{ "373000711_0": "テュポーンの目覚め", "373000711_1": "「八紘おじちゃーんッ! 翼お姉ちゃーんッ!\\n クリスお姉ちゃーんッ!」", "373000711_2": "「みんな……どこに……」", "373000711_3": "「シャロン、ここは危ない。\\n あの巨大な怪物も、いつ動き始めるか分からないし……」", "373000711_4": "「でも……」", "373000711_5": "「おーいッ!」", "373000711_6": "「――ッ!」", "373000711_7": "「やはりそうだ。\\n 君は風鳴司令の……」", "373000711_8": "「八紘おじちゃんはどこッ!?\\n 大丈夫なのッ!?」", "373000711_9": "「ああ、レーベンガーの襲撃を受けたが、\\n 我々が無事に避難させた。今は意識も取り戻している」", "373000711_10": "「さぁ、こっちだ。案内しよう」", "373000711_11": "「八紘おじちゃんッ! 目が覚めたのッ!?」", "373000711_12": "「シャロン……ッ! 無事だったか……。\\n よかった……」", "373000711_13": "「八紘おじちゃん、翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんは?\\n こっちに来ていたはずなんだけど」", "373000711_14": "「2人は……。私たちが避難する、\\n 時間を稼いでくれたが……」", "373000711_15": "「報告によれば、あの巨大な怪物……。\\n 起動したテュポーンの体内に、取り込まれてしまったらしい」", "373000711_16": "「そんな……ッ!?\\n わたしたち、間に合わなかった……ッ!」", "373000711_17": "「取り込まれた……」", "373000711_18": "「ああ……。\\n 安否は、不明と……」", "373000711_19": "「だったら、まだチャンスはある。\\n 2人が死んでいないなら、救い出せるかもしれない」", "373000711_20": "「ヒビキお姉ちゃん……」", "373000711_21": "「シャロン、まだ泣くには早いよ。\\n きっと2人は、助けてほしいと手を伸ばしている」", "373000711_22": "「そんなときは――」", "373000711_23": "「その手をつかむために、\\n 全力で、わたしも手を伸ばす……ッ!」", "373000711_24": "「うん。どうやったら\\n 2人の手をつかめるか……、考えようッ!」", "373000711_25": "「私もこうしてはいられない」", "373000711_26": "「風鳴司令、先程意識を取り戻されたばかり。\\n まだ無理ですよ」", "373000711_27": "「いや、私の預かる二課は、テュポーンのような\\n 特異災害に対抗するための組織だ」", "373000711_28": "「このような時に動けなくては、組織や私自身の存在意義に関わる。\\n 君だって、自分の命を賭して私を運び出してくれたのだろう?」", "373000711_29": "「……ッ!」", "373000711_30": "「さて、シャロン。二課に帰ろうか」", "373000711_31": "「うんッ!\\n 翼お姉ちゃんと、クリスお姉ちゃんを助けるんだねッ!?」", "373000711_32": "「――ッ!\\n わたしにも、手伝わせてくださいッ!」", "373000711_33": "「……君が、エレクライトの立花くんだね。\\n 願ってもない申し出だ。是非お願いしたい」", "373000711_34": "「……では、状況を確認する」", "373000711_35": "「はい。目標、聖遺物テュポーンは起動したものの、\\n 依然、目立った行動は取っていません」", "373000711_36": "「病院を崩壊させ巨大化した後、立ち尽くしております。\\n いつ移動を始めてもおかしくありませんが……」", "373000711_37": "「また、未だ成長段階にあるのか、\\n 身体各部の形状が変態を繰り返しているとのこと」", "373000711_38": "「付け入るスキはあるか……。\\n 本来の力を取り戻す前に、仕掛けたいところだ」", "373000711_39": "「自衛隊に要請した、通常兵器による威力偵察の結果は?」", "373000711_40": "「芳しくありません。テュポーン周囲に強固な結界が\\n 形成されていて、それを突破できなかった模様です」", "373000711_41": "「ヴィマーナの武装ならばどうかと計算を行いましたが――」", "373000711_42": "「結界強度の計測値とヴィマーナ武装のカタログスペックを\\n 比較した結果は、難しいだろうと……」", "373000711_43": "「ふむ……」", "373000711_44": "「打つ手の無い状況だが、そこを何とかするのが私の仕事だ」", "373000711_45": "「各国に要請し、全てのオートマシンを一点に集める。\\n 敵はあれだけの巨体だが、1体のみ」", "373000711_46": "「突き崩すことができるかもしれん」", "373000711_47": "「でも、それにはどれだけ時間がかかるんですか?\\n それまで翼とクリスが無事でいる保証は……」", "373000711_48": "「……他に方法はない。2人を信じるよりほかに――」", "373000711_49": "「先に、わたしを行かせてください」", "373000711_50": "「しかし、あれだけの巨体を\\n さらに強固な結界が護っている」", "373000711_51": "「ヴィマーナの火力で及ばないものが、\\n エレクライト1つで破れるとは思えんな」", "373000711_52": "「……八紘おじちゃん。\\n それなら、わたしも行きます」", "373000711_53": "「聞いただろう。ヴィマーナの攻撃をもってしても、\\n 結界を破ることは不可能だ」", "373000711_54": "「だけど……ヒビキお姉ちゃんと一緒なら……\\n 何か変わる気がするの」", "373000711_55": "「わたしもそれを考えました。ヴィマーナだけでは通用しない。\\n エレクライトだけでも通用しない。でも……」", "373000711_56": "「ヒビキお姉ちゃんと力を合わせたら、\\n もしかしたら道が開ける。そんな気がするの」", "373000711_57": "「さっき……、感じたんです。シャロンの想いが、\\n わたしのエレクライトを震わせたのを」", "373000711_58": "(最初は、シャロンがかわいそうな子だと思った。\\n 気弱で、無理に融合症例にされた、護るべき被害者)", "373000711_59": "(でも、それは間違っていた。\\n 彼女はその身に、勇気と強い想いを宿していて)", "373000711_60": "(みんなの心配をする優しさと、\\n 強さを併せ持った子だ)", "373000711_61": "「わたしも。さっき、わたしの中のヤントラ・サルヴァスパを\\n 通じて、エレクライトからすごい力を感じたの」", "373000711_62": "(最初は混乱した。響お姉ちゃんとそっくりなのに、\\n 朗らかな印象がなくなっていたから)", "373000711_63": "(でも、人を道具のように扱うなって怒ってくれて、\\n 心の根元の方は温かくて……)", "373000711_64": "(響お姉ちゃんとヒビキお姉ちゃんは別人だけど、\\n 同じくらいステキで、わたしはヒビキお姉ちゃんも好き)", "373000711_65": "「翼お姉ちゃんとクリスお姉ちゃんを助け出して、\\n テュポーンも止められるって、思うの」", "373000711_66": "「うん。ウロボロスなんて連中の企みを粉々にして、\\n みんなを護ることができると、信じられる」", "373000711_67": "「……確かに、エレクライトは高度な科学によるものと聞く」", "373000711_68": "「ヤントラ・サルヴァスパとの相性は、\\n シンフォギア以上かもしれない」", "373000711_69": "「だが、やはり許可することはできない。\\n 大きな力を行使して、聖遺物の浸食が進んだらどうするッ!」", "373000711_70": "「――ッ! そっか……。\\n 力を使うほど、聖遺物が身体を蝕んで……」", "373000711_71": "「確かにね、この力に頼ってばっかりじゃいけないって、\\n 分かってる……」", "373000711_72": "「でも、お父さんの作った薬が、症状を抑えてくれてる。\\n 最近は抑えるだけじゃなくて、改善したって言ってたでしょ?」", "373000711_73": "「オズワルドか……」", "373000711_74": "「少しの間なら、お父さんが護ってくれる。\\n だからわたしに、八紘おじちゃんの大切な人を護らせて?」", "373000711_75": "「――ッ!」", "373000711_76": "「……オートマシンによる作戦は、変わらず実行する。\\n だが、実行まで数刻を要すことは指摘の通りだ」", "373000711_77": "「その間に翼たちの命が尽きたり、起動したテュポーンに\\n 国土を蹂躙されないという保証はどこにもない」", "373000711_78": "「だから、それまでの間、君たちに命運を託す」", "373000711_79": "「――ッ!\\n はい……ッ!」", "373000711_80": "「ただし、時間制限付きだ。リミットを超えたら、\\n 作戦行動を中止し帰投すると約束してくれ」", "373000711_81": "「うん。約束する……ッ!」", "373000711_82": "「決まりだな。\\n 2人とも、すぐに出撃準備を」", "373000711_83": "「はいッ!」", "373000711_84": "「うんッ!」" }