{ "373000311_0": "ガール・ミーツ・ガール", "373000311_1": "「……それで、現在の状況は?」", "373000311_2": "「風鳴八紘司令は重傷を負われたとのこと。\\n しばらく作戦指揮は不可能でしょう」", "373000311_3": "「命に別状がなかったのが幸いとはいえ……、\\n これは痛いな」", "373000311_4": "「現場でレーベンガーが目撃されたというのは\\n 事実なのかね?」", "373000311_5": "「はい。周辺に設置された監視カメラでもはっきり確認できます。\\n 研究所を襲ったものと同一のものかと」", "373000311_6": "「どうやら影護が情報提供を持ち掛け、\\n 風鳴司令を呼び出した形跡があるようです」", "373000311_7": "「影護めッ! 直接の障害となる二課のトップを\\n おびき出して暗殺を図るとはな……ッ!!」", "373000311_8": "「風鳴司令の温情を逆手に取られた形ですね。\\n 周辺被害も酷い有様ですし、先生の懸念された通りです」", "373000311_9": "「だから忠告してやったと言うのに……。\\n 私は、上にどう説明すればいいんだッ!」", "373000311_10": "「先生、ここは私を二課司令官代理に任命してください。\\n 結果が、必ず先生の名声に繋がるように致します」", "373000311_11": "「お? そうかねそうかね。\\n 何か名案があるんだね?」", "373000311_12": "「ええ。実は……」", "373000311_13": "「ああ、詳細はいいから。\\n 全て君に任せようではないか」", "373000311_14": "「実は、接待で利用した店にかわいそうな娘がいてね……。\\n 助けを求められちゃって、ちょっと忙しいのだよ」 ", "373000311_15": "「さすがは先生。まさに救世主然としていらっしゃいますな。\\n それでは委細、この石崎にお任せくださいませ」", "373000311_16": "「頼んだよ。\\n あ、でも失敗したら……責任は取ってもらうからね」", "373000311_17": "「心得ております」", "373000311_18": "(クククク……。国が泥船のようだとはよく耳にしますが……、\\n 船頭が泥人形だとは……国民が憐れで仕方ありませんね)", "373000311_19": "(しかし、もうしばらくの辛抱ですよ)", "373000311_20": "(いずれベアトリーチェ様、再降臨の暁には、\\n 悪夢のような現実も、全て灰塵に帰しますから……)", "373000311_21": "(さて、二課は完全に掌握しました。これで邪魔は入らない。\\n あとは、装者たちにテュポーンを育ててもらいましょう)", "373000311_22": "「…………」", "373000311_23": "「大丈夫? 翼」", "373000311_24": "「荷物が多すぎて疲れた?\\n 少し手伝おうか?」", "373000311_25": "「いや、それは大丈夫だけどさ。なあ、クリス、ヒビキ。\\n 父上……、喜んでくれるかな?」", "373000311_26": "「オレ、見舞いとかしたことないから\\n 手あたり次第に買ってきちゃったけど……」", "373000311_27": "「見舞いの手土産って、何か作法があるんじゃないか?\\n こんなに大量に持ってっても、迷惑かも……」", "373000311_28": "「大事なのは気持ちだって、\\n もう1人のわたしは言ってた」", "373000311_29": "「うん。翼の気持ち、ちゃんと伝わると思うよ。\\n きっと喜んでくれるはず」", "373000311_30": "「ヒビキ、クリス……ッ!\\n ありがとう。迷いが晴れたぞッ!」", "373000311_31": "(それよりも病室に入れるかな……?)", "373000311_32": "「――そちらはどうだ」", "373000311_33": "「異常なし。影護構成員らしき人物は見当たらない」", "373000311_34": "「標的が生きていると判明すれば再び襲撃してくる\\n 可能性が高い。警戒は厳とせよ」", "373000311_35": "「了解」", "373000311_36": "「おいおいおい、父上の病室前が物々しく警護されてるぞ……?」", "373000311_37": "「当然だよ。\\n 翼のお父さんは要人だから……」", "373000311_38": "「訳を話すこともできないし、\\n 出直した方がいいんじゃないかな?」", "373000311_39": "「くそッ! こうなりゃ窓から病室に入れてもらうか?」", "373000311_40": "「もっと不審者。絶対に捕まる」", "373000311_41": "「わたしが囮になって護衛官を引き離そうか?」", "373000311_42": "「ヒビキ、頼……」", "373000311_43": "「――ダメッ! 騒ぎを起こしたら、病院の人たちに迷惑。\\n それに護衛官は、何があっても護衛対象から離れない」", "373000311_44": "「……てことは、すごすご帰るしかないのかよ」", "373000311_45": "「翼……」", "373000311_46": "「父上のことは心配だけど、騒ぎを起こしたら\\n 元も子もないもんな。うん、今回は帰ろう」", "373000311_47": "「……」", "373000311_48": "「そうと決まればバレる前に早く……」", "373000311_49": "「きゃッ!」", "373000311_50": "「ごめんなさい。前方不注意……」", "373000311_51": "「は、はい。大丈夫……、", "373000311_52": " あッ!! 響お姉ちゃんッ!!」", "373000311_53": "「えッ!?」", "373000311_54": "「ひさしぶりッ! こっちに来ていたんだ。\\n いつから? 会いに来てくれればよかったのにッ!」", "373000311_55": "「しゃ、シャロンッ!? いや、そいつは響じゃなくて……」", "373000311_56": "「――おい、なんの騒ぎだ?」", "373000311_57": "「対象の関係者の声だが……。確認するか?」", "373000311_58": "「ああ、行ってくれ」", "373000311_59": "「護衛官たちがこっちに来るよッ!」", "373000311_60": "「シャロン、ごめんッ!」", "373000311_61": "「むーーッ!?」", "373000311_62": "「今、目立つ訳にはいかないんだッ!」", "373000311_63": "「それまで静かにね。お願い」", "373000311_64": "「う、うん……」", "373000311_65": "「よし、一旦外だ。急ぐぞッ!!」" }