{ "363000332_0": "「……地上に戻ってきたってことは」", "363000332_1": "「今回のレヴューも無事に乗り切ったってことね」", "363000332_2": "「でも、闇の舞台少女は出てこなかった……」", "363000332_3": "「このままずっと出てこない、ってこともないと思うけど」", "363000332_4": "「だったら、きっと次は会えるよね」", "363000332_5": "「会いたいの?」", "363000332_6": "「うん、会って、話してみたいんだ。\\n どうしてこんなことするのか、って」", "363000332_7": "「あの子はスタァとして『キラめき』たいって\\n 一心だと思うけど……」", "363000332_8": "「でも、みんなでキラめくことだってできるでしょ?」", "363000332_9": "「いえ……わたしたち舞台少女は、負ければ大事なものを失うと\\n 覚悟してレヴューに臨んできたの」", "363000332_10": "「相手に、大事なものを失わせる覚悟でね」", "363000332_11": "「そんな……ッ!\\n どうしてみんなで仲良くできないの?」", "363000332_12": "「それが、舞台に立つ者の覚悟だからよ」", "363000332_13": "「マリアさん……」", "363000332_14": "「目指すステージは違えども、\\n わたしもそんな世界に身を置いてきた」", "363000332_15": "「けれど、今回のレヴューは普通じゃない。\\n そうでしょう?」", "363000332_16": "「うん。舞台少女自身がああやって\\n レヴューを取り仕切るなんて、本来あり得ない」", "363000332_17": "「だから、あの子を止めることができれば……」", "363000332_18": "「みんなで仲良く舞台に立てる?」", "363000332_19": "「少なくとも、今回はね」", "363000332_20": "「そっか……。\\n なら、絶対にあの子を止めてみせる……ッ!」", "363000332_21": "(しかし、他人を踏みつけてでも上に立ちたいという願い……。\\n それは、舞台に生きる者として当然のこと……)", "363000332_22": "(わたしに足りないものは、そんな『覚悟』なのか?)", "363000332_23": "「……今、あなたが考えてること、\\n 多分間違いよ」", "363000332_24": "「え?」", "363000332_25": "「レヴューの間も、ずっとそんな顔してた」", "363000332_26": "「これまで競い合ってきた舞台少女の中に、\\n そんな顔つきで勝てた人はいないわ」", "363000332_27": "「…………」", "363000332_28": "「あの戦いの最中に皆の表情にまで\\n 気を配っていたとは恐れ入る」", "363000332_29": "「わたしたちは、舞台少女。\\n ただ剣を振るうだけではキラめけない」", "363000332_30": "「――スタァとして、観衆を魅了することはできないッ!」", "363000332_31": "「ッ!」", "363000332_32": "(今のわたしは、舞台少女としても、\\n アーティストとしても力不足)", "363000332_33": "(だが、もしも聴衆を魅了する舞台少女としての\\n 『キラめき』の片鱗に触れることができれば……)", "363000332_34": "「わたしは……」", "363000332_35": "「あなたのようになりたい」", "363000332_36": "「翼……?」", "363000332_37": "「もっとわたしに舞台のことを教えてもらえないだろうか。\\n 舞台少女として、『キラめき』を会得するために」", "363000332_38": "「……いいわ。あなたも歌の一線に立つ者。\\n 相応の覚悟はできているのでしょうし」", "363000332_39": "「恩に着る。\\n 未熟者ではあるが、よろしく頼む」", "363000332_40": "「翼……」", "363000332_41": "(ライブのリハーサルの時から様子がおかしかったし、\\n さっきのレヴューを見ていても気にかかる……)", "363000332_42": "(でも、翼が舞台少女に新たな可能性を見出したというのなら……、\\n わたしは見守るわ)" }