{ "376000331_0": "「……どう?\\n うまくいった?」", "376000331_1": "「……うん、成功したみたい。神獣鏡を使った目くらまし。\\n これで敵の追跡は振り切れたと思う」", "376000331_2": "「助かったデスッ!\\n もう追いかけっこはこりごりデスよ」", "376000331_3": "「ここが見つけられたのもラッキーでした。\\n 壁も天井もちゃんとあるし、少しは落ち着けそう」", "376000331_4": "「それにしても、わたしたちは何故このような場所に\\n 来てしまったのか……」", "376000331_5": "「原因はやっぱり、あれデスよね?\\n アタシたちが引きずり込まれた、空間の穴――」", "376000331_6": "「ギャラルホルンのゲートに似ていたけど、\\n 少し違うみたいだったね」", "376000331_7": "「現状、元の世界に戻る方法として思いつくのは、\\n 同じ穴をもう一度くぐることだけだな……」", "376000331_8": "「あの穴は、大きな怪物が作り出したように見えました。\\n ということは……」", "376000331_9": "「怪物自身の能力か、ギャラルホルンのような聖遺物を\\n 持っているのか……」", "376000331_10": "「いずれにしても、あの怪物にはもう一度\\n 相対する必要があるようだな」", "376000331_11": "「だけど、わたしたちが目覚めた時、\\n 大きな怪物は傍にいませんでしたね」", "376000331_12": "「同じ穴に入ったのだから、\\n この世界に来ているとは思いますが……」", "376000331_13": "「探そうにも、一歩外へ出たら、獣の怪物の群れが\\n うじゃうじゃだもんね。う~ん、困ったなぁ……」", "376000331_14": "「むむむむ……?」", "376000331_15": "「あ、ごめん。さっきから何言ってるのか分からないよね。\\n 今説明を――」", "376000331_16": "「分かりましたッ! ここは別の銀河にある暗黒星ッ!\\n あたしたちは、ワームホールでそこに――」", "376000331_17": "「ぜ、全然違うデースッ!」", "376000331_18": "「この状況で、今更秘匿するわけにもいかないな。\\n 今置かれているであろう状況について、説明しよう」", "376000331_19": "「並行世界ッ!\\n なんと、そっちでしたかッ!」", "376000331_20": "「普通もっとパニックになると思うデスけど、\\n 柔軟な人デスねぇ」", "376000331_21": "「歌の戦士だって実在したのだから、\\n これくらいでは驚きませんッ!」", "376000331_22": "「気になっていたんだけど、\\n その、『歌の戦士』っていうのは……?」", "376000331_23": "「歌の戦士……。\\n 昔、あたしを助けてくれた人のことです」", "376000331_24": "「あたしの憧れのヒーロー……。\\n その人の名前は、天羽奏ですッ!!」", "376000331_25": "「その日あたしは運悪く、特異災害……ノイズに\\n 遭遇してしまいました」", "376000331_26": "「近くにいた人たちは、ノイズに襲われて次々に\\n 灰になっていった……」", "376000331_27": "「あたしは必死に逃げて……。でも、\\n 最後には、追い詰められてしまいました」", "376000331_28": "「恐怖に身がすくんで、何もできなかった……。\\n あたしはすべてを、諦めてしまったんです」", "376000331_29": "「そんな時です。\\n 歌が聴こえてきたのは……」", "376000331_30": "「彼女はたった1人で、何体ものノイズと戦い、\\n あたしのことを護ってくれました」", "376000331_31": "「ボロボロになりながら……苦しそうにしながら……」", "376000331_32": "「だから、あたしは言ったんです。もう護ってくれなくていい。\\n あなただけでも逃げてって」", "376000331_33": "「そんなあたしに、彼女は言いました。\\n 『生きるのを諦めるな』って……」", "376000331_34": "「奏さんのおかげで、今あたしは生きています」", "376000331_35": "「二度と会えることはなかったけど、その時から、\\n 奏さんはあたしにとってのヒーローなんですッ!」", "376000331_36": "「…………」", "376000331_37": "「いつかあたしも、あの時の奏さんのように、\\n 誰かのことを護れる存在になりたくて……」", "376000331_38": "「もしかして、それで身体を鍛えたり、\\n 人助けを……?」", "376000331_39": "「はい、その通りですッ! あたしの夢は、皆さんや奏さんと\\n 同じような、歌の戦士になることですからッ!」", "376000331_40": "「――ッ!\\n それが、夢……」", "376000331_41": "「そして、今日、響先輩の戦いぶりを見て確信しました。\\n 奏さんは、死んでなんかいないんですね……ッ!」" }