{ "370000511_0": "怪盗と囚われの隊長", "370000511_1": "艦尾、機関室前――", "370000511_2": "「ギッ!」", "370000511_3": "「ううッ……」", "370000511_4": "「ギギッ!」", "370000511_5": "「倒れた人を運び込んでましたね」", "370000511_6": "「――ッ!」", "370000511_7": "「以前、気絶した隊員が運ばれていくのを見たんですが……、\\n 行先はここだったんですね」", "370000511_8": "「この部屋は……」", "370000511_9": "「機関室です。きっと反抗的な隊員を集めて、\\n 収容所代わりにしているんですね」", "370000511_10": "「あれ? でも機関室って、大事な場所ですよね?\\n そんな所に、反抗的な人を集めるなんて……」", "370000511_11": "「もちろん、動力炉やデュプリケイターに触れるところには\\n 入れていないと思います」", "370000511_12": "「ある意味では艦内で一番堅牢な部屋なので、\\n 閉じ込めるには都合がよかったのでしょう」", "370000511_13": "「堅牢……ということは、警備している鹵獲機を倒しても\\n 入るのは難しいですか?」", "370000511_14": "「そうですね。\\n 鹵獲機にしか開けないようにしているはずです」", "370000511_15": "「…………」", "370000511_16": "「待ってくださいね。\\n 今作戦を……」", "370000511_17": "「……なら、さっき入った鹵獲機が出てくるタイミングで\\n わたしが奇襲をかけますッ!」", "370000511_18": "「そして、鹵獲機を引き連れて逃げるので、\\n その間に中にいる人たちを助けてくださいッ!」", "370000511_19": "「そんな危険なことさせられませんッ!\\n 陽動ならわたしが……」", "370000511_20": "「わたしが行っても、\\n 捕まっている人たちを混乱させてしまうかもしれません」", "370000511_21": "「それに、姉を助けるのは妹の役目ですッ!」", "370000511_22": "「……ありがとうございます。\\n くれぐれも気を付けてください」", "370000511_23": "「大丈夫です。\\n この後で、マリア姉さんを手伝いに行かないといけませんから」", "370000511_24": "「フフッ、そうですね」", "370000511_25": "「出てきましたッ!\\n 行きますッ!」", "370000511_26": "「鹵獲機さんッ!\\n こっちですッ!」", "370000511_27": "「ギッ!」", "370000511_28": "「ギギッ!」", "370000511_29": "「えッ!? 想像より強いッ!\\n こ、これは1人では勝てなさそうですね……」", "370000511_30": "「ギッ!」", "370000511_31": "(よし、かかったッ!)", "370000511_32": "「撤退します――ッ!」", "370000511_33": "「ギギッ!」", "370000511_34": "「うまく逃げてくださいね」", "370000511_35": "「ううッ……」", "370000511_36": "「はぁ……はぁ……」", "370000511_37": "「皆さんッ!\\n すぐに拘束を解きますッ!」", "370000511_38": "「副隊長、救出していただいて感謝しますッ!」", "370000511_39": "「皆さん……、\\n こんなことになってしまって、すみません」", "370000511_40": "「副隊長ッ!\\n 私たちは隊長たちが裏切ったなんて信じてませんよッ!」", "370000511_41": "「ありがとう。", "370000511_42": " それで、姉……隊長はここにはいませんか?」", "370000511_43": "「――ッ!?\\n 隊長は捕まったんですか?」", "370000511_44": "「ええ、わたしを逃がすために……。\\n 隊長も皆さんと一緒に監禁されていると思ったのですが……」", "370000511_45": "「そうでしたか……。\\n ですが隊長は、ここには運び込まれておりません」", "370000511_46": "「副隊長ッ!\\n その……すみませんでしたッ!」", "370000511_47": "「あなたはッ!?\\n 隊長室に捕縛にやってきた……?」", "370000511_48": "「はい。俺はヒメジマ班長により、隊長たちの装備を\\n 解除した上で、研究室まで同行願うよう命令されました」", "370000511_49": "「なのに、急に鹵獲機たちが暴走し、あんなことに……。\\n 本当に申し訳ありませんでしたッ!」", "370000511_50": "「いえ、その様子は見ていましたから……。\\n それより、その命令はナツミさんから直接?」", "370000511_51": "「……いいえ。俺たち一部の技術班隊員は、\\n 鹵獲機の運用テストのために専用端末を渡されていて……」", "370000511_52": "「この専用端末に危急の命令ということでメールが届きました。\\n 無論、確認のため無線で艦橋に連絡を取ったのですが……」", "370000511_53": "「命令を遵守するよう返答されましたので、実行に移しました。\\n 隊長たちの嫌疑など、すぐに晴れると思っていたんです」", "370000511_54": "「無線に返事をしたのは?\\n それもナツミさんではないんですよね?」", "370000511_55": "「はい。聞き覚えはありませんが、男の声でした」", "370000511_56": "「そう……諜報班の可能性もありますね……。\\n ひとまず、この端末はお預かりしてもいいですか?」", "370000511_57": "「どうぞ。鹵獲機たちに指示を出すための端末と聞いてましたが、\\n 今となっては、もう信用なりませんし……」", "370000511_58": "「救出は済みましたか?\\n すぐに鹵獲機たちが追ってきますッ!」", "370000511_59": "「無事でよかった……皆さん、動けますか?\\n 鹵獲機たちが戻る前に、ここから退避しますッ!」" }