{ "372000211_0": "グラウスヴァインスーツ", "372000211_1": "「グラウス……ヴァインスーツ……?」", "372000211_2": "「――って、なんなんですか? 師匠ッ!」", "372000211_3": "「……これはかつて、シンフォギアとは別に\\n 対ノイズ用に研究、試作されていた兵器だ」", "372000211_4": "「それじゃあ、シンフォギアのお姉さん……妹?\\n とにかく、姉妹なんですねッ!」", "372000211_5": "「だけど『されていた』ということは……」", "372000211_6": "「ああ、完成を前に研究は凍結されたはずだ」", "372000211_7": "「研究が中止されても、あの人たちがコツコツ\\n 作り続けていたということですか?」", "372000211_8": "「いや、それはあり得ん」", "372000211_9": "「このスーツはコアに、グラウスヴァインという\\n 聖遺物とは異なる、旧時代の未解明技術が用いられている」", "372000211_10": "「常温核融合により莫大なエネルギーを生み出すものの、\\n 非常に不安定な上に制御は困難を極め、事故も多発していた」", "372000211_11": "「そんな流れもあり、シンフォギアが正式採用されると同時に\\n 研究は完全凍結され、深淵の竜宮に封印されたんだ」", "372000211_12": "「もっとも、深淵の竜宮が崩壊してからは、\\n 行方不明になっていたのだが……」", "372000211_13": "「……も、もしかして、研究を止められた恨みで\\n 化けて出ちゃったデス……?」", "372000211_14": "「……ッ!? やめろッ!\\n 変な想像しちまったじゃねーかッ!」", "372000211_15": "「あの人たちは幽霊なんかじゃないですよ。\\n 3人で会話している姿をこの目で見ました」", "372000211_16": "「離れていたので、内容までは分かりませんが、\\n 話す姿が活気に溢れていたというか……」", "372000211_17": "「なら、どこかに流れ着いたグラウスヴァインスーツを\\n 何者かが持ち去ったということかしら?」", "372000211_18": "「現時点では不明だ。しかし戦闘の様子を聞くと\\n かつての試作品ではなく改良が施されているようだ」", "372000211_19": "「ある程度知見のある技術者か、当時の研究者が\\n 関わっていると見ていいだろう」", "372000211_20": "(グラウスヴァイン……研究者……)", "372000211_21": "(……また、あの名を思い出すことになるとは)", "372000211_22": "5年前――", "372000211_23": "「……やぁッ!!」", "372000211_24": "(まだだ……踏み込みが浅いッ!)", "372000211_25": "(この程度の技では、\\n ツヴァイウイングの片翼として舞うなんて、到底……ッ!)", "372000211_26": "「――へぇ。お嬢ちゃん、\\n チャンバラか時代劇にでもハマってんのかい?」", "372000211_27": "「……どなたでしょうか?」", "372000211_28": "「空気の読めないガキだね。\\n お嬢ちゃんは、シンフォギア装者かい?」", "372000211_29": "「……ええ」", "372000211_30": "「悪いことは言わない。帰んな。\\n その様子だと、ノイズに瞬殺されるのがオチだ」", "372000211_31": "「……そ、そんな――」", "372000211_32": "「どこの誰だか知らないけど、\\n 翼をそれ以上侮辱するなら、ただじゃおかないぞッ!」", "372000211_33": "「奏……ッ!」", "372000211_34": "「気にしなくていい。\\n 翼はあたしが認める、立派な装者だ」", "372000211_35": "「涙ぐましい友情だ。まさかこんなとこで\\n ガキの青春ごっこを見せられるとはね」", "372000211_36": "「……おい、それ以上しゃべるな。\\n あたしの忍耐にも限度ってもんがある」", "372000211_37": "「面白い、やってみな」", "372000211_38": "「ま、待って奏。\\n いくらなんでも暴力沙汰は――」", "372000211_39": "「こらッ! 環ちゃんストーーーップッ!\\n はい、そこまでッ!!」", "372000211_40": "「あ?」", "372000211_41": "「いや~、妻が迷惑をかけてすまなかったッ!」", "372000211_42": "「彼女、絶望的に口が悪くってさッ!」", "372000211_43": "「うるさいよ、仁ッ!\\n 少しばかりコミュニケーション取ってただけさ」", "372000211_44": "「つ、妻だぁ?\\n そんなんでお前、既婚者なのかよ」", "372000211_45": "「あぁんッ!?」", "372000211_46": "「はいはい、全面的にこっちが\\n 悪いんだからそれ以上睨まないッ!」", "372000211_47": "「……チッ」", "372000211_48": "「子供の前なんだから舌打ちもメッ!\\n ほら、さっさと謝りなさいッ!」", "372000211_49": "「……はぁ。嫌なこったね」", "372000211_50": "「へ……?\\n あ、ちょっと待ちなさいってッ!」", "372000211_51": "「2人とも、本当にごめんね?\\n 今度きちんと謝罪させるからッ!」", "372000211_52": "「待ってよ環ーッ!\\n 置いてかないでくれーッ!」", "372000211_53": "「……な、なんだったんだ」", "372000211_54": "「プ……フフ……見たかよ。旦那に叱られた途端、\\n あいつすっげーバツの悪そうな顔してたな」", "372000211_55": "「うん……見た。少しスッとした」", "372000211_56": "「翼にもやっぱ、そういうのあるんだな」", "372000211_57": "「当然だよ。わたしだけならともかく、\\n 装者を……奏を馬鹿にされれば怒るよ」", "372000211_58": "「――すまない。2人を会わせたのは俺の判断だ。\\n まだ、時期尚早だったようだな」", "372000211_59": "「なんだ、弦十郎のダンナの差し金か」", "372000211_60": "「ま、別にもう気にしちゃいないよ。\\n それより、何者なんだい?」", "372000211_61": "「海宝夫妻。夫婦揃って研究者だ。\\n つい最近、政府の研究機関から二課に転籍されてきた」", "372000211_62": "「元々とある研究に従事していたが、\\n 計画そのものが凍結されてな」", "372000211_63": "「行き場を無くしていたところを、\\n 研究者として招き入れたんだ」", "372000211_64": "「その研究というのは……」", "372000211_65": "「――対ノイズ戦闘用兵器、グラウスヴァインスーツ」", "372000211_66": "「……ッ!」", "372000211_67": "「その研究がうまくいっていれば、\\n ノイズと戦っていたのは、彼らだったかもしれないのだ」" }