{ "377000821_0": "「プロデューサー。どこに行くのかしら?」", "377000821_1": "「ちょっと野暮用……、と言いたい所ですが、\\n 関係者以外立ち入り禁止区域に面倒な用事がありましてね」", "377000821_2": "「そこを通していただきたいのですが……。\\n そうもいかないようですね」", "377000821_3": "「理解が早くて、助かるわ」", "377000821_4": "「少し前までの僕なら、\\n 全力で誤魔化していたところなのですけどね」", "377000821_5": "「心境の変化というヤツです。\\n 歩きながらでよければ、全部ご説明しますよ」", "377000821_6": "「そう、ありがとう。それじゃあ聞かせてちょうだい。\\n 隠していたことを、全部ね」", "377000821_7": "「オメガタクトが、聖遺物の裏取引を……ッ!?」", "377000821_8": "「ええ。ウンともスンとも言わない聖遺物をかき集め、\\n ライブを隠れ蓑に音楽で起動実験を行う」", "377000821_9": "「歌の力に、聖遺物が反応するというのは\\n 分かっていましたから」", "377000821_10": "「大半は励起すらしませんが、たまに波長が合って起動した\\n ものを、武装勢力などに売り飛ばしているのです」", "377000821_11": "「音楽会社を隠れ蓑にした死の商人。\\n それがオメガタクトの正体ですよ」", "377000821_12": "「だから、政府とつながりがあったのね。\\n 情報統制や隠蔽の見事さもうなずけるわ」", "377000821_13": "「我々は少し前に、『セイレーン』と呼ばれる聖遺物の\\n 起動に成功しました」", "377000821_14": "「聴いたものの精神を汚染する歌を放つという、\\n 兵器として価値のある代物でした」", "377000821_15": "「しかし、それをクライアントに引き渡す前に、\\n ヤツが現れたのです」", "377000821_16": "「……まさか、カルマノイズッ!?」", "377000821_17": "「その時は、名前も知らぬ怪物でしたがね。\\n 形も、今の形状とは少し違っていました」", "377000821_18": "「カルマノイズは聖遺物に引き寄せられるように現れた後、\\n それを取り込み、形状を変えて姿を消してしまったのです」", "377000821_19": "「それが、今まで戦ってきた、カルマノイズの本体ね」", "377000821_20": "「なるほど、歌を唄うのも、歌に引き付けられて現れるのも、\\n セイレーンの影響を受けたんだわ」", "377000821_21": "「セイレーンは、すでに売り先が決まっていました。\\n 商品が紛失したので、上層部は大慌てでしたよ」", "377000821_22": "「SSFは本来、純粋なアイドルイベントの予定でしたが、\\n 急遽、ここでも聖遺物の起動実験が行われることになったのです」", "377000821_23": "「同じことを繰り返すつもりなのッ!?」", "377000821_24": "「むしろ、起動した聖遺物があれば、\\n カルマノイズを倒せるかもしれない」", "377000821_25": "「カルマノイズの知識がない上層部は、\\n それくらい楽観的に考えているのですよ」", "377000821_26": "「だけど、聖遺物を起動するための歌に引き付けられて、\\n きっとカルマノイズは現れる」", "377000821_27": "「そうしたら、起動実験どころじゃないわ。\\n カルマノイズによる大量虐殺が起こってしまう……」", "377000821_28": "「ええ……。僕の考えが甘かったです。\\n いえ、保身のために、目をつぶっていただけかもしれませんが」", "377000821_29": "「だから、僕は今から実験を止めに行きます」", "377000821_30": "「……あなた、戦えるの?」", "377000821_31": "「戦う? めっそうもありませんッ!\\n 制御室に侵入し、スマートに実験を停止させる計画ですよッ!」", "377000821_32": "「その後は?\\n 逃げられる算段はあるの……?」", "377000821_33": "「それは――」", "377000821_34": "「まったく、仕方がないわね。わたしも行くわッ!\\n クリスティーナを悲しませる訳にはいかないもの」", "377000821_35": "「分かりました。協力に感謝しますよ」", "377000821_36": "「それじゃあ、急ぎましょう。\\n カルマノイズが出るまでに、実験を止めないとッ!」", "377000821_37": "「この先の配線から、セキュリティーをハッキングします。\\n 混乱を生んで、その間に制御室に――」", "377000821_38": "「さすが、プロデューサーをしている世界線でも、\\n そういう小賢しいことはできるのね」", "377000821_39": "「小賢しいとは何ですかッ!\\n ここは天才的と――」", "377000821_40": "「侵入者発見。排除シマス」", "377000821_41": "「なあッ!?\\n こんなのがいるだなんて、聞いていませんよッ!?」", "377000821_42": "「まったく、詰めが甘いんだから……。\\n ついてきてよかったわ」", "377000821_43": "「Seilien coffin airget-lamh tron――」" }