{ "376000211_0": "異形なる訪客", "376000211_1": "数日後――", "376000211_2": "「~~♪」", "376000211_3": "(お父さん、元気そうでよかった。\\n 突然会いに行ったから、びっくりしてたな)", "376000211_4": "(あの女の子も、たまにはお父さんに会えるといいけど……、\\n ――っと)", "376000211_5": "「すっかり遅くなっちゃったな。\\n 未来が心配するから、早く帰らないと」", "376000211_6": "「――あれ?\\n こんなところに神社なんてあったっけ?」", "376000211_7": "「なんだろ、この音。\\n 神社の奥から聞こえてくるみたいだけど……」", "376000211_8": "「たしか、こっちの方から聞こえたような……」", "376000211_9": "「……すぅー」", "376000211_10": "「せいッ! はぁあッ!」", "376000211_11": "「あれは……」", "376000211_12": "「――ッ!」", "376000211_13": "「あなたは……ッ!\\n 先日に続いて、3回も会うなんて……」", "376000211_14": "「ひょっとして、あたしをスカウトしに来たのですかッ!?\\n 国家級マル秘任務のエージェントとして……ッ!」", "376000211_15": "「ううんッ! ぜんぜんそんなのじゃないよッ!\\n 今日は大きな音が聞こえてきたから、覗いてみただけ」", "376000211_16": "「なんだ……期待してしまいました」", "376000211_17": "「そう言えば、まだ名前を知らなかったよね。\\n わたし、立花響っていうんだッ! よろしくね」", "376000211_18": "「あたしは、水流明日香ですッ!」", "376000211_19": "「明日香ちゃんだねッ!\\n ふう、やっと名前が聞けたよ」", "376000211_20": "「明日香ちゃんも、響って呼んでくれていいし、\\n 敬語なんか使わなくても大丈夫だからね?」", "376000211_21": "「その前に確認すべきことがあるでしょうッ!", "376000211_22": " あたしは高校1年生なのですが、あなたは?」", "376000211_23": "「わたしは2年生。\\n でも、そんなにかしこまらなくて大丈夫だよ?」", "376000211_24": "「そういうわけにはいきませんッ!\\n 礼儀は基本ですからッ!」", "376000211_25": "「違う学校みたいだし、\\n 友達になったんだから別にいいのに……」", "376000211_26": "「と、友達……ッ!」", "376000211_27": "「2回も一緒に人助けしたんだから、\\n 友達でいいんじゃないかな」", "376000211_28": "「では、後輩兼友達ということでッ!\\n 不束者ですが、どうぞよろしくお願いしますッ!」", "376000211_29": "「うん、よろしくねッ! ところで――、明日香ちゃん、\\n ここで何してたの? あの音って……」", "376000211_30": "「修行ですッ!\\n 師範がいない日は、ここで自主練をしているのですッ!」", "376000211_31": "「それってもしかして、憧れの『あの人』に近づくため?」", "376000211_32": "「なぜそれをッ!? ひょっとして、\\n 響先輩はサイキッカーなのですかッ!?」", "376000211_33": "「フッフッフ……。さらに分かったッ!\\n 憧れの人って、明日香ちゃんのお師範さんなんじゃない?」", "376000211_34": "「ちょくちょく話に出てくるから、\\n ピンときちゃったッ!」", "376000211_35": "「いえ、全然違いますが?\\n 師範はただの師範です」", "376000211_36": "「あら……」", "376000211_37": "「『あの人』は、まさにあたしの憧れで、ヒーローなのですッ!\\n あたしを助けてくれたその人は強くて、かっこよくて……」", "376000211_38": "「あたしもその人みたいに、\\n 誰かを助けられるくらい強くなりたいんですッ!」", "376000211_39": "「そっか。人助けを信条にしているっていうのも、\\n それで……」", "376000211_40": "「その人って、どんな人なの?\\n できたらわたしも会ってみたいなぁ」", "376000211_41": "「――ッ! ごめんなさい……。\\n その人について、詳しく話すことはできないのです……」", "376000211_42": "「え……」", "376000211_43": "「と、ところで、響先輩にも感じましたよッ!\\n あたしと同じ、正義の心をッ!」", "376000211_44": "「正義なのかどうかは分からないけど、『なんとかしたい』って\\n 一生懸命な人には手をのばしてあげたいと思ってる」", "376000211_45": "「昔わたしを助けてくれた人から、\\n 受け継いだ想いなんだッ!」", "376000211_46": "「それってなんだか……」", "376000211_47": "「そういえば、明日香ちゃんの話と似てるね。\\n だから、仲良くなれそうって思ったのかな?」", "376000211_48": "「なるほど、そうかもしれませんねッ!\\n あたしと響先輩は、出会う運命だったのですッ!」", "376000211_49": "「そういえば……響先輩、何か困っていることはありませんか?」", "376000211_50": "「ええッ!?\\n いきなりどうしたの?」", "376000211_51": "「響先輩がいなければ、\\n あの女の子を助けることはできませんでした」", "376000211_52": "「だから、あたしに出来ることならお礼がしたいんですッ!」", "376000211_53": "「あの子を助けられたのはたまたまだって言ったでしょ?\\n お礼をされるようなことじゃないよ」", "376000211_54": "「あ、でも……」", "376000211_55": "「――ッ!\\n でも、何ですか?」", "376000211_56": "「う、ううんッ!\\n 何でもないッ!」", "376000211_57": "「――ッ! ひょっとしてッ!\\n 闇のシンジケートに狙われているとかッ!? だったらッ!」", "376000211_58": "「う、ううんッ! 闇のシンジケートにも闇の教団にも、\\n 闇の町内会にも狙われてないよッ!」", "376000211_59": "「しかし、さっきの様子、\\n 何かに悩んでいるようでしたッ!」", "376000211_60": "「う、うーん……。\\n 悩みって言えるほどのものか分からないけど……」", "376000211_61": "「わたしも、お礼をしたい人がいるなって思ったんだ。\\n わたしと一緒にいた子、未来っていうんだけど」", "376000211_62": "「わたしが今のわたしでいられるのは、未来のおかげなんだ。\\n いつも優しく、陽だまりみたいに傍にいてくれる」", "376000211_63": "「だけど、どう感謝を伝えたらいいか分からなくて……」", "376000211_64": "「……なんだ。\\n 響先輩の悩みってそんなことですか」", "376000211_65": "「ええッ!? 確かに大したことじゃないって自覚はあったけど、\\n そんなバッサリッ!?」", "376000211_66": "「足りないと思うなら、\\n 足りるまで伝えるしかありませんッ!」", "376000211_67": "「だけど、『ありがとう』だけじゃ\\n 伝わってないような気がして……」", "376000211_68": "「師範が言っていました。\\n 相手の防御を崩せないなら、攻め方を変えろとッ!」", "376000211_69": "「言葉で伝わらないなら、手紙とか、贈り物とか、\\n 普段とは違う形にしたらどうでしょうか」", "376000211_70": "「手紙、贈り物……。\\n なるほどッ! それなら伝わるかもッ!」", "376000211_71": "「ありがとうね。明日香ちゃんッ!」", "376000211_72": "「この程度では、人助けとは言えませんが……」", "376000211_73": "「ううん、すごく助かったよッ!\\n そうと決まったら、さっそく準備しなきゃッ!」", "376000211_74": "「ちょっと待って、響先輩ッ!?\\n まだ連絡先も何も……ひ、響せんぱーいッ!」" }