{ "386000531_0": "「――この店も、\\n 御神体の手掛かりはなかったか」", "386000531_1": "「そうですね。\\n 次は、通りの向こうのお店で聞いてみましょう」", "386000531_2": "「……なあ東郷。\\n 1つ、聞いていいか?」", "386000531_3": "「はい、なんでしょうか?」", "386000531_4": "「このペアを組む時、\\n どうして真っ先にわたしに声をかけてくれたんだ?」", "386000531_5": "「あまりに即断だったからな。\\n 何か理由があるなら聞いておきたいんだが」", "386000531_6": "「それは……。\\n 風鳴さんを近くで見たかったからです」", "386000531_7": "「近くで……?\\n どういうことだ?」", "386000531_8": "「先程、風鳴さんが変身する時、\\n 『アメノハバキリ』と唄われていましたよね?」", "386000531_9": "「聖詠のことか?\\n わたしが振るう聖遺物の銘は『天羽々斬』だからな」", "386000531_10": "「天羽々斬は羽々――大蛇を斬る剣のこと。\\n この大蛇とは、お国を襲う洪水を示唆したものとされています」", "386000531_11": "「つまり、天羽々斬を振るう風鳴さんは、\\n お国を護る剣――護国の剣ということです!!」", "386000531_12": "「護国の剣!\\n ああ、なんて素晴らしい響きなの!」", "386000531_13": "(……なるほど、この子も護国について\\n 思うところがあるということか)", "386000531_14": "「それだけではありません!\\n 風鳴さんは戦い方も素晴らしいんです!」", "386000531_15": "「他者を護ろうとする、強い意志!\\n 護る意志を全身全霊で体現する戦い方、惚れ惚れします!」", "386000531_16": "「護る意志、か。\\n 確かにこの身は、防人という役目を担っているが……」", "386000531_17": "「防人っ!?", "386000531_18": " すごい! 風鳴さんにピッタリですね!」", "386000531_19": "「そ、そうか……?」", "386000531_20": "「はい! お国を護る防人……\\n すごく良い響きの言葉です!」", "386000531_21": "「護る戦いこそ、私の目指すものなんです!\\n 風鳴さんの戦い方。どうか、参考にさせてください!」", "386000531_22": "「あ、ああ。\\n 未熟なこの身でよければ……」", "386000531_23": "「どこまでも謙虚! 素晴らしい!\\n やはり風鳴さんは、立派な大和撫子ですね!」", "386000531_24": "「すまん、そろそろ勘弁してくれ」", "386000531_25": "「え?\\n 何がですか?」", "386000531_26": "(結城に迫られている時の立花もこんな気分だったのか?\\n あの時、助けてやるべきだったろうか……)", "386000531_27": "(しかし、護ることに殉じるかのようなこの姿勢……。\\n その直向きさは強さでもあるが、同時に危うくもある)", "386000531_28": "(まるで、過去の自分を見ているようでもある。\\n このまま放ってはおけない、か)", "386000531_29": "「……老婆心ながら、\\n 1つだけ助言をいいだろうか」", "386000531_30": "「はい! \\n なんですか!?」", "386000531_31": "「1人ではないことを、\\n 決して忘れないでいてほしい」", "386000531_32": "「1人では……ない?」", "386000531_33": "「ああ。全てを護ろうとする姿勢は立派だが、\\n 1人だけでは決して護りきれないものもある」", "386000531_34": "「そんな時、すぐ近くに仲間がいることを思い出せ。\\n そして、仲間を頼ることをためらわないでほしい」", "386000531_35": "「人のまま、鬼と成らずに護るために。\\n いるのだろう? 東郷には、頼れる仲間が」", "386000531_36": "「はい、います。\\n 友奈ちゃんに夏凜ちゃん……それに勇者部のみんな」", "386000531_37": "「私が、1人で抱え込んでしまった時、\\n 手を伸ばしてくれた、みんなが……」", "386000531_38": "「――――ッ!!」", "386000531_39": "「現れたかッ!?\\n 東郷ッ!」", "386000531_40": "「はいっ!」", "386000531_41": "「背中は私が護ります!\\n 存分に、剣を振るってください!」", "386000531_42": "「心得たッ!", "386000531_43": " いざ、推して参るッ!!」" }