{ "388000411_0": "記憶の里", "388000411_1": "「これがダイヴマシン……」", "388000411_2": "「そうッ! これこそ驚天動地、世界を揺るがす大発明ッ!\\n その名も――ニライカナイッ!」", "388000411_3": "「その意味は『理想郷』。\\n 人の精神世界が理想郷であるかは疑問の余地があるけれど」", "388000411_4": "「僕のネーミングに、何か文句でも?」", "388000411_5": "「どうでもいいわよ、そんなの」", "388000411_6": "「精神世界がどうとかって、正直よくわからないんだけど。\\n どういうことなんだ?」", "388000411_7": "「まず、ダイヴマシンに繋ぐメインの人間が必要となるわ。\\n 精神世界はこの役を担う人間の記憶から構築されることになる」", "388000411_8": "「他の人間を精神世界に招くという意味では、\\n ネット空間におけるホスト役に近いかしら」", "388000411_9": "「これはいわば、精神世界へ潜るという行為……\\n すなわち、潜水するということよ」", "388000411_10": "「なるほど、それでダイヴマシンと呼んでいるのね」", "388000411_11": "「危険はないんですか……?」", "388000411_12": "「1番負荷がかかるのはホスト役ね。\\n 精神力が強い者でなければ、後遺症が残りかねないわ」", "388000411_13": "「ダンナが開発を認めなかったのは、\\n そういう理由か」", "388000411_14": "「世界を揺るがす発明は常にリスクと隣り合わせ。\\n そのリスクを乗り越える者こそ、真の開拓者となるのですよ」", "388000411_15": "「リスクって……安全は保証されてないのか?」", "388000411_16": "「試運転に英雄部隊から被験者を募ったのですが、\\n 誰も手をあげなかったのです。まったく、嘆かわしい」", "388000411_17": "「モルモット役はちょっと……」", "388000411_18": "「そんなものをわたしたちに使わせようっていうの……?」", "388000411_19": "「安心しなさい。\\n ホスト役には適任がいるから。ねぇ?」", "388000411_20": "「……まあ、そうなりますよね」", "388000411_21": "「RN式をあれだけ連続使用できるんですもの。\\n あなたに任せるのが最適解よね?」", "388000411_22": "「もとよりそのつもりでしたので。\\n 装者の皆さんに押し付けるつもりはありません」", "388000411_23": "「大丈夫なのか?」", "388000411_24": "「お気遣いありがとうございます。\\n ですが、こういうときに身体を張るのは大人の役割でしょう?」", "388000411_25": "「――準備をお願いします」", "388000411_26": "「あなたも随分と感化されたものね……」", "388000411_27": "「装置は正常に起動しています。脳波、心拍数、共に正常。\\n 問題ありません、準備は万端です」", "388000411_28": "「今のうちに言っておくけど、精神世界から戻ってくるときは、\\n ゆっくり目覚めることを意識するのよ」", "388000411_29": "「そうしなかった場合、どうなりますか?」", "388000411_30": "「精神に負荷がかかるわ。ちょうど、深い海から\\n 急浮上したときに減圧症が起こるのと同じね」", "388000411_31": "「それは怖いですね。\\n 肝に銘じておきます」", "388000411_32": "「それでは、装者の皆さん。\\n また、精神世界でお会いしましょう」", "388000411_33": "「やけに落ち着いてるな。\\n 不安じゃないのか?」", "388000411_34": "「いついかなるときも、平常心であること。\\n 忍の心得の1つですよ」", "388000411_35": "「覚えておくわ」", "388000411_36": "「それじゃあ、起動するわよ」", "388000411_37": "「いつでもどうぞ」", "388000411_38": "「この僕の発明の初の被験者となるあなたに敬意を表し、\\n 最大限のバックアップをすることを約束しましょう」", "388000411_39": "「それでは……", "388000411_40": " ダイヴマシン・ニライカナイ――起動ッ!」" }