{ "367000831_0": "「……ここに閉じ込められてから、\\n 何時間たったか……」", "367000831_1": "(ノイ・カ・ディンギルが、\\n 多くの命を奪ってしまった)", "367000831_2": "(もう、戦いを止めることはできないのか……)", "367000831_3": "(クリス、せめて、日本から逃げてくれ……)", "367000831_4": "「お前がブリル協会から抜け出してきて、\\n 実際に見た人たちはそんな風に見えたのか?」", "367000831_5": "「――ッ!」", "367000831_6": "「あたしも昔、人の言うことを信じて、\\n 戦うしかないんだって思ってたことがある……」", "367000831_7": "「だけど、無鉄砲で、無計画で、向こう見ずで……、\\n そんなバカが、あたしに手を伸ばしてくれた」", "367000831_8": "「あたしは、自分の意思でその手を取ったんだッ!\\n だから、今のあたしがいるッ!」", "367000831_9": "「ブリル協会の皆に危機が迫っている。\\n 止められるのはオレだけなんだ……ッ!」", "367000831_10": "「海も、友達もいないけど、オレの故郷だ……。\\n オレが皆を護らなきゃいけない……」", "367000831_11": "「それは、本当にお前の想いなのか?\\n 本当にお前がやりたいことなのかよッ!?」", "367000831_12": "「地球に来て、お前と会えて、楽しかった……。\\n できればもっと、色々なことを教えてほしかった」", "367000831_13": "「だけどもう無理だッ!\\n これがオレの使命なんだ……ッ!」", "367000831_14": "「そんな使命なら、捨てちまえばいいッ!\\n 傷つけたくない相手と戦うなんて……ッ!」", "367000831_15": "(……違う。クリスたちだったら、\\n 諦めて逃げるようなことはしない)", "367000831_16": "(きっと今も、\\n 戦いを止める方法を探しているはず……)", "367000831_17": "(オレも……オレも、手を伸ばさなきゃ……ッ!)", "367000831_18": "「大変ですッ!」", "367000831_19": "「どうした。まもなくノイ・カ・ディンギルの\\n 第二射だというのに、騒々しい」", "367000831_20": "「レオポルド様が、姿を消してしまいましたッ!」", "367000831_21": "「なんだとッ!?」", "367000831_22": "「部屋の回線を弄りロックを解除したようで――」", "367000831_23": "「御託はいいッ!\\n 早く捜索を――」", "367000831_24": "『皆ッ! 聞いてくれッ!!』", "367000831_25": "『オレだッ! レオポルド総統だッ!』", "367000831_26": "「通信室だ。急げ……ッ!」", "367000831_27": "「オレたちは、地球人類とは戦うしか道がないと思ってきた。\\n いや、思わされていたんだ……ッ!」", "367000831_28": "「オレは実際に地球に行って、その様子を見て来た」", "367000831_29": "「あそこにいる人たちは、残虐な略奪者なんかじゃない。\\n オレたちと同じように、考え、笑い、生きているッ!」", "367000831_30": "「だから、オレたちが考えを変えて手を伸ばせば、\\n きっとこの戦いは……」", "367000831_31": "「そこまでだ」", "367000831_32": "「むが……ッ!?」", "367000831_33": "「カールだ。非ブリルのスパイによる危険音源が流れたが、\\n 賊は捕らえた。皆仕事に戻ってくれ」", "367000831_34": "「離せ……ッ!」", "367000831_35": "「これで死刑は確定だな」", "367000831_36": "「モーリッツではなくお前が総統になるよう取り計らって\\n やったというのに、バカなやつだ」", "367000831_37": "「なんだと……?\\n おい、それはどういうことだッ!」", "367000831_38": "「2人の総統候補のうち、モーリッツは見込みがなかった。\\n 優しく、空想家。才能はあっても総統にはなれぬと踏んだのだ」", "367000831_39": "「しかし、貴様はモーリッツに入れ込み、わざと負けようと\\n していた。私が気づいていないとでも思ったか?」", "367000831_40": "「だから私はモーリッツに言ったのだ。お前を勝たせろと。\\n そうしなければ2人とも殺し、宇宙に放り出すと」", "367000831_41": "「そんな……。じゃあ、モーリッツは\\n オレを勝たせるためにわざと……?」", "367000831_42": "「そして、自分自身が宇宙のごみとなったというわけだ」", "367000831_43": "「……ッ!」", "367000831_44": "「しかし結果は、お前もまた失敗作だったッ!\\n せっかく手塩にかけて育ててやったというのに……ッ!」", "367000831_45": "「フン、お前の言いなりになって総統になるくらいなら、\\n このまま死んでやる……ッ!", "367000831_46": "「相変わらず威勢だけはいい」", "367000831_47": "「今から貴様の最後の仕事だ。ノイ・カ・ディンギルが\\n 地球を穿つのを、共に眺めようではないか」", "367000831_48": "「――ッ!!」" }