……そうじゃないとは思いたいけどな」", "382000541_88": "「え? どういうこと?」", "382000541_89": "「イシムの眷属を操っているのは、\\n 茶蔵のおっさんかもしれないってこった」" }